大臀筋の解剖学と筋トレ法:筋肉の基礎知識から実践ストレッチまでパーソナルトレーナーが解説

 
フィットネストレーナーの小林素明です。

お尻の筋肉は、大臀筋、中臀筋、小臀筋の3つの筋肉で構成されています。中でも大臀筋は、体の中で最も厚みがあり、大きな力が発揮できる筋肉。(34kgm) 日常生活では階段登り、坂道登り、多くのスポーツの場面で必要とされる筋肉です。また、腸腰筋の作用や腰痛、姿勢不良、ヒップアップに深い関係があります。

 
では、大臀筋とはどんな筋肉なのでしょうか?

大臀筋とは? 筋肉の解剖


大臀筋は、お尻を覆っており、お尻の中心部の骨盤からお尻の横(腸脛靭帯)、大腿骨に付いている筋肉です。
 
筋肉の起始: 仙骨、尾骨、腸骨稜、胸腰筋膜など
筋肉の停止: 腸脛靭帯、大腿骨の殿筋粗面

筋肉の働き(作用): 股関節伸展、股関節外旋、股関節外転、股関節内転
神経支配:下殿神経(L5〜S2)

大臀筋の主な働き(作用)とは?

足を後方へ移動させる「股関節伸展」では大臀筋が強力、ハムストリングス(大腿二頭筋、半膜様筋、半腱様筋)、大内転筋が作用している。ちなみにハムストリングスは大臀筋の2/3の力を発揮している。

足を外側へ開く「股関節外転」は中臀筋が大きな力を発揮する。大臀筋は一部(高位)で外転作用を行なっている。

大臀筋が弱くなるとどうなる?


大臀筋が弱くなると、歩き方に変化が起ったり、お尻が垂れるということが起こります。
 

大臀筋が弱い人の歩き方とは?

大臀筋が弱った人の歩き方


大臀筋の筋力が低下した状態では、歩行の着地前(遊脚後期)において、上体を後方へ反らすような動作(体幹の過伸展)となります。つまり、体を後方へ傾けながら歩く姿勢となり、腰への負担も増加します。それに伴って、歩くスピードも低下します。
 

まっすぐ姿勢を維持する抗重力筋


姿勢を保つために働く筋肉のことを「抗重力筋(こうじゅうりょくきん)」といいます。この筋肉は、足のすね(前脛骨筋)、ふくらはぎ(下腿三頭筋)、太もも前面(大腿四頭筋)、太もも後面(ハムストリングス)、お尻(大臀筋)、太もも付け根(腸腰筋)、腹筋(腹直筋など)、背筋(脊柱起立筋など)、首回り(胸鎖乳突筋など)が、バランスよく働いて姿勢をまっすぐに保持しています。

抗重力筋のいずれかの筋肉が弱ってくると、筋肉のバランスは崩れて、見た目の姿勢に変化が起こり、疲れやすい体になります。

膝の内側の痛みと大臀筋の関係とは

スクワット運動、ランニングやテニス、バスケットボール、バレーボールなどで膝の内側が痛む場合、動作中に「膝が内側に入る(内股)」と「つま先の向きが外側」=ニーイン、トゥアウトになっていることが考えられます。この内股になる原因の1つとして大臀筋が弱くなっていることです。大臀筋を鍛えることで、膝の内側の痛みの緩和につながります。

 
では、次に大臀筋が衰えないようにするための「自宅でできる大臀筋を効果的に鍛える方法」を紹介します。

自宅でできる大臀筋を効果的に鍛える方法

ヒップリフト 【運動強度】やさしい



鍛えられる筋肉 : 大臀筋、脊柱起立筋、多裂筋、ハムストリングス
運動方法

  1. 仰向けになり、両膝を曲げておきます
  2. 息を吐きながら、お尻を持ち上げます(お尻、背筋に効きます)
  3. 息を吐きながら、元の位置に戻ります
  4. 繰り返します

回数: 15〜20回
ポイント:腹筋、背筋、お尻に力を入れて、体をまっすぐに保ちます。姿勢が崩れたら、始めからやり直しましょう!

バックキック 大臀筋中心パターン

鍛えられる筋肉:大臀筋、ハムストリングス
運動方法

  1. 四つん這いになり、背中を伸ばします。
  2. 息を吐きながら、ひざを曲げた状態を保ち、かかとを天井に上げます。
  3. 息を吸いながら、元の位置に戻ります。
  4. 3〜4を繰り返します。
  5. 反対側も足も同様に行います。

回数: 15〜20回
ポイント: 腰を反らさず、大臀筋に意識しましょう!

バックキック 【運動強度】やさしい



鍛えられる筋肉:大臀筋
運動方法

  1. 四つん這いになります(膝の保護のため、タオルを敷くことを推奨)
  2. 息を吐きながら、足を後方へ伸ばします(お尻に効きます)
  3. 息を吐きながら、元の位置に戻ります
  4. 繰り返します

回数: 15〜20回
ポイント: 腰を反らさず、大臀筋に意識しましょう!
 

床クロスオーバー 【運動強度】ややきつめ


鍛えられる筋肉 お尻(大臀筋)
運動方法

  1. 両手を前で組み、中腰姿勢で背すじを伸ばします【写真上】
  2. 自然呼吸で、右足を浮かせて、左右に移動させます。
  3. 足を移動させている時には、体はブレないようにします(体幹も鍛えられます)
  4. 繰り返します

回数: 左右 各15回
ポイント: 目線は前方で体はまっすぐです。

バックランジ

鍛える筋肉: 大臀筋、大腿四頭筋ハムストリングス
運動方法:

  1. 両手を腰に当てて、背中を伸ばします。
  2. 息を吸いながら、「左足」を後方へ伸ばし、しゃがみます。
  3. 息を吐きながら、「左足」で床を蹴り、元の位置に戻ります。
  4. 息を吸いながら、「右足」を後方へ伸ばし、しゃがみます。
  5. 息を吐きながら、「右足」で床を蹴り、元の位置に戻ります。
  6. 2〜5を繰り返します。

回数: 左右 各15回
ポイント: 目線は前方で体はまっすぐです。

エクササイズ動画 バックランジ

クロスランジ(カーテシーランジ)

鍛える筋肉: 大臀筋、大腿四頭筋ハムストリングス中臀筋
運動方法:

  1. 両手を前方で構えて、背中を伸ばします。
  2. 息を吸いながら、「左足」を斜め後方でクロスして、しゃがみます。【臀部は後方】
  3. 息を吐きながら、「左足」で床を蹴り、元の位置に戻ります。
  4. 息を吸いながら、「右足」を斜め後方でクロスして、しゃがみます。【臀部は後方】
  5. 息を吐きながら、「右足」で床を蹴り、元の位置に戻ります。
  6. 2〜5を繰り返します。

回数: 左右 各15回
ポイント: 目線は前方で体はまっすぐです。

レベルアップ編: 左右交互から片足連続で行うと負荷が高くなります。

4 フルスクワット【きつめ】 


鍛える筋肉: 大臀筋、大腿四頭筋ハムストリングス
運動方法:

  1. 両手を胸の前で組み、背中を伸ばします(足は肩幅よりやや広め)
  2. 息を吸いながら、できる範囲でお尻を下げます(背中は伸ばし、目線は前方)
  3. 息を吐きながら、元に戻ります
  4. 2〜3を繰り返します。

回数: 15〜20回
ポイント: お尻を下げると、強度が高くなります

片足スクワット

鍛える筋肉: 大臀筋、大腿四頭筋ハムストリングス
運動方法:

  1. 片足をベンチ台(椅子)の上に置き、足を前後に開きます。(両手は腰に当てます)
  2. 息を吸いながら、しゃがみます。
  3. 息を吐きながら、元の位置に戻ります。
  4. 2〜4を繰り返します。
  5. 足を前後入れ替えて、同様に行います。

回数: 左右 各15〜20回

バックランジ&ニーアップ【かなりきつめ、難しい】


鍛える筋肉:大臀筋、腸腰筋大腿四頭筋ハムストリングス
運動方法:

  1. 息を吸いながら、腕を振りながら足を前後に開きます(バックランジ) ※写真上
  2. 息を吐きながら、高く腿上げを行います
  3. 同じ足で1〜2を繰り返します
  4. 反対側の足も同様に行います

ポイント: 足を開いた時、腿を上げたときは静止します(効きます)
回数: 左右15回ずつ


【動画】自宅でできる!大臀筋を効果的に鍛える方法

大臀筋が硬くなるとどうなる?


大臀筋の筋肉が硬くなる(緊張)と、股関節の多くの動作が制限されます。例えば、床からモノを拾う、しゃがんで靴紐を結ぶ、靴下を履くなどの「しゃがむ動作」が辛くなります。その代償動作として、過剰に体を曲げなくてはならず(過剰な体幹屈曲)、腰痛が起こる危険性があります。

大臀筋が硬くなることで、腿上げが苦手になる(腸腰筋が弱くなる)


また、大臀筋が硬くなると足を上げる動作(股関節の屈曲)の柔軟性が失われて、腿上げに必要な主働筋である「腸腰筋」が弱ってきます。この状態が長く続けば続くほど、ますます腸腰筋が弱ります。その結果、躓くことが多くなる、階段がしんどくなる、歩幅が狭くなることが起こります。

 
では、次に大臀筋の硬さを緩和する!自宅でできる大臀筋を柔軟にするストレッチ法を紹介します。

大臀筋を柔軟、ストレッチする方法

体を柔軟にするストレッチを安全かつ効果的に行うために

  1. 1ポーズに30秒間静止が基本です。(動かすストレッチの場合は動作はゆっくり)
  2. 特に硬いと感じる筋肉には2セット実施(30秒間×2回)をお勧めします
  3. ポーズを取っている間は自然呼吸を実施します
  4. 痛みを伴わない程度に体を伸ばします
  5. お風呂上がりに行うと効果抜群です

1 膝抱えストレッチ


伸びる筋肉: お尻(大臀筋)
運動方法

  1. 仰向けになり、両膝を曲げておきます
  2. 片足を曲げて膝を抱えます。
  3. 反対側の足は伸ばしておきます
  4. 自然呼吸で30秒間静止します。反対側も同様に行います

ポイント:膝がお腹に近づくほど柔軟度はアップします
 

2 仰向け膝横倒しストレッチ


伸びる筋肉: お尻(大臀筋)
運動方法

  1. 仰向けになります
  2. 「右足」を「左足」の膝の外側にかけます
  3. 左手で、「右足」の太ももの外側を持ちます。(大臀筋が伸びます)
  4. 自然呼吸で30秒間静止します。反対側も同様に行います

ポイント:お尻が床から浮きすぎないようにします
 

3 足前後の股関節ストレッチ


伸びる筋肉: お尻(大臀筋)、太もも付け根(腸腰筋
運動方法

  1. 足を前後に開きます
  2. 体をまっすぐにしたまま、お尻をやや前方へ移動します
  3. 前足の大臀筋、後ろ足の腸腰筋が伸びます
  4. 自然呼吸で30秒間静止します。反対側も同様に行います

ポイント: お尻、太もも付け根が伸びているのを意識しましょう!
 
同時に腰痛予防対策もできるお尻の梨状筋ストレッチもお勧めします!
 

4 台・足前後の股関節ストレッチ


伸びる筋肉: お尻(大臀筋)、太もも付け根(腸腰筋
運動方法

  1. 台の上に足を乗せて、足を前後に開きます
  2. 体をまっすぐにしたまま、お尻をやや前方へ移動します
  3. 前足の大臀筋、後ろ足の腸腰筋が伸びます
  4. 自然呼吸で30秒間静止します。反対側も同様に行います

ポイント: お尻、太もも付け根が伸びているのを意識しましょう!
 
同時に腰痛予防対策もできるお尻の梨状筋ストレッチもお勧めします!
 

5 ウォーク・大臀筋ストレッチ



歩くストレッチで、より大臀筋を伸ばすことができます。
伸びる筋肉: お尻(大臀筋)
運動方法

  1. ゆっくりと足を一歩前に出します
  2. 反対の足をあげると同時に、両手で太ももの裏を支えます
  3. 大臀筋が伸びてきます
  4. 左右交互に行います。左右5回ずつ。

ポイント: 腿上げをして、手で足をサポートしたら3秒間静止してみましょう
 

6 フォームローラー 大臀筋ほぐし



ほぐれる筋肉: お尻(大臀筋)
運動方法

  1. フィームローラーをお尻の下に置きます
  2. 両手は床に置き、ローラーの上でお尻を滑らせるようにします
  3. ローラーを往復させます
  4. 30秒間を目安に行います

ポイント: 気持ちいい範囲で行なってください

 
大臀筋を伸ばすストレッチをしっかりマスターできる動画を用意しました。ぜひともご覧くださいませ!

【動画】大臀筋を柔軟にするストレッチ法

大臀筋の解剖、筋トレ&ストレッチの方法

いかがでしたでしょうか? 大臀筋はスポーツの走る、跳ぶ、投げるのパワーを発揮する時に、欠かすことのできない筋肉。それだけでなく、お尻が垂れてきたり、日常生活でも歩行速度やフォームに悪影響が出たり、かがむ動作が苦手になる、腰痛になります。

それだけに、大臀筋を低下させないための筋トレ、大臀筋を柔軟にするストレッチ体操はぜひやっておきたいものです。

また、大臀筋との反対の作用(拮抗筋)である腸腰筋のエクササイズを行うと、さらに筋肉のバランスが整い、エクササイズの効果もアップします。ぜひチェックしてくださいね。→ 腸腰筋の記事

この記事を書いた人

大阪のパーソナルトレーナー小林素明
天空の城・竹田城(兵庫県)にて

小林素明 (城好きパーソナルトレーナー)

テレビ番組「ちちんぷいぷい」「大阪ほんわかテレビ」「ten」などに多数出演し、メディアからも注目されるパーソナルトレーナー。30年以上の指導経験と健康運動指導士の資格を有し、1万レッスンを超えるパーソナルトレーニング指導の実績。特に40代からシニア世代向けの「加齢に負けない」トレーニングに定評があり、親切で丁寧な指導が評価されている。

医療機関との連携を通じて、安全で効果的なトレーニング法を研究し、病院や企業での腰痛予防に関する講演では受講者の98%から「分かりやすかった」と高評価を得る。また、パーソナルトレーナー養成講座の講師としても豊富な実績を誇り、多くのトレーナーの育成に貢献しています。

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