中臀筋の筋トレ「ヒップアブダクター/外転トレーニング」で陥りやすい3つの罠とは? 現役パーソナルトレーナーが中臀筋の鍛え方を分析
パーソナルトレーナーの小林素明です。
中臀筋を効果的に鍛える方法として、足を真横に上げる外転トレーニング(ヒップアブダクター)が知られています。(上の図) ところが、同じ外転トレーニングをしても、中臀筋の筋力アップができる人、できない人に分かれます。
なぜ、そのようなことが起こるのか? どのようにすれば中臀筋を正しく鍛えることができるのかを話します。
中臀筋を鍛えるメリット 太い脚の予防にも最適!
中臀筋はお尻の横側にあり、最大の股関節・外転筋力(脚を真横に上げる動作)で、骨盤と大腿骨をガチッと固定し、股関節を支えています。中臀筋の重要な役割は、歩行やランニング、階段昇りで片足立ちになった時、骨盤が下がらないように保持することです。
中臀筋の筋力が弱ると、片足立ちの時に骨盤を水平に維持できず、お尻が横に突き出したり、体が横に倒れたりします。その際、脚に負担がかかりますので脚が太くなってしまうリスクもあります。動作のパフォーマンスも低下し、ゴルフのスイング時においては、身体のブレが生じて、飛距離が伸びない、コントロールが効かないことが起こります。
中臀筋の分かりやすい筋肉の解剖、効果的な筋トレ、ストレッチの方法とは?
中臀筋が正しく鍛えられない理由とは?
- 内転筋が硬いことが原因で中臀筋に効いていない
- 中臀筋よりも「腰方形筋」が優先され骨盤が動く(代償動作)
- 外転トレーニングで足が前方へ移動している
1 内転筋が硬いことが原因で中臀筋に効いていない
足を外側に広げる「股関節の外転」は、身体の中心から45度まで動かすことができます。(関節の可動域) この範囲まで関節を動かすことで、中臀筋がしっかりと効いてきます。
しかし、太もも内側の「内転筋」が硬くなっていると、外転の角度が制限され、思うように足を上げることができません。そのために中臀筋の筋肉の収縮(力)が入りにくく、中臀筋が弱くなります。
2 中臀筋よりも「腰方形筋」が優先され骨盤が動く(代償動作)
外転トレーニングを行うときに、中臀筋が作用せず、腰にある腰方形筋が活動し、骨盤が上方に移動(骨盤の歪み)します。このまま続けると、中臀筋は鍛えられず、腰方形筋が強化されます。(中臀筋は弱ったまま) 骨盤の歪みも強くなり、膝痛、腰痛も招きます。
3 外転トレーニングで足が前方へ移動している
外転トレーニングを行うときに、足を上げる方向が真横ではなく、斜め前方に上がってしまうケースです。この場合、太もも付け根にある「大腿筋膜張筋」に強い緊張があり、中臀筋よりも優先して筋肉の収縮が行われています。このまま続けると、中臀筋は鍛えられず、大腿筋膜張筋が強化されます。
正しく中臀筋を鍛えるための対策法とは?
今からは、中臀筋を正しい方法でしっかり鍛えるための対策法を紹介します。内転筋ストレッチは姿勢も良くなり、美脚効果も期待できますよ!
1 内転筋の柔軟性をアップさせる
内転筋は硬くなりやすい筋肉です。放っておくと、足が上げにくいだけでなく、骨盤の歪み、腰痛や痛を招きます。そうならないためにも内転筋を伸ばして、中臀筋がよく動くようになり強化されやすくなります。
椅子で開脚の内転筋ストレッチ
運動方法
- 両足をできる範囲で開き、椅子に肘を当てます
- 背筋を伸ばします
- 自然呼吸で内転筋を伸ばします
時間: 30秒間
ポイント:背中は丸めないようにします
立ちながら開脚の内転筋ストレッチ
運動方法
- 脚を左右に開きます
- ゆっくりとお尻を下げて、片方の足は伸ばします
- 自然呼吸で内転筋を伸ばします
- 反対も同様に行います
時間: 30秒間
ポイント:背中は丸めないようにします
仕事や家事の合間にやっておきたい内転筋ストレッチ
運動方法
- 脚を左右に開きます
- 両手を膝の内側に当てて、肩入れを行います
- 自然呼吸で内転筋を伸ばします
- 反対も同様に行います
時間: 30秒間
ポイント:背中は丸めないようにします
内転筋ストレッチの動画
2 外転トレーニングで壁を使う、骨盤を固定させる
トレーニングの時に腰方形筋、大腿筋膜張筋が作用しないよう、壁に背を向けて、手で骨盤を固定します。
運動方法
- 横向きになり、壁に背中を当てます
- 骨盤に手を当てて固定します。
- 上になっている足は伸ばしておきます(股関節の伸展位)
- 息を吐きながら、足を外側(天井方向)へ上げて行きます(中臀筋に効きます)
- 息を吸いながら、元の位置に戻ります
- 2〜3を繰り返します
回数: 15回
ポイント:腹筋に力を入れて、体をまっすぐに保ちます。姿勢が崩れたら、始めからやり直しましょう!
片足立ちのスクワットは中臀筋を満遍なく強化できる最強のトレーニング
片足立ちになると支持脚(床に着地している脚)は、体重の2倍以上の筋力が必要で、その多くは中臀筋が役割を担っています。つまり、片足立ちになるだけで、中臀筋が強化されます。
また、片足立ちでスクワットを行うと、中臀筋が満遍なく鍛えられることが分かっています。(上のイラスト)中臀筋の強化トレーニングとして、片足スクワットをお勧めする理由がココにあります。
片足スクワットのやり方
運動方法:
- 両手を腰に当てて、片足を曲げます(片足立ち)
- 息を吸いながら、体をやや前傾でお尻を下げます。前後の脚を開くようにします。
- 息を吐きながら、元の位置に戻ります
- 2〜3を繰り返します。
- 反対の足も同様に行います。
回数: 左右15回ずつ
注意: 上体や膝がブレないようにします
まとめ 中臀筋の正しい鍛え方
中臀筋は普段あまり意識をすることがないため、本当に鍛えられているのか?と疑問を抱えている方が多い筋肉です。また、中臀筋を鍛える代表的なトレーニングの外転トレーニングでは、中臀筋ではない筋肉が働いたり、骨盤の歪みを誘発することがあります。そのために、中臀筋は正しい動かし方が求められる重要な筋肉です。
歩行やランニング、バスケットボールやアメリカンフットボールなどでのサイドステップでも中臀筋は活動し、股関節の安定化に欠かせない筋肉です。ぜひ、正しく中臀筋が鍛えられているかをチェックしてみてくださいね!
この記事を書いた人
小林素明 (城好きパーソナルトレーナー)
テレビ番組「ちちんぷいぷい」「大阪ほんわかテレビ」「ten」などに多数出演し、メディアからも注目されるパーソナルトレーナー。30年以上の指導経験と健康運動指導士の資格を有し、1万レッスンを超えるパーソナルトレーニング指導の実績。特に40代からシニア世代向けの「加齢に負けない」トレーニングに定評があり、親切で丁寧な指導が評価されている。
医療機関との連携を通じて、安全で効果的なトレーニング法を研究し、病院や企業での腰痛予防に関する講演では受講者の98%から「分かりやすかった」と高評価を得る。また、パーソナルトレーナー養成講座の講師としても豊富な実績を誇り、多くのトレーナーの育成に貢献しています。