寿命と歩く速度の関連性「30年差の秘密に迫る」

歩行と寿命の関係

大阪のパーソナルトレーナー小林素明です。

健康のための歩行は、「毎日1万歩を目指しましょう!」と言われていましたが、今やそのアプローチが進化し、「歩く速さを意識しましょう!」という時代へと移り変わっています。その背景の1つ、米国医師会雑誌「JAMA」に掲載された研究(2012年)で、歩く速度で生存期間を予測できることが明らかになったからです。

 この研究は、65歳以上の高齢者34,485人のデータを使用し、1986年から2000年にかけて行われた6~21年間にわたる追跡調査の結果を示しています。その結果、歩く速度が速いほど長生きが可能であり、性別によっても差があることが分かりました。※1

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同じ年齢で寿命の差が最大約30年!

歩行と予想生存年数データ 男性「Gait Speed and Survival in Older Adults」JAMA. 305(1), 50–58, 2011
図1

上の図(図1)は、65才以上の高齢者(男性)を対象に「歩く速度」から「生存年数」を予測した研究結果のグラフです。

65才・男性】 歩く速度と予想される生存年数

  • 時速5.6km(速歩き)の人:生存年数は約33年
  • 時速4.0km(ふつう歩き)の人: 約20年
  • 時速2.0km(ゆっくり歩き)の人: 約8年

速歩きの人(時速5.6km)と、ゆっくり歩きの人(時速2.0km)を比べますと、寿命は最大で25年の違いがあります。 

65才・女性】 歩く速度と予想される生存年数

  • 時速5.6km(速歩き)の人:生存年数は約41年
  • 時速4.0km(ふつう歩き)の人: 約27年
  • 時速2.0km(ゆっくり歩き)の人: 約12年

女性の65才では、速歩きの人(時速5.6km)と、ゆっくり歩きの人(時速2.0km)を比べますと、寿命が最大約30年の差があります。この差は大きいですね。

なぜ歩く速さと寿命が関連しているの? 

脚の筋肉ポンプ作用

歩く速さと寿命が関連している理由は、速く歩けない場合、体に異常や不調が存在し、スムーズな運動が妨げられるからです。その結果、日常生活の活動量が減少し、脚の筋力も低下し、運動不足が慢性化します。これにより、肥満、高血圧、心臓病、糖尿病などの生活習慣病にかかりやすくなるのです。

特に脚の筋力の低下は、重大な課題です。下半身には、全身の筋肉の約70%が集中し、大量の血液を循環させる重要な役割を果たしています。そのため、脚の筋力は血液循環にも大きな影響を与える要素であり、人生100年時代の今、脚の筋力を維持することが不可欠です。

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歩行はどんな効果が得られるの?

歩行による有酸素運動は、上の図の通り、大臀筋大腿四頭筋ハムストリングス下腿三頭筋前脛骨筋など脚の筋肉を使います。さらに血流を改善し、エネルギー消費と代謝を活性化し、肥満、心臓疾患、糖尿病などの生活習慣病を予防に役立ちます。

関連記事:筋力トレーニングとは?年齢に関係なく始められる基本と効果

ちなみに血流量は、安静のときに比べて最大運動時では約5倍に増えます。(上の図)その増えた血流は、ほぼ筋肉へ行き渡っています。この血流量の配分を見ても、いかに筋肉を動かすことが重要かが分かります。

歩幅と認知機能低下

認知機能と歩幅の関係

さらに、脚の筋力の低下により歩行時の「歩幅」が狭くなり、認知機能低下のリスクが高まることが東京都健康長寿研究チームによって明らかにされています。※2

歩幅が狭い人と広い人を比較すると、認知機能低下のリスクが3倍も高くなります。歩幅と脚の筋力は密接に関連しており、脚の筋力向上が健康の鍵であると言えるでしょう。

あなたも速くなれる!歩行プログラム

では、今からできる健康のための速歩プログラムを紹介しましょう。速歩のメリットには、筋力向上、持久力向上、心臓病や糖尿病などの生活習慣病予防、ストレス解消、睡眠の質の向上、認知機能の予防、関節痛の予防、骨粗しょう症予防などがあります。※3

一般的には「現在よりも速く歩くことを続ける」ですが、これはすぐに疲れてしまい、続けるのが難しいことがあります。代わりにお勧めしたいのは、誰でも無理なく実施できる歩行プログラムです。その方法は、普段の歩行に速歩を組み合わせる「歩行インターバルトレーニング」です。

歩行インターバルトレーニング

歩行インターバルトレーニング

普段歩き(3分間)、速歩(1分間)、普段歩き(3分間)、速歩(1分間)…  と交互に行います。もちろん、途中でジョギングに変えても構いません。この方法は無理なく続けられるだけでなく、膝や腰にかかる負担も軽減できます。また速歩きは、普段歩きよりも20%増しの速さから始めてみましょう!

正しい歩行フォーム 間違った歩行フォーム

正しい歩行フォーム、間違った歩行フォーム

健康になるために歩行を始めたけど、膝や腰が痛い。。。これは、歩行フォームに問題があるかも知れません。背中が丸くなったり、体に力が入りすぎて腰が反ってしまうフォームは、確実に体を痛めることになります。

歩行の時には、背中を伸ばして、前方を見ましょう。上半身はリラックスして、前後にゆっくりと腕を振るとより効果的です。

【関連記事】知っているようで知らないウォーキングの科学

パーソナルトレーナー推薦!歩行を強化する3つの筋トレ

筋トレ実践と筋トレ非実践者の筋力差

筋トレを続けている80歳の人は、筋トレをしていない20歳の筋力に相当することが研究で発表されました。※4 歩行のフォームや速度は、脚の筋力による影響が大きいため、筋トレを続けることはとても有利ですね。そこで歩行を強化するために鍛えておきたい筋肉は、大臀筋大腿四頭筋ハムストリングス下腿三頭筋前脛骨筋 です。これらの筋肉を効果的に鍛えて、歩行速度をアップさせる筋トレ法を紹介します。

関連記事:筋力トレーニングとは?年齢に関係なく始められる基本と効果

1 歩行時の姿勢を保持、下半身が動く腹筋トレーニング「デッドバグ」

腹横筋トレーニング デッドバグ

主に鍛える筋肉: 腹横筋 腸腰筋

エクササイズの方法

  1. 仰向けになり、腰と床のすき間を埋めるようにして腹筋に力を入れます。(腹圧を高める)
  2. 両手を天井に伸ばし、両足を上げて膝を曲げます。
  3. 息を吐きながら、「右手」と「左足」を床に近づけます
  4. 息を吸いながら、元の位置に戻ります。
  5. 3〜4を左右交互に繰り返します。

回数: 左右 各10回

注意点: 動作中は腰と床は近づけます。※腰を反らさない また、肘が曲がったり、体がブレないようにします。

2 脚力を効果的に養成するバックランジ

バックランジ 大腿四頭筋 大臀筋 ハムストリングスの筋トレ法

鍛える筋肉: ハムストリングス大腿四頭筋大臀筋

エクササイズの方法

  1. 背筋を伸ばして立ちます
  2. 息を吸いながら、片足を後方に伸ばし、足を前後に開きます
  3. 息を吐きながら、元の位置に戻ります
  4. 左右交互に行います

回数:左右10回ずつ

3 歩行やランニングのキック力を養成、美姿勢を作る「カーフレイズ」

カーフレイズ(腓腹筋、ヒラメ筋)筋トレ法

鍛える筋肉: 下腿三頭筋

エクササイズの方法

  1. 背筋を伸ばして立ちます
  2. 息を吐きながら、かかとを床からあげます(抗重力筋も鍛えられます)
  3. 息を吸いながら、元の位置に戻ります
  4. 2〜3を繰り返します

回数:15回
注意:姿勢を崩さないままで行ってください

階段も活用して脚力を養成しましょう!

階段上りでの股関節運動

階段上り下りは歩行よりも運動強度が高く、脚力を強力に養成します。階段上りでは、太もも付け根(腸腰筋)、お尻(大臀筋)、太もも(大腿四頭筋、ハムストリングス)が強烈に効いてきます。また、階段下りは太もも前面(大腿四頭筋)のエキセントリック収縮で、さらなる筋トレ効果を高め、膝の強化を加速させます。

階段を使う時には、フォームが重要になります。間違ったフォームは膝や腰を痛めることになります。正しい階段の上り方、下り方はこちらをご覧くださいませ。

関連記事:階段は下半身の筋トレ!階段昇降を効果的に行うためのポイントとは?正しいフォームと注意点

まとめ

いかがでしたでしょうか? 速歩のメリットには、筋力アップ、持久力向上、心臓病や糖尿病などの生活習慣病予防、ストレス解消、睡眠の質の向上、認知機能の予防、関節痛の予防、骨粗しょう症の予防など多岐に渡ります。このように速歩は多くの健康を手に入れることができます。

無理のない範囲で、歩行インターバルトレーニング、筋トレを生活の中に取り入れて、少しずつ速歩ができるよう筋力を維持したいものですね。

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参考文献

 ※1「Gait Speed and Survival in Older Adults」JAMA. 305(1), 50–58, 2011

 ※2「歩幅が狭い人は要注意 認知機能が低下しやすい人の特徴」谷口優 老人研NEWS No.250

 ※3 健康長寿ネット(公益財団法人長寿科学振興財団) https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/shintai-training/intabarusokuho.html

 ※4「筋力トレーニング実践者と非実践者の膝伸展力の加齢変化」WilmoreとCostil 1994

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大阪のパーソナルトレーナー小林素明
天空の城・竹田城(兵庫県)にて

テレビ番組「ちちんぷいぷい」「大阪ほんわかテレビ」「ten」などに多数出演し、メディアからも注目されるパーソナルトレーナー。30年以上の指導経験と健康運動指導士の資格を有し、1万レッスンを超えるパーソナルトレーニング指導の実績。特に40代からシニア世代向けの「加齢に負けない」トレーニングに定評があり、親切で丁寧な指導が評価されている。

医療機関との連携を通じて、安全で効果的なトレーニング法を研究し、病院や企業での腰痛予防に関する講演では受講者の98%から「分かりやすかった」と高評価を得る。また、パーソナルトレーナー養成講座の講師としても豊富な実績を誇り、多くのトレーナーの育成に貢献しています。

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