脊柱起立筋の基礎知識 パーソナルトレーナーによる筋トレとストレッチの完全ガイド
大阪のフィットネストレーナー小林素明です。
脊柱起立筋とは、一般的に背筋と呼ばれており、背骨の両側を首から骨盤にかけて垂直に走る長い筋肉です。外側から内側に向かって腸肋筋(ちょうろくきん)、最長筋(さいちょうきん)、棘筋(きょくきん)の3つの筋肉の集合体です。
主な働きは、背骨を真っ直ぐにして直立姿勢を保つ「抗重力筋(こうじゅうりょくきん)」の働き、物を持ち上げる時に欠かせない筋肉です。また、体幹を安定させるための筋肉としての働きもあり、日常動作、スポーツでのパフォーマンスアップにも有効です。
専門的には、この脊柱起立筋は、背骨(脊柱)を動かしたり、安定性を保つことで固有背筋と呼ばれます。
では、脊柱起立筋とはどんな筋肉? 鍛えるメリットは何か? 安全で効果的に鍛える方法は?を順番に話します。
脊柱起立筋とはどんな筋肉なの?
脊柱起立筋は腸肋筋、最長筋、棘筋の3つの筋肉から構成されています。3つの筋肉はさらに細分化されています。
- 腸肋筋:頸腸肋筋、胸腸肋筋、腰腸肋筋
- 最長筋:頭最長筋、頸最長筋、胸最長筋
- 棘筋:頸棘筋、胸棘筋、頭棘筋
筋肉の起始: 骨盤、肋骨
筋肉の停止: 脊柱、胸郭、頭蓋骨
神経支配: 脊柱神経
主な筋肉の働き(作用): 体幹の伸展、体幹の側屈、骨盤の前傾
脊柱起立筋の主な働き
脊柱起立筋の主な働きは、上体を後方に倒す「体幹の伸展」、上体を横に倒す「体幹の側屈」、骨盤を前方に傾ける「骨盤の前傾」です。
※体幹の側屈は、左右のどちらかの脊柱起立筋の収縮することで動作が可能
腸肋筋(ちょうろくきん)
腸肋筋は、頸腸肋筋、胸腸肋筋、腰腸肋筋の3つの筋肉で構成されています
最長筋(さいちょうきん)
最長筋は、頭最長筋、頸最長筋、胸最長筋の3つの筋肉で構成されています
棘筋(きょくきん)
棘筋は頸棘筋、胸棘筋、頭棘筋の3つの筋肉で構成されています。但し頭棘筋は半頭棘筋と一体化されています。
では次に脊柱起立筋を鍛えるメリット、鍛え方を紹介します。
脊柱起立筋は立ち上がり動作で姿勢を保持する大切な役割
椅子から立ち上がる動作では下半身の筋肉が多く使われますが、脊柱起立筋も上半身の安定化のために活動しています。立ち上がり動作中に前に倒れないように真っ直ぐの姿勢を保つ役割をしています。この脊柱起立筋の活動により、股関節の動きをスムーズにしています。
脊柱起立筋を鍛えるメリット
- 姿勢が良くなり若々しく見える
- パフォーマンスアップになる
- 腰痛の予防になる
- 腹筋が硬くなることを予防し、呼吸がしやすくなる
- 肩こり解消につながる
1 姿勢が良くなり若々しく見える
脊柱起立筋は、背骨を真っ直ぐに保つための筋肉としての働きが最も大きく、良い姿勢を保ちやすくなります。若々しい綺麗な姿勢を目指す方には見逃せない筋肉です。脊柱起立筋は、腹筋、大臀筋、大腿四頭筋、下腿三頭筋などと協働し、直立姿勢を保つ筋力「抗重力筋」の役割を担っています。
2 パフォーマンスアップになる
脊柱起立筋を鍛えることで、上体のブレが少なくなり、歩行や階段の日常動作が楽になります。また多くのスポーツでも走る、跳ぶ、投げるというパフォーマンスアップのサポートをします。
3 腰痛の予防になる
脊柱起立筋を鍛えておくことで、腰痛の原因となる背中を丸くなることを防ぐことができます。背骨が伸びた姿勢は、体幹の筋肉のバランスを整える効果があり、神経の圧迫を回避し、腰痛予防になるのです。
4 腹筋が硬くなることを予防し、呼吸がしやすくなる
腹筋(腹斜筋)が硬くなると背中が丸くなり、呼吸もしにくい体になります。その腹筋と相反関係にある脊柱起立筋を鍛えておくことで、背中が丸くなるのを防ぐことができます。
脊柱起立筋を鍛える→背中がまっすぐになる→呼吸もしやすい→動作が楽になる という良い循環を生み出します。
参考)筋バランスの相反関係とは
5 肩こり解消につながる
肩こりの原因の1つに肩甲骨まわりの筋肉の過緊張があります。これは、背中が丸い姿勢が続くことで、肩甲骨まわりの僧帽筋(そうぼうきん)や菱形筋(りょうけいきん)が伸ばされて緊張が強いられることです。
そこで脊柱起立筋を鍛えることで、背中を真っ直ぐに伸ばすことができ、肩甲骨まわりの筋肉の緊張を緩和し、肩こり解消へ繋がります。
では次に「自宅でできる脊柱起立筋を効果的に鍛える方法」を紹介します。
自宅でできる!脊柱起立筋を効果的に鍛える方法
<ご注意>
エクササイズは無理なくできる範囲で行ってください。運動中に痛みを感じる場合は、医療機関での受診をお勧めします。なお、自己責任での実施をお願いします。
バックアーチ 交互上げ【やさしい】
鍛える筋肉: 脊柱起立筋 多裂筋 僧帽筋
運動方法:
- うつ伏せになり、両手と両足を伸ばしておきます
- 息を吐きながら、右手と左足を床から浮かせます
- 息を吸いながら、元の位置に戻ります
- 息を吐きながら、左手と右足を床から浮かせます
- 息を吸いながら、元の位置に戻ります
- 左右交互に繰り返します
回数: 左右10回ずつ
ポイント: 手と足を浮かせた時に3秒間静止すると効果的です
トランクローテーション
主に鍛える筋肉 腹斜筋 脊柱起立筋 多裂筋
エクササイズの方法
- 背中を伸ばし、四つん這いになります。
- 片手を頭の後ろに添えます。
- 息を吸いながら、体を捻りながら肘を天井に向けます。(胸が開きます)
- 息を吐きながら、元の位置に戻ります。
- 反対側も同様に行います。
回数 左右 各15回
ポイント
- フォームローラーを膝の間に挟むと、骨盤が安定されて良いフォームになります。
- 体全体で動かすようにしましょう!
エクササイズ動画
バックアーチ ローリング【やさしい/効く】
鍛える筋肉: 脊柱起立筋、多裂筋 腰方形筋 広背筋
運動方法:
- うつ伏せになり、両手と両足を伸ばしておきます
- 息を吐きながら、体を浮かせながら、両手を横から回し体の横につけます
- 息を吸いながら、手と体を元の位置に戻ります
- 2〜3を繰り返します
回数: 15回
ポイント: 手と足を浮かせた時に3秒間静止すると効果的です
ヒップリフト 【やさしい】
鍛えられる筋肉 : 脊柱起立筋、多裂筋、大臀筋、ハムストリングス
運動方法
- 仰向けになり、両膝を曲げておきます
- 息を吐きながら、お尻を持ち上げます(お尻、背筋に効きます)
- 息を吸いながら、元の位置に戻ります ※お尻を床につけずに浮かせておきます
- 繰り返します
回数: 15〜20回
ポイント:腹筋、背筋、お尻に力を入れて、体をまっすぐに保ちます。姿勢が崩れたら、始めからやり直しましょう!
バックアーチ ラットプルダウン
主に鍛える筋肉 脊柱起立筋 多裂筋 広背筋
エクササイズの方法
- マフラータオルを準備します。
- うつ伏せになり、両手でタオルを持ち頭の上で伸ばします。
- 息を吸いながら、タオルを首元まで引いてきます。
- 息を吐きながら、元の位置に戻ります。
- 3〜4を繰り返します。
回数の目安 10〜15回
ポイント
- 動作中、両手でタオルを引っ張り続けておきます。
- 肩の硬い場合(柔軟性の低下)、肩に負担がかかります。痛みのない範囲で行います
バードドック【難しめ/よく効く】
- 四つん這いになり、背筋を伸ばします
- 息を吐きながら、右手と左足を【床と平行に】伸ばします
- 息を吸いながら、伸ばした手足の【肘と膝】をお腹の前で近づけます
- 2〜3を繰り返します
- 反対側の手と足も同様に行います
回数: 15回
ポイント: 体のバランスが崩れた時は、安全のために初めからやり直します
椅子背筋トレーニング
鍛える筋肉: 脊柱起立筋、多裂筋、僧帽筋(下部)
運動方法:
- 椅子に座り、足を左右に開き、腹筋に力を入れます(ドローイン)
- 両手を天井に伸ばします
- 息を吸いながら、上体を倒します
- 息を吐きながら、元の位置に戻ります
- 3〜4を繰り返します
回数: 15回
ポイント: 常に腹筋に力をいれて、腰が反らないようにしましょう。
フロントスラム
主に鍛える筋肉 脊柱起立筋 多裂筋 大臀筋 大腿四頭筋 ハムストリングス 三角筋 僧帽筋
エクササイズの方法
- 肩幅より広めに足を広げ、両手を組んで天井に伸ばします
- 両手を伸ばしたまま、膝を曲げながらお辞儀の動作を行います。
- 両手は脚の間へ、背中は真っ直ぐ、お尻は後方にします
- ゆっくりと元の位置に戻ります
- 2〜3を繰り返します
回数 15回
ポイント
- 体幹がブレないように保持します。【腹筋に力を入れます】
- 動作中は背中を伸ばしておきます。
片足バランス背筋【きつめ/難しい】
- 背筋を伸ばし立ちます
- 息を吸いながら、両手と「左足」を伸ばします
- 息を吐きながら、元の位置に戻ります
- 息を吸いながら、両手と「右足」を伸ばします
- 息を吐きながら、元の位置に戻ります
- 左右交互に繰り返します
回数: 左右15回ずつ
ポイント: 体のバランスが崩れた時は、安全のために初めからやり直します
紹介したエクササイズの方法は動画で学ぶことができます。ぜひご覧くださいね!
【動画】自宅でできる脊柱起立筋を鍛えるエクササイズ
では、次に脊柱起立筋が硬い人の特徴、柔軟にするストレッチ法を紹介します。
脊柱起立筋が硬くなっている人の特徴とは?
- 反り腰姿勢になっている
- 腹筋が弱くなっている
- 物を持ち上げる動作が多い
- 同じ姿勢を繰り返すことが多い
- スマホ時間が長い(前屈み姿勢)
1 反り腰姿勢になっている
横から見ると腰が反っているように見える姿勢を「反り腰」と言います。この姿勢は、脊柱起立筋が硬い方に多く、骨盤が前に倒れる「前傾」となり、腰に負担がかかります。
この反り腰姿勢は、ハイヒールを長時間、履くことでも起こります。※ハイヒールはふくらはぎ(下腿三頭筋)に硬さも招きます
2 腹筋が弱くなっている
先程述べました「反り腰」姿勢では、脊柱起立筋と相反関係にある腹筋(腹直筋)が弱くなっていることが多いです。なぜならば、腹筋は反り腰の反対の「体を曲げる」働きをしているからです。つまり、体を曲げる筋力(腹直筋)よりも、体を反る動作(脊柱起立筋)の方が強いということが予測できます。
参考)筋バランスの相反関係とは
3 物を持ち上げる動作が多い
脊柱起立筋は、物を持ち上げるときによく使われる筋肉です。物を持ち上げることが多い場合、脊柱起立筋には過度な負担がかかり、筋肉が硬くなってしまいます。
4 同じ姿勢を繰り返すことが多い
立つ、座るという同じ姿勢を繰り返すことで、姿勢を真直ぐに保つ脊柱起立筋は酷使されます。そのため、脊柱起立筋は硬くなってしまいます。
5 スマホ時間が長い(前屈み姿勢)
スマートフォン、タブレットを見ている時間が長いと脊柱起立筋は硬くなります。なぜならば、スマートフォンやタブレットを見ている時、前屈みの姿勢になります。その前屈み姿勢は、背骨(脊柱)も丸めて、脊柱起立筋が緊張を強いられるからです。重たい荷物を持っていないのに腰が辛い、という場合、一度スマホ時間を調べる必要があります。
では、どのようにすれば脊柱起立筋の疲労回復をさせ、柔軟になるのか? 脊柱起立筋を疲労回復、柔軟にするストレッチを紹介します。
自宅でできる脊柱起立筋を柔軟にするストレッチ法
体を柔軟にするストレッチを安全かつ効果的に行うために
- 1ポーズに30秒間静止が基本です。(動かすストレッチの場合は動作はゆっくり)
- 特に硬いと感じる筋肉には2セット実施(30秒間×2回)をお勧めします
- ポーズを取っている間は自然呼吸を実施します
- 痛みを伴わない程度に体を伸ばします
- お風呂上がりに行うと効果抜群です
1 体前倒しストレッチ
伸ばす筋肉: 脊柱起立筋、内転筋
運動方法:
- 床に座り、あぐらをかきます
- 両手を前方に伸ばし、背中を丸くします
- 自然呼吸で30秒間静止します
- 元の位置に戻ります
- 両手を斜め方向に伸ばし、手を遠くにします
- 片側の脊柱起立筋が伸びます
- 自然呼吸で30秒間静止します
- 反対側にも同様に行います
2 キャット&ドック
- 四つん這いになります
- ゆっくりと背中を丸めます(猫のポーズ/脊柱起立筋が伸びます)
- 自然呼吸で5秒間静止します
- ゆっくりと体を反ります(犬のポーズ/腹直筋が伸びます)
- 自然呼吸で5秒間静止します
- 2〜5を繰り返します
ポイント: 動作をゆっくり行うと効果がアップします
3 両膝抱えストレッチ
伸ばす筋肉: 脊柱起立筋、大臀筋
運動方法:
- 仰向けになり、両膝を曲げておきます
- ゆっくりと足を上げて、両手で膝を抱え込みます
- 自然呼吸で30秒間静止します
- ゆっくりと足の裏を床につけて終了します
ポイント: 腹筋に力を入れておくと効果的です
4 椅子体曲げストレッチ
伸ばす筋肉: 脊柱起立筋
運動方法:
- 椅子に座り、自然呼吸を行います
- ゆっくりと背中を丸めながら、体を前に曲げていきます
- 自然呼吸で20秒間静止します
- ゆっくりと元の位置に戻ります
- ゆっくりと背中を丸めながら、体を斜めに曲げていきます
- 自然呼吸で20秒間静止します(片側の脊柱起立筋が伸びます)
- ゆっくりと元の位置に戻ります
- 反対側にも同様に行います
ポイント: 必ず動作はゆっくりと行なってください
5 椅子で体捻りストレッチ
伸ばす筋肉: 脊柱起立筋、腹斜筋
運動方法:
- 椅子に座り、体を捻ります
- 自然呼吸で30秒間静止します
- 反対側も同様に行います
ポイント: 体を真っ直ぐにしてから体を捻ると効果的です
6 フォームローラー脊柱起立筋
伸ばす筋肉: 脊柱起立筋
運動方法:
- 腰のあたりにフォームローラーが当たるように調整します
- 背中を丸めながら、背骨に添ってフォームローラーを転がします
- 15往復を目安に行います
- <応用編> 体を斜めに傾けながらフォームローラーを転がします
- 片側の脊柱起立筋がほぐれます
- 反対側にも同様に行います
ポイント: 腹筋に力を入れておくと効果的です。
紹介したエクササイズの方法は動画で学ぶことができます。ぜひご覧くださいね!
【動画】自宅でできる脊柱起立筋を柔軟にするストレッチ法
まとめ
いかがでしたでしょうか? 脊柱起立筋を筋トレで鍛えることは、良い姿勢を保つだけでなく、物を持ち上げる時の筋力、腰痛を予防、正しい呼吸のサポートと多くの場面で活躍をしています。鍛えるメリットは多くありますね。
また、脊柱起立筋は長時間のスマホ、同じ姿勢を繰り返すこと、物を持ち上げる動作が多いことで、疲労が蓄積し筋肉が硬くなります。このことで腰痛になってしまうのです。そのため、スマホや同じ姿勢の時間を短くすることや、姿勢を変えることはもちろんのこと、筋肉の疲労を回復させるストレッチの習慣が必要となります。
一方、腹直筋(腹筋)が弱っていると脊柱起立筋に負荷がかかり、疲労蓄積の原因となります。ですから、腹直筋を鍛えることは腰痛を予防するためにも必要となります。 参考)腹直筋を鍛える方法
脊柱起立筋が硬くなっている方に多い姿勢の反り腰。対策としては、腸腰筋や大腿直筋を伸ばす、腹直筋を鍛えることが有効です。
この記事を書いた人
小林素明 (城好きパーソナルトレーナー)
テレビ番組「ちちんぷいぷい」「大阪ほんわかテレビ」「ten」などに多数出演し、メディアからも注目されるパーソナルトレーナー。30年以上の指導経験と健康運動指導士の資格を有し、1万レッスンを超えるパーソナルトレーニング指導の実績。特に40代からシニア世代向けの「加齢に負けない」トレーニングに定評があり、親切で丁寧な指導が評価されている。
医療機関との連携を通じて、安全で効果的なトレーニング法を研究し、病院や企業での腰痛予防に関する講演では受講者の98%から「分かりやすかった」と高評価を得る。また、パーソナルトレーナー養成講座の講師としても豊富な実績を誇り、多くのトレーナーの育成に貢献しています。