50代から健康寿命を延ばす!歩く速度を上げる歩行トレーニングと筋トレのすすめ

歩行トレーニング

パーソナルトレーナーの小林素明です。

最近、歩くときに「前より遅くなったかも」と感じたことはありませんか? また、つまづきやすくなったり、階段の上り下りがしんどく感じることはないでしょうか。実は、こうした変化の背景には「歩く速度の低下」が隠れているかもしれません

歩く速度は、健康寿命と深く関わっています。年齢とともに筋力やバランス能力が落ちると、自然と歩行スピードも低下し、転倒や要介護のリスクが高まります。

特に50代以降は、この変化に気づき、予防のための対策を始めることがとても大切です。

この記事では、歩く速度と健康寿命の関係から、50代から無理なく始められる歩行トレーニングや筋トレの具体的な方法までを分かりやすくご紹介します。

ご自身やご家族の将来の健康のために、ぜひお役立てください。

【歩く速度】同じ年齢でも寿命の差が最大約30年!

歩行と予想生存年数データ 男性「Gait Speed and Survival in Older Adults」JAMA. 305(1), 50–58, 2011
図1

この研究は、65歳以上の高齢者34,485人のデータを使用し、1986年から2000年にかけて行われた6~21年間にわたる追跡調査の結果を示しています。

その結果、歩く速度が速いほど長生きが可能であり、性別によっても差があることが分かりました。※1

65才・男性】 歩く速度と予想される生存年数

  • 時速5.6km(速歩き)の人:生存年数は約33年
  • 時速4.0km(ふつう歩き)の人: 約20年
  • 時速2.0km(ゆっくり歩き)の人: 約8年

速歩きの人(時速5.6km)と、ゆっくり歩きの人(時速2.0km)を比べますと、寿命は最大で25年の違いがあります。 

65才・女性】 歩く速度と予想される生存年数

  • 時速5.6km(速歩き)の人:生存年数は約41年
  • 時速4.0km(ふつう歩き)の人: 約27年
  • 時速2.0km(ゆっくり歩き)の人: 約12年

女性の65才では、速歩きの人(時速5.6km)と、ゆっくり歩きの人(時速2.0km)を比べますと、寿命が最大約30年の差があります。この差は大きいですね。

歩く速さと寿命の深い関係とは?

脚の筋肉ポンプ作用

歩くスピードと寿命には、深い関わりがあるといわれています。というのも、歩くのが遅くなっているとき、体のどこかに不調があったり、思うように体が動いていなかったりすることが多いからです。

その結果、外出や買い物などの日常の動きが少なくなり、足の筋肉が衰えてしまいます。このままでは、運動不足が慢性化し、体重が増えたり、血圧が上がったり、糖尿病や心臓の病気など、いわゆる生活習慣病にもつながりやすくなります。

中でも気をつけたいのが「足の筋力の低下」です。人の筋肉の約7割は下半身にあり、足は血液を全身にめぐらせるポンプのような働きもしています

だからこそ、足の筋力が弱ると、体全体の血流にも悪影響が出てしまうのです。人生100年の時代、元気に過ごすためには、足の筋力をしっかり保つことが欠かせません。

歩行はどんな効果が得られるの?

歩行による有酸素運動は、上の図の通り、大臀筋大腿四頭筋ハムストリングス下腿三頭筋前脛骨筋など脚の筋肉を使います。さらに血流を改善し、エネルギー消費と代謝を活性化し、肥満、心臓疾患、糖尿病などの生活習慣病を予防に役立ちます。

関連記事:筋力トレーニングとは?年齢に関係なく始められる基本と効果

ちなみに血流量は、安静のときに比べて最大運動時では約5倍に増えます。(上の図)その増えた血流は、ほぼ筋肉へ行き渡っています。この血流量の配分を見ても、いかに筋肉を動かすことが重要かが分かります。

一緒に読んでおきたいおすすめ記事

歩幅と認知機能低下

認知機能と歩幅の関係

さらに、脚の筋力の低下により歩行時の「歩幅」が狭くなり、認知機能低下のリスクが高まることが東京都健康長寿研究チームによって明らかにされています。※2

歩幅が狭い人と広い人を比較すると、認知機能低下のリスクが3倍も高くなります。歩幅と脚の筋力は密接に関連しており、脚の筋力向上が健康の鍵であると言えるでしょう。

あなたも速くなれる!歩行プログラム

では、今からできる健康のための速歩プログラムを紹介しましょう。速歩のメリットには、筋力向上、持久力向上、心臓病や糖尿病などの生活習慣病予防、ストレス解消、睡眠の質の向上、認知機能の予防、関節痛の予防、骨粗しょう症予防などがあります。※3

一般的には「現在よりも速く歩くことを続ける」ですが、これはすぐに疲れてしまい、続けるのが難しいことがあります。代わりにお勧めしたいのは、誰でも無理なく実施できる歩行プログラムです。その方法は、普段の歩行に速歩を組み合わせる「歩行インターバルトレーニング」です。

歩行インターバルトレーニング

歩行インターバルトレーニング

普段歩き(3分間)、速歩(1分間)、普段歩き(3分間)、速歩(1分間)…  と交互に行います。もちろん、途中でジョギングに変えても構いません。この方法は無理なく続けられるだけでなく、膝や腰にかかる負担も軽減できます。

また速歩きは、普段歩きよりも20%増しの速さから始めてみましょう!

正しい歩行フォーム 間違った歩行フォーム

正しい歩行フォーム、間違った歩行フォーム

健康になるために歩行を始めたけど、膝や腰が痛い。。。これは、歩行フォームに問題があるかも知れません。背中が丸くなったり、体に力が入りすぎて腰が反ってしまうフォームは、確実に体を痛めることになります。

歩行の時には、背中を伸ばして、前方を見ましょう。上半身はリラックスして、前後にゆっくりと腕を振るとより効果的です。

【関連記事】知っているようで知らないウォーキングの科学

パーソナルトレーナー推薦!歩行を強化する3つの筋トレ

筋トレ実践と筋トレ非実践者の筋力差

筋トレを続けている80歳の人は、筋トレをしていない20歳の筋力に相当することが研究で発表されました。※4 歩行のフォームや速度は、脚の筋力による影響が大きいため、筋トレを続けることはとても有利ですね。

そこで歩行を強化するために鍛えておきたい筋肉は、大臀筋大腿四頭筋ハムストリングス下腿三頭筋前脛骨筋 です。これらの筋肉を効果的に鍛えて、歩行速度をアップさせる筋トレ法を紹介します。

関連記事:筋力トレーニングとは?年齢に関係なく始められる基本と効果

1 歩行時の姿勢を保持、下半身が動く腹筋トレーニング「デッドバグ」

腹横筋トレーニング デッドバグ

主に鍛える筋肉: 腹横筋 腸腰筋

エクササイズの方法

  1. 仰向けになり、腰と床のすき間を埋めるようにして腹筋に力を入れます。(腹圧を高める)
  2. 両手を天井に伸ばし、両足を上げて膝を曲げます。
  3. 息を吐きながら、「右手」と「左足」を床に近づけます
  4. 息を吸いながら、元の位置に戻ります。
  5. 3〜4を左右交互に繰り返します。

回数: 左右 各10回

注意点: 動作中は腰と床は近づけます。※腰を反らさない また、肘が曲がったり、体がブレないようにします。

2 脚力を効果的に養成するバックランジ

バックランジ 大腿四頭筋 大臀筋 ハムストリングスの筋トレ法

鍛える筋肉: ハムストリングス大腿四頭筋大臀筋

エクササイズの方法

  1. 背筋を伸ばして立ちます
  2. 息を吸いながら、片足を後方に伸ばし、足を前後に開きます
  3. 息を吐きながら、元の位置に戻ります
  4. 左右交互に行います

回数:左右10回ずつ

3 歩行やランニングのキック力を養成、美姿勢を作る「カーフレイズ」

カーフレイズ(腓腹筋、ヒラメ筋)筋トレ法

鍛える筋肉: 下腿三頭筋

エクササイズの方法

  1. 背筋を伸ばして立ちます
  2. 息を吐きながら、かかとを床からあげます(抗重力筋も鍛えられます)
  3. 息を吸いながら、元の位置に戻ります
  4. 2〜3を繰り返します

回数:15回
注意:姿勢を崩さないままで行ってください

階段も活用して脚力を養成しましょう

階段上りでの股関節運動

日常の中にある「階段」は、実はとても効果的な運動の場です。階段の上り下りは、ふつうの歩行よりも負荷が高く、足腰をしっかりと鍛えることができます

特に階段を上るときは、太ももの付け根(腸腰筋)、お尻(大臀筋)、太もも全体(大腿四頭筋やハムストリングス)など、大きな筋肉が力強く働きます。

また、階段を下るときには、太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)がブレーキのような働きをして、膝まわりを支えるトレーニング効果も高まります。

ただし、効果がある分、フォームにも注意が必要です。

体の使い方を間違えると、膝や腰に負担がかかってしまうことがあります。安全に続けていくためにも、正しい階段の上り方・下り方を知っておくことが大切です。

ご興味のある方は、こちらでフォームのポイントをご覧ください。

関連記事:階段は下半身の筋トレ!階段昇降を効果的に行うためのポイントとは?正しいフォームと注意点

まとめ

歩行トレーニング

歩く速さは、まさに今のご自身の体調や体力を映す「健康の鏡」といえます。


特に速歩には、筋力や持久力を高めるだけでなく、生活習慣病の予防、ストレス解消、睡眠の質の改善、さらに骨や関節を守る効果など、たくさんのメリットがあります。

これらの効果を一度に得られるのが「歩く」という、身近でシンプルな運動です。

いきなり速く歩こうとする必要はありません。まずは、いつもの散歩にほんの少しリズムをつけてみる、階段を使ってみるなど、小さなことから始めてみてください。

筋力を保つには、軽い筋トレや、ゆっくりしたインターバル歩行もおすすめです。

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参考文献

 ※1「Gait Speed and Survival in Older Adults」JAMA. 305(1), 50–58, 2011

 ※2「歩幅が狭い人は要注意 認知機能が低下しやすい人の特徴」谷口優 老人研NEWS No.250

 ※3 健康長寿ネット(公益財団法人長寿科学振興財団) https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/shintai-training/intabarusokuho.html

 ※4「筋力トレーニング実践者と非実践者の膝伸展力の加齢変化」WilmoreとCostil 1994

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テレビ番組「ちちんぷいぷい」「大阪ほんわかテレビ」「ten.」などに出演し、専門的でわかりやすい解説が好評のフィットネストレーナー。

健康運動指導士の有資格者であり、指導歴は30年以上。2010年に大阪市でパーソナルフィットネスジム「どこでもフィット」を開業し、これまでに延べ1万回以上のパーソナルトレーニングを実施。特に50代以上の「加齢に負けない体づくり」に定評がある。

医療機関と連携した安全性の高い運動指導、企業・団体向けの腰痛予防や健康経営に関する講演も数多く行い、受講者の98%から「わかりやすい」と高い評価を得ている。

趣味は城巡り、鉄道とグルメの旅、スポーツ観戦、80~90年代のプロレス、書店めぐり、そして焼肉。身体づくりも人生も、楽しみながら続けることを大切にしている。

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