ハムストリングス/大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋の解剖学(筋肉のしくみ)と効果的な筋トレ法、ストレッチの方法 YouTube動画あり

フィットネストレーナーの小林素明です。
 
ハムストリングスは太ももの裏側にある筋肉で、大腿二頭筋(長頭、短頭)、半腱様筋、半膜様筋の3つの筋肉から構成されています。このハムストリングスは、日常での足腰の動作で使われる筋肉で、スポーツでは走る、跳ぶ、投げる動作に欠かせない筋肉です。
 
また、ハムストリングスが硬くなると、お尻が垂れる「骨盤の後傾」になり、腰痛の原因にもなります。スポーツでハムストリングスの肉離れの怪我もあり、原因の1つである拮抗筋の大腿四頭筋とのバランスも必要。

では、ハムストリングとはどんな筋肉なのか? 鍛えるメリットは何か? 安全で効果的に鍛える方法は?を順番に話します。
 

目次

ハムストリングとはどんな筋肉なの?

ハムストリングとは、大腿二頭筋(長頭、短頭)、半腱様筋、半膜様筋の3つの筋肉。

大腿二頭筋(長頭、短頭)


筋肉の起始: 坐骨結節(長頭)、大腿骨の粗線(短頭)
筋肉の停止: 腓骨頭
神経支配: 坐骨神経(L5、S1、S2)
主な筋肉の働き(作用): 股関節の伸展、膝関節の屈曲
 

半腱様筋(はんけんようきん)


筋肉の起始: 坐骨結節
筋肉の停止: 脛骨内側面
神経支配: 坐骨神経(L5、S1、S2)
主な筋肉の働き(作用): 股関節の伸展、膝関節の屈曲
※縫工筋、薄筋とともに鵞足を形成
 

半膜様筋(はんまくようきん)


筋肉の起始: 坐骨結節
筋肉の停止: 脛骨の内側顆
神経支配: 坐骨神経(L5、S1、S2)
主な筋肉の働き(作用): 股関節の伸展、膝関節の屈曲

ハムストリングスの主な働き(作用)


ハムストリングスは、主に股関節の伸展(大臀筋と協力)、膝の屈曲を行っています。

ハムストリングスが弱ると肉離れが起こりやすくなる 

スポーツでよくある怪我として「肉離れ」がありますが、ハムストリングによく起こります。筋肉の強い収縮(急激に力が入る)、筋肉が引き伸ばされながら力が入る「遠心性の収縮」において肉離れが発生します。また、大腿四頭筋の筋力に対して、ハムストリングスの筋力が50%以下になると、肉離れの発生率が高くなることが研究で分かっています。

ハムストリングスを鍛えることは、肉離れの怪我の予防にも繋がることになります。 

参考)大腿四頭筋とは?

ハムストリングスの筋肉を分かりやすくYouTube動画にまとめています

では次に、ハムストリングスを鍛える(強くする)メリットとエクササイズ、そしてハムストリングスが硬くなるとどうなるか? ストレッチの方法を紹介します。

ハムストリングスを鍛えるメリット

  1. 足腰が強靭になれる
  2. 美脚になれる
  3. 怪我が少なくなる

1 足腰が強靭になれる


ハムストリングスは、股関節の伸展、膝の屈曲という足腰の動作の重要な働きをしています。日常やスポーツでのパフォーマンスアップに欠かせない筋肉と言えます。特に股関節の伸展は、全身のパワーを生み出す源になっています。

足腰を鍛える代名詞となっているスクワットも、ハムストリングを強力に鍛えるトレーニングです。
 

2 美脚になれる

ハムストリングスを鍛えることで、太もも裏のたるみ解消に繋がり、美脚効果も期待できます。

3 怪我が少なくなる

ハムストリングスが縮めば、大腿四頭筋が伸びるという太ももの前面と後面で拮抗関係を保ち、スムーズな足の動きを保っています。しかし、ハムストリングスと大腿四頭筋の筋力のバランスが崩れると、肉離れが起きやすいということが分かっています。(ハムストリングス:大腿四頭筋=1:2 以上が必要)

スポーツで怪我を防ぐためにも、ハムストリングスを強くしておくことは有効です。

 
では、次にハムストリングスを強くする「自宅でできるハムストリングスを効果的に鍛える方法」を紹介します。

自宅でできる!ハムストリングスを効果的に鍛える方法

<筋トレを効果的に行うために>
15回前後で限界 がくるような種目は筋力アップに効果的(ギリギリ限界はNG)
・20回以上できるようになれば、レベルアップします。
フォームが崩れたり、違うフォームはNG
・まずは気に入った1〜2種目を中心に行いましょう

<ご注意>
エクササイズは無理なくできる範囲で行ってください。運動中に痛みを感じる場合は、医療機関での受診をお勧めします。

1 床レッグカール【やさしい】


鍛える筋肉: ハムストリングス
運動方法:

  1. 四つん這いになります
  2. 片足を後方へ伸ばし、背中をまっすぐにしておきまし
  3. 息を吸いながら、伸ばした足を曲げます(膝の屈曲)
  4. 息を吐きながら、足を伸ばします
  5. 3〜4を繰り返します
  6. 反対側の足も同様に行います

回数:20回
 

2 ヒップリフト【やさしい】


鍛えられる筋肉 : お尻(大臀筋)、背筋(脊柱起立筋、多裂筋)、太もも裏(ハムストリングス)
運動方法

  1. 仰向けになり、両膝を曲げておきます
  2. 息を吐きながら、お尻を持ち上げます(お尻、背筋に効きます)
  3. 息を吐きながら、元の位置に戻ります
  4. 繰り返します

回数: 15〜20回
ポイント:腹筋、背筋、お尻に力を入れて、体をまっすぐに保ちます。姿勢が崩れたら、始めからやり直しましょう!
 

3 仰向けレッグカール【ややきつめ】


鍛える筋肉: ハムストリングス
運動方法:

  1. 仰向けになり膝を曲げます
  2. お尻を上げて、背筋、お尻、太もも裏を意識します
  3. 息を吸いながら、片足を伸ばします
  4. 息を吐きながら、伸ばした足を曲げます(膝の屈曲)
  5. 3〜4を左右交互に繰り返します

回数:左右10回ずつ
 

4 バランスボール・レッグカール【かなりきつい】


鍛える筋肉: ハムストリングス、大臀筋、脊柱起立筋
運動方法:

  1. ボールの上に足を乗せておきます
  2. 息を吸いながら、膝を曲げてボールを引き寄せます(膝の屈曲)
  3. 息を吐きながら、元の位置に戻ります
  4. 2〜3を左右交互に繰り返します

回数:10回
 

5 レッグカール・ウォーク 【やさしい】


鍛える筋肉: ハムストリングス
運動方法:

  1. 背筋を伸ばして立ちます
  2. 右足を一歩前に出し、左足を曲げます(膝の屈曲)
  3. 左足を一歩前に出し、右足を曲げます(膝の屈曲)
  4. 2〜3を繰り返します

回数:左右10回ずつ
 

6 振り出しウォーク【きつい/難しい】


鍛える筋肉: ハムストリングス、大臀筋
運動方法:

  1. 背筋を伸ばして立ちます
  2. 左足の腿を上げます
  3. 左足をゆっくりと伸ばし、そのまま足を床に戻します(股関節の伸展)
  4. 右足の腿を上げます
  5. 右足をゆっくりと伸ばし、そのまま足を床に戻します(股関節の伸展)
  6. 左右交互に行います

回数:左右10回ずつ
 

7 フルスクワット【ややきつめ】


鍛える筋肉: 大腿四頭筋大臀筋、ハムストリングス
運動方法:

  1. 両手を胸の前で組み、背中を伸ばします(足は肩幅よりやや広め)
  2. 息を吸いながら、できる範囲でお尻を下げます(背中は伸ばし、目線は前方)
  3. 息を吐きながら、元に戻ります
  4. 2〜3を繰り返します。

回数: 15〜20回
ポイント: お尻を下げると、強度が高くなります
 

8 バックランジ【ややきつめ】



鍛える筋肉: ハムストリングス、大腿四頭筋大臀筋
運動方法:

  1. 背筋を伸ばして立ちます
  2. 息を吸いながら、片足を後方に伸ばし、足を前後に開きます
  3. 息を吐きながら、元の位置に戻ります
  4. 左右交互に行います

回数:左右10回ずつ

紹介したエクササイズの方法は動画で学ぶことができます。ぜひご覧くださいね!

【動画】自宅でできるハムストリングスを鍛えるエクササイズ

 
では、次に腰痛にも関係が深い、ハムストリングスが硬くなっている人の特徴と対策法を紹介します。

ハムストリングスが硬くなっている人の特徴(ハムストリングスが硬くなるとどうなるの?)

1 体が前に曲げにくい
2 座った時に背中が丸くなる
3 膝が伸ばしにくい
 

1 体が前に曲げにくい

硬いハムストリングスは、体を前に曲げる(前屈)が苦手になります。これはハムストリングスが、骨盤(坐骨結節)についており、ハムストリングスが硬くなると骨盤の動きを制限させてしまうからです。このことによって、腰に負担がかかり、腰痛になりやすくなるのです。
 

2 姿勢が変わる(座った時に背中が丸くなる、骨盤の後傾)


硬いハムストリングスは、骨盤を地面に引っ張る力が生まれて、骨盤を後方へ傾ける「骨盤の後傾」姿勢になります。骨盤の後傾は、椅子に座った時に背中が丸くなる特徴があります。同時に猫背、お尻が垂れる、膝が曲がる姿勢になります。
 

3 膝が伸ばしにくい

硬いハムストリングスは、膝が曲がることが優位になるため、膝が伸ばしにくい状況です。そのため、膝の関節が十分に働かず、膝に負担がかかります。また、ハムストリングスの拮抗筋である大腿四頭筋が弱るというデメリットもあります。
 

ハムストリングスの硬さチェック


ハムストリングスの硬さをチェックする方法として、椅子で膝伸ばしがあります。

<方法>
1 椅子に腰掛けて、背筋を伸ばします
2 片足を床と水平に伸ばします

<硬さチェック>
体がまっすぐに保てる=OK
背中が曲がる = ハムストリングスが硬い

 
では、次に膝、腰の痛みを予防する自宅でできるハムストリングスを柔軟にするストレッチ法を紹介します。

自宅でできる!ハムストリングスを柔軟にするストレッチ法

体を柔軟にするストレッチを安全かつ効果的に行うために

  1. 1ポーズに30秒間静止が基本です。(動かすストレッチの場合は動作はゆっくり)
  2. 特に硬いと感じる筋肉には2セット実施(30秒間×2回)をお勧めします
  3. ポーズを取っている間は自然呼吸を実施します
  4. 痛みを伴わない程度に体を伸ばします
  5. お風呂上がりに行うと効果抜群です

太ももの裏のハムストリングスがしっかりと伸びてるなぁ〜と感じるストレッチを選択して、運動習慣を身につけてくださいね!

1 座りハムストリングス ストレッチ


伸ばす筋肉:ハムストリングス
運動方法:

  1. 床に座り、片足を曲げておきます
  2. 背中をまっすぐに伸ばし、両手を前方にします
  3. ゆっくりと体の重心を前方に移動します
  4. 太ももの裏が伸びます
  5. 自然呼吸で30秒間静止します
  6. 反対の足も同様に行います

2 膝曲げハムストリングス・ストレッチ


伸ばす筋肉:ハムストリングス
運動方法:

  1. 床に座り、膝を曲げた状態で足を開きます
  2. 背中をまっすぐに伸ばし、体をやや前方にします
  3. 太ももの裏が伸びます
  4. 自然呼吸で30秒間静止します

3 動くストレッチ 仰向けハムストリングス


伸ばす筋肉:ハムストリングス
運動方法:

  1. 仰向けになり、両手で右足の太ももの裏を支えます
  2. できる範囲で右足を伸ばします(太ももの裏が伸びます)
  3. 膝を曲げます
  4. 2〜3を10回繰り返します
  5. 左足も同様に行います

4 動くストレッチ 仰向けハムストリングス&ストレート【きつめ】


【注意】このストレッチは「3 動くストレッチ 仰向けハムストリングス」が十分にできてから行ってください。

伸ばす筋肉:ハムストリングス
運動方法:

  1. 仰向けになり、両足を伸ばします
  2. できる範囲で右足を上げて、両手で膝をサポートします
  3. 2で「2秒間保持」し、元の位置に戻ります(太ももの裏が伸びます)
  4. できる範囲で左足を上げて、両手で膝をサポートします
  5. 4で「2秒間保持」し、元の位置に戻ります(太ももの裏が伸びます)
  6. 左右交互に10回行います

5 立ちながらハムストリングス・ストレッチ


伸ばす筋肉:ハムストリングス
運動方法:

  1. 背中を伸ばして、右足を前に伸ばします
  2. 左足は曲げて、お尻を後方へ出します
  3. 自然呼吸で30秒間静止します。(太ももの裏が伸びます)
  4. 反対側も同様に行います

6 立ちながらハムストリングス・椅子ストレッチ


伸ばす筋肉:ハムストリングス
運動方法:

  1. 背中を伸ばして、右足を台の上に乗せます
  2. 背中を伸ばしたまま、体をやや前傾させます
  3. 自然呼吸で30秒間静止します。(太ももの裏が伸びます)
  4. 左足も同様に行います

7 歩きながらハムストリングス・ストレッチ 【むつかしい】


伸ばす筋肉:ハムストリングス
運動方法:

  1. 背中を伸ばして、右足を前に出します
  2. 左足を曲げて、お尻を後方に突き出します
  3. 両手で下から上にあげると同時に、体を起こします
  4. 左右交互に行います

8 フォームローラー ハムストリングスほぐし


ほぐれる筋肉:ハムストリングス
運動方法:

  1. 床に座り、フォームローラーを片足の太ももの裏にあてます
  2. 両手で床につき、お尻を浮かせて、ローラーで太もも裏を横断します
  3. 自然呼吸で30秒間を目安に行います
  4. 反対側の足も同様に行います

紹介したハムストリングスの柔軟ストレッチを動画で学ぶことができます。ぜひご覧くださいませ!

【動画】ハムストリングスを柔軟にするストレッチ法

まとめ 【ハムストリングス】筋肉のしくみと効果的な筋トレ

いかがでしたでしょうか? ハムストリングスは、姿勢だけでなく、腰や膝の痛みにも大きく影響する筋肉です。学校の柔軟性測定で、体を前に曲げる前屈が苦手だった方は、特に注意が必要です。

また、ハムストリングスは、大臀筋とともに股関節の伸展という脚のパワー(力と速さ)を生み出す源。スクワット、ランジなどで大臀筋と一緒に鍛えられるトレーニングは特におすすめです。

ハムストリングスが十分な力を発揮させるには、拮抗筋である大腿四頭筋の筋力、柔軟性も不可欠です。大腿四頭筋もぜひチェックしてみてくださいね。

この記事を書いた人

パーソナルトレーナー小林素明

小林素明

健康運動指導士 米国ハワイ州立大学医学部人体解剖学実習修了 介護予防運動トレーナー マッスルコンディショナー 日本臨床運動療法学会会員

【経歴】 運動指導歴30年超、テレビ出演多数、延べ1万人超のパーソナルトレーニング指導実績、YouTube登録者数1万人超。医療機関との連携も図り、安全かつ効果的なトレーニング法を研究。

フィットネスクラブ、温浴施設に17年間勤務後、株式会社ウェルネス&スマイルを起業。大阪市阿倍野区にパーソナルトレーニングどこでもフィットを開業し、「加齢に負けない筋肉づくり」「日常生活・スポーツ動作のパフォーマンスアップ」を得意とし、80歳代の方までトレーニング指導にあたる。病院をはじめとする医療機関、教育機関、不動産会社などで講演・講師活動。パーソナルトレーナー指導者養成講座の講師も務める。

【テレビ出演】 毎日放送「ちちんぷいぷい」/朝日放送テレビ「キャスト-CAST-」/読売テレビ「ten.」/テレビ朝日「ナニコレ珍百景」/読売テレビ「大阪ほんわかテレビ」/サンテレビ「4時!キャッチ」他

【講演・講師実績】 一般財団法人関西労働保健協会/経済産業省ヘルスケアサービス社会実践事業「医療運動マッチング対応トレーナー育成講習会」/徳島県教育委員会 /箕面市立病院/日本臨床運動療法学会(第36回)/ファインレジデンス枚方香里園(京阪電鉄不動産)特別講師/SSK /八尾市教育委員会/岸和田市民病院/南河内環境局組合 他多数 (敬称略)

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