中臀筋を鍛える!効果的な筋トレとストレッチ法を徹底解説
大阪のパーソナルトレーナー小林素明です。
中臀筋は、お尻の外側に位置する筋肉で、小臀筋(インナーマッスル)とともに骨盤を支える重要な役割を果たしています。中臀筋が弱くなったり硬くなると、歩行に影響を及ぼし、骨盤の歪みや腰痛、膝痛の原因となります。また、内転筋とのバランスが崩れることでも知られており、ランニング中の膝や腰のスポーツ障害にもつながりやすいです。
中臀筋をしっかり鍛えることで、正しい姿勢を保ち、美しい歩き方や脚のライン、ヒップアップ効果も期待できます。さらに、腰痛や膝痛の予防にもつながります。ここでは、中臀筋の働きや効果的なトレーニング方法について解説します。
中臀筋とは?解剖学的な役割と重要性をわかりやすく解説
中臀筋とは、臀部に位置する筋肉で、腸骨(骨盤)と大腿骨を結びつけています。この筋肉は、骨盤の安定を保ち、股関節の外転を主な役割としています。中臀筋の前部は股関節の内旋や屈曲に、後部は外旋や伸展に関与します。また、この筋肉は上殿神経により支配されています。
中臀筋が硬くなったり短縮すると、腰痛や膝の痛み、姿勢の悪化、股関節痛などの原因となるため、柔軟性を保つことが重要です。
中臀筋の起始停止、作用とは?
筋肉の起始 | 前殿筋線と後殿筋線の間の腸骨翼の外表面 |
筋肉の停止 | 大転子の外側面 |
主な筋肉の働き(作用) | 股関節の外転、股関節の外旋、股関節の内旋 |
神経支配 | 上殿神経(L4,L5,S1) |
中臀筋の主な働き(作用)とは?
中臀筋の主な役割は、股関節の外転、つまり足を外側に広げる動きをサポートすることです。この筋肉は、足を動かす際に股関節を安定させるために重要な役割を果たしています。また、股関節の内旋(足を内側に回す動き)は中臀筋の前部が担当し、外旋(足を外側に回す動き)は後部が担っています。
中臀筋は、スポーツシーンでも大活躍する筋肉です。例えば、野球の投球動作やゴルフのスイング、バスケットボールの動きなど、さまざまなスポーツで必要不可欠です。特にゴルフでは、中臀筋を強化することで飛距離のアップに繋がります。当ジムのお客様も、中臀筋強化によって59歳にしてゴルフ新記録、飛距離アップを実現されています。
さらに、スピードスケートやクロスカントリースキー、相撲、ラグビーなど、横への動きが多いスポーツでは、中臀筋の働きがパフォーマンスを左右します。
関連記事
中臀筋の前部、後部の役割と特徴
中臀筋は腸骨(骨盤)を覆う大きな筋肉です。中臀筋の前部、後部で役割が異なっています。
中臀筋前部: 股関節の外転、内旋。股関節の屈曲の補助を行う。中臀筋の前部の筋力は強い。
中臀筋後部: 股関節の伸展、外転、外旋を行う。弱化していることが覆い。
● 中臀筋の前部線維、後部線維を満遍なく鍛えるには片足スクワットがお勧め→解説はこちら
中臀筋が弱くなるとどうなるの?
中臀筋が弱くなると、左右に動く動作が苦手になったり、歩行のフォームに異常が見られるようになります。それは中臀筋が弱っている側の足が地面に着地した際、骨盤を安定させる中臀筋が耐えられず、上体が傾くからです。(外転力の低下)
中臀筋の低下による歩行(中臀筋歩行)は、足の着地の際に体が揺れる歩き方に変わります。また股関節、膝に過剰な負担がかかり「股関節の痛み」「変形性膝関節症」へと繋がる危険性があります。
※股関節外転筋力低下や麻痺が原因となり、片足立ちをすると骨盤が下がっている= トレンデレンブルグ徴候
中臀筋が弱ると膝を痛めやすい「ニーイン、トゥアウト」
弱い中臀筋、大臀筋は、しゃがむ動作(スクワット)で「膝が内側に入る(内股)」「つま先の向きが外側」=ニーイン、トゥアウト(上の写真)が現れます。ランニング、テニス、バスケットボールなどのスポーツでは、膝の内側に過大な負荷がかかり膝を痛めることになります。後ほど紹介する中臀筋の筋トレは、膝痛の予防改善にも繋がりますので、心当たりのある方はぜひ実践してくださいね。
ニーイントゥアウトがよく分かる動画
なぜ中臀筋を鍛えておいた方が良いのか?
日常生活での歩行、階段の昇り降り、段差を超える動作は、片足立ちでの安定性が欠かせません。この片足立ちを可能にしているのが、股関節外転筋(中臀筋、小臀筋、大腿筋膜張筋など)の筋力です。安定した片足立ちには、股関節外転筋力は体重の2倍の力が必要です。主な外転筋力は中臀筋が担っています。
そのため、片足立ちの際に股関節外転筋力が体重の2倍を下回る場合には、骨盤と体幹が傾きます。(臨床ではトレンデレンブルク症候と言います) この骨盤と体幹が傾いた状態では、片側のお尻を突き出す特徴的な歩き方になります。この歩き方を繰り返すことで、慢性的な腰痛、膝痛を引き起こすことや、脚が太くなりやすくなります。
中臀筋が弱くなる、考えられる理由
中臀筋の十分な活動には、股関節の伸展位(立った状態で足を後方へ伸ばす)ができているか? 内転筋が硬くなっていないか? を考える必要があります。
股関節の伸展位について
・股関節の屈曲動作(腸腰筋、大腿直筋)が硬くなっていないか? 腸腰筋のことを詳しく知る
・大臀筋、ハムストリングスが弱くなっていないか?
中臀筋が硬くなるとどうなるの?
中臀筋が硬くなっている状態では、立っている時に硬くなっている側(中臀筋)に体が傾きます。また中臀筋の拮抗筋である、内転筋(太ももの内側)が慢性的な筋力低下を招きます。すなわち、内転筋の弱さは、中臀筋の硬さの影響も考える必要があります。
内転筋の強化ポイント
中臀筋の硬さをほぐす(ストレッチ、ボールリリース)→内転筋の筋トレへ
中臀筋を効果的に鍛えて強化する筋トレ 自宅トレーニング法
中臀筋の強化には、足を外へ広げる(外転)動作を行って鍛えること。しかも、正確な動作が求められるのが中臀筋のトレーニングです。まずは、2番目の「壁当て&骨盤サポートの股関節外転トレーニング」で動作の練習をされることをオススメします。(中臀筋にしっかりと効きます)
中臀筋を鍛えるときに絶対に気をつけておくべき注意事項「代償動作」
中臀筋を鍛えるときに起こりやすいよくある間違いがあります。それは、中臀筋以外の筋肉を使って鍛えてしまうことです。中臀筋が弱い方に陥りやすい罠です。
よくある間違い【1】 骨盤が上がってしまう(腰方形筋が使われている)
中臀筋を強化するときには、足を外側に広げる「外転」運動を行います。足を外側に広げるときに、骨盤が固定されずに上方へ移動してしまうことがあります。これは目的とする中臀筋が使われずに、骨盤と腰椎(背骨)を繋いでいる腰方形筋が作用しているのです。
この場合には、中臀筋ではなく腰方形筋を鍛えることになりますので、ほとんど効果は得られないと思ってください。対処法としては、骨盤が動かないよう手でしっかりと骨盤を固定することです。
よくある間違い【2】 開始時の足の位置が前方にある
足を外側へ開く「外転」動作を開始するとき、足が真横ではなく前方にある。太ももの側面にある「大腿筋膜張筋」(だいたいきんまくちょうきん)に力が入り、中臀筋が作用しません。
対処法としては、必ず体の真横に足を揃えて、真横へ開く(外転)するようにします。
【必見】失敗しない中臀筋の鍛え方を動画(YouTube)で学んでみる
中臀筋のトレーニング、筋トレを効果的に行うために
・15回前後で限界 がくるような種目は筋力アップに効果的(ギリギリ限界はNG)
・フォームが崩れたり、違うフォームはNG
・1回につき4秒間(2秒で下ろして、2秒であげる)を目安
1 横向き股関節外転トレーニング 【やさしい】
鍛えられる筋肉
お尻(中臀筋)
運動方法
- 横向きになり、上になっている足は伸ばしておきます(股関節の伸展位)
- 息を吐きながら、足を外側(天井方向)へ上げて行きます(中臀筋に効きます)
- 息を吸いながら、元の位置に戻ります
- 繰り返します
<より効果的に> エクササイズ中に骨盤が動かないように、手でサポートします
回数: 15回
ポイント:腹筋に力を入れて、体をまっすぐに保ちます。姿勢が崩れたら、始めからやり直しましょう!
2 壁当て&骨盤サポートの股関節外転トレーニング【やさしく効く】
鍛えられる筋肉
お尻(中臀筋)
運動方法
- 壁に体の背面をつけて、骨盤に手でサポートします。
- 横向きになり、上になっている足は伸ばしておきます(股関節の伸展位)
- 息を吐きながら、足を外側(天井方向)へ上げて行きます(中臀筋に効きます)
- 息を吸いながら、元の位置に戻ります
- 繰り返します
回数: 15回
ポイント:腹筋に力を入れて、体をまっすぐに保ちます。姿勢が崩れたら、始めからやり直しましょう!
3 サイドプランク、股関節外転トレーニング【ややきつめ】
鍛えられる筋肉
お尻(中臀筋)、お腹の横(腹斜筋)
運動方法
- 横向きになり、肘と膝を床につけます(サイドプランクの姿勢)
- 息を吐きながら、足を外側(天井方向)へ上げて行きます(中臀筋に効きます)
- 息を吸いながら、元の位置に戻ります
- 繰り返します
回数: 15回
ポイント:下になっている中臀筋も姿勢保持のために鍛えられています。(アイソメトリック)
4 サイドプランク、股関節外転ローリング
鍛えられる筋肉
お尻(中臀筋)、お腹の横(腹斜筋)
運動方法
- 横向きになり、肘と膝を床につけます(サイドプランクの姿勢)
- 上になっている側の足を「床と水平」に伸ばしておきます
- 自然呼吸で足を回転させます
回数: 10回転
ポイント:姿勢が保持できなくなったらエクササイズは完了です。
5 バランスボール骨盤上下
鍛えられる筋肉
お尻(中臀筋)
運動方法
- バランスボールをお尻の横に当てて、壁にもたれます。
- ボールに当てている側の足を「ももあげ」します。
- ボールを落とさないように、お尻(骨盤)を上下に動かします
- 踏ん張っている足の側の中臀筋が鍛えられます
回数: 15回
ポイント:姿勢が保持できなくなったらエクササイズは完了です。(再チャレンジ)
片足スクワットは効果的に中臀筋を鍛えることができる
片足立ちになると、股関節で体のバランスを保持するため中臀筋に大きな負荷がかかります。そのため、片足で行うスクワットは中臀筋を効果的に鍛えることができます。片足スクワットでの可動範囲のすべていにおいて中臀筋を鍛えるます。(上の図)
中臀筋を効果的に強化する筋トレ 自宅エクササイズ【YouTube動画】
中臀筋をほぐし柔軟するストレッチ方法
体を柔軟にするストレッチを安全かつ効果的に行うために
中臀筋はお尻の外側(骨盤)に広くついていることもあり、複数のストレッチを行うことをお勧めしています。特に 3「前部線維」 4「後部線維」の2つのストレッチの違いを感じてみてくださいね。
ストレッチ体操のフォーム
1 足上げ中臀筋ストレッチ
運動方法
- 片足を曲げて、反対の足を太ももの上にのせます
- 背筋伸ばし、お尻の大臀筋を伸ばします
- 自然呼吸で30秒間静止します
- 下の写真は、座って行うときのストレッチ
2 体倒し中臀筋ストレッチ
運動の方法
- 床にあぐらで座ります
- 両手を床につけて、片足を後方へ伸ばします
- ゆっくりと体を前に曲げて、お尻を伸ばします
- 自然呼吸で30秒間静止します
- 反対側の足も同様に行います
3 中臀筋「前部線維」ストレッチ
運動の方法
- 仰向けになります
- 片足を曲げ、膝の外側に反対の足をのせておきます
- 痛みのない範囲で、ゆっくりと膝を床に近づけます
- 自然呼吸で30秒間静止します
- 反対側の足も同様に行います
ポイント 膝や股関節の痛みのない範囲で行なってください
4 中臀筋「後部線維」ストレッチ
運動の方法
- 仰向けになります
- 片足を曲げ、手で膝の外側を持ちます
- 痛みのない範囲で、ゆっくりと膝を床に近づけます(膝は曲げたまま)
- 自然呼吸で30秒間静止します
- 反対側の足も同様に行います
ポイント あげた足の膝は曲げておきます
中臀筋をほぐす柔軟ストレッチ【YouTube動画】
まとめ 中臀筋
いかがでしたでしょうか? 中臀筋はスポーツ動作だけでなく、姿勢の歪み、腰や膝の痛み(変形性膝関節症)、歩行や階段の動作にも影響が出ます。実際、中臀筋の筋トレしただけで、歩行フォームが変わった!という事例を多く見てきました。それだけに、中臀筋のエクササイズは欠かせませんね。
合わせて、大臀筋、内転筋、腸腰筋のエクササイズを行うことで、さらに効果が上がりますよ。
参考文献
- 「カパンジー機能解剖学」原著第7版 A.I.Kapandji原著/塩田悦仁訳 医歯薬出版
- 「骨格筋ハンドブック」原書第3版 野村 嶬 (監) 南江堂
- 「筋骨格系のキネシオロジー」原著第3版 医歯薬出版
- 「Dr.マスコリーノ Know the Body 筋・骨格の理解と触診のすべて」 医歯薬出版
- 「新 動きの解剖学」ブランディーヌ・カレ・ジェルマン著 科学新聞社出版局
この記事を書いた人
小林素明 (城好きパーソナルトレーナー)
テレビ番組「ちちんぷいぷい」「大阪ほんわかテレビ」「ten」などに多数出演し、メディアからも注目されるパーソナルトレーナー。30年以上の指導経験と健康運動指導士の資格を有し、1万レッスンを超えるパーソナルトレーニング指導の実績。特に40代からシニア世代向けの「加齢に負けない」トレーニングに定評があり、親切で丁寧な指導が評価されている。
医療機関との連携を通じて、安全で効果的なトレーニング法を研究し、病院や企業での腰痛予防に関する講演では受講者の98%から「分かりやすかった」と高評価を得る。また、パーソナルトレーナー養成講座の講師としても豊富な実績を誇り、多くのトレーナーの育成に貢献しています。