多裂筋の解剖・筋トレ・ストレッチ法の完全ガイド 大阪のパーソナルトレーナーが徹底解説
大阪のパーソナルトレーナー小林素明です。
多裂筋(たれつきん)は、背筋の深層にあるインナーマッスルで、背骨に付着している筋肉です。主な働きとして、背骨(脊柱)の安定性、座っているとき立っているときの姿勢保持を補助しています。また、多裂筋は、わずかに動く程度であり関節の安定性が中心で脊柱起立筋、腹斜筋、腹横筋とともに腰回りの保護を行い、腰の強化や腰痛の予防に欠かせない筋肉です。
一方で、膝を曲げていないことや、遠くの物を持ち上げようとしたときには、腰に負担がかかり多裂筋を損傷することがあり、ギックリ腰となります。
では、多裂筋は、どんな筋肉なのか? 鍛えるメリットは何か? 安全で効果的に鍛える方法は?を順番に話します。
多裂筋とはどんな筋肉なの?
筋肉の起始 | 後仙骨孔と上後腸骨棘との間の仙骨後面、全腰椎の乳頭突起、全腰椎の横突起、下位4頚椎の関節突起 |
筋肉の停止 | 起始より上の椎骨の横突起 |
神経支配 | 脊髄神経の後枝 |
主な筋肉の働き(作用 | 体幹の伸展、側屈、回旋 |
多裂筋、半棘筋、回旋筋は横突棘筋と言われている。多裂筋は良い姿勢を保つ、脊柱の安定性を補助しています。
多裂筋の主な働き
1 脊柱の伸展 | 上体を後方へ反らす動作 (脊柱起立筋も同様) |
2 体幹の回旋 | 上体を左右に回旋させる動作(腹斜筋も同様) ※同側回旋=内腹斜筋、反対側回旋=外腹斜筋、多裂筋 |
3 体幹の側屈 | 上体を横に倒す動作(脊柱起立筋も同様) |
多裂筋を鍛えるメリットとは?
1 腰回りが強くなる「腰のコルセット」腰痛予防ができる
体幹のインナーマッスルである多裂筋(腰部)、腹横筋が同時に収縮することにより、腰回りを強靭にする「腰のコルセット」の作用があります。反対に多裂筋や腹横筋の筋肉機能が低下すると、腰のコルセット作用も低下し、腰の関節や靭帯に負担がかかり、腰を痛めることになります。
腰痛がある人の場合、腰部多裂筋が断面積の30%程度が減少するという報告があり、腰の安定力も著しく低下することが考えられます。
2 スポーツのパフォーマンス向上になる
多裂筋を鍛えることで、ゴルフやテニス、野球、柔道、バドミントン、陸上のハンマー投げ、槍投げなど体を回旋させる多くのスポーツでのパーフォマンスアップや怪我の予防のサポートをします。
3 良い姿勢になれる
多裂筋を鍛えることで、背骨を真っ直ぐにするための力が身につき、良い姿勢のサポートをしてくれます。
では次に「自宅でできる多裂筋を効果的に鍛える方法」を紹介します。
多裂筋を効果的に鍛える筋力トレーニング法
<筋トレを効果的に行うために>
・15回前後で限界 がくるような種目は筋力アップに効果的(ギリギリ限界はNG)
・20回以上できるようになれば、レベルアップします。
・フォームが崩れたり、違うフォームはNG
・まずは気に入った1〜2種目を中心に行いましょう
<ご注意>
エクササイズは無理なくできる範囲で行ってください。運動中に痛みを感じる場合は、医療機関での受診をお勧めします。なお、自己責任での実施をお願いします。
多裂筋の鍛え方/バックアーチ 交互上げ【やさしい】
鍛える筋肉: 多裂筋、脊柱起立筋
運動方法1
- うつ伏せになり、床と太ももの付け根の間に手を挟みます
- 息を吐きながら、両足を浮かせます
- 息を吸いながら、元に戻ります
- 2〜3を10回行います
運動方法2
- うつ伏せになり、両手と両足を伸ばしておきます
- 息を吐きながら、両手と両足を床から浮かせます
- 息を吸いながら、元の位置に戻ります
- 2〜3を15回行います
回数: 15回
ポイント: 手と足を浮かせた時に3秒間静止すると効果的です
多裂筋の鍛え方/ハンドニー【やさしい】
- 四つん這いになり、背中を伸ばします
- 右手と左足を【床と平行に】伸ばします
- 自然呼吸を行いながら、30秒間静止します
- 反対側の手と足も同様に行います
回数: 30秒間
ポイント: 体のバランスが崩れた時は、安全のために初めからやり直します
多裂筋の鍛え方/ブリッジ【やさしい】
鍛えられる筋肉 : 多裂筋、脊柱起立筋、大臀筋、ハムストリングス
運動方法
- 仰向けになり、つま先を上げて、両膝を曲げておきます
- 息を吐きながら、お尻を持ち上げます(お尻、背筋に効きます)
- 息を吸いながら、元の位置に戻ります
- 2〜3を繰り返します
回数: 15〜20回
ポイント:腹筋、背筋、お尻に力を入れて、体をまっすぐに保ちます。姿勢が崩れたら、始めからやり直しましょう!
多裂筋の鍛え方/足開きプランク【ややきつめ】
- 両肘を床につけて、つま先立ちになります
- 両足を左右に開きます(背筋に効きます)
- 自然呼吸で20〜30秒間行います
回数: 20〜30秒間
ポイント: 体をまっすぐに保ちます。姿勢が崩れたら、始めからやり直しましょう!
多裂筋の鍛え方/リーチ【姿勢がややきつめ】
鍛えられる筋肉 : 多裂筋、脊柱起立筋
運動方法
- 両手を前方へ伸ばし、背中を伸ばしておきます
- 息を吸いながら、背中を伸ばし、両手を前方へ移動します
- 息を吐きながら、元の位置へ戻ります
- 2〜3を繰り返します
回数: 10回
ポイント: 動作中は背中を伸ばし、できる範囲で両手を伸ばします
多裂筋の鍛え方/グッドモーニング【姿勢がややきつめ】
鍛えられる筋肉 : 多裂筋、脊柱起立筋
運動方法
- 両手で突っ張り棒をもち、背中を伸ばしておきます
- 息を吸いながら、体を前方へ倒します
- 息を吐きながら、元の位置へ戻ります
- 2〜3を繰り返します
回数: 10回
ポイント: 動作中は背中を伸ばし、できる範囲で体を前傾させます
紹介したエクササイズの方法は動画で学ぶことができます。ぜひご覧くださいね!
【動画】自宅で多裂筋を鍛える筋力トレーニング
次に硬くなった多裂筋を柔軟にする方法を紹介します。筋トレと合わせて行うと効果的ですよ!
多裂筋を柔軟にするストレッチ体操
多裂筋を柔軟にするストレッチを安全かつ効果的に行うために
ストレッチ体操はフォームが重要です!
多裂筋の柔軟ストレッチ/両膝抱えストレッチ
- 仰向けになり、両膝を曲げておきます
- ゆっくりと足を上げて、両手で膝を抱え込みます
- 自然呼吸で30秒間静止します
- ゆっくりと足の裏を床につけて終了します
ポイント: 腹筋に力を入れておくと効果的です
多裂筋の柔軟ストレッチ/腰捻りストレッチ
- 仰向けになり、右足を曲げておきます
- 右足をあげて、左手で右足の太ももの外側を添えておきます
- ゆっくり体を捻り、右足を床に近づけます
- 自然呼吸で30秒間静止します
- 反対側も同様に行います
ポイント: 目線は天井に向けておきましょう
多裂筋の柔軟ストレッチ/キャット&ドック
伸ばす筋肉: 多裂筋、脊柱起立筋
運動方法:
- 四つん這いになります
- ゆっくりと背中を丸めます(猫のポーズ/多裂筋、脊柱起立筋が伸びます)
- 自然呼吸で5秒間静止します
- ゆっくりと体を反ります
- 自然呼吸で5秒間静止します
- 2〜5を繰り返します
ポイント: 背中を丸める時に腹筋に力を入れておくと効果的です
多裂筋の柔軟ストレッチ/体前倒しストレッチ
伸ばす筋肉: 多裂筋、脊柱起立筋、内転筋
運動方法:
- 床に座り、あぐらをかきます
- 両手を前方に伸ばし、背中を丸くします
- 自然呼吸で30秒間静止します
- 元の位置に戻ります
- 両手を斜め方向に伸ばし、手を遠くにします
- 片側の脊柱起立筋が伸びます
- 自然呼吸で30秒間静止します
- 反対側にも同様に行います
多裂筋の柔軟ストレッチ/椅子体曲げストレッチ
伸ばす筋肉: 多裂筋、脊柱起立筋
運動方法:
- 椅子に座り、自然呼吸を行います
- ゆっくりと背中を丸めながら、体を前に曲げていきます
- 自然呼吸で20秒間静止します
- ゆっくりと元の位置に戻ります
ポイント: 必ず動作はゆっくりと行なってください
紹介したエクササイズの方法は動画で学ぶことができます。ぜひご覧くださいね!
【動画】多裂筋を柔軟にするストレッチ体操
まとめ 多裂筋エクササイズ
いかがでしたでしょうか?多裂筋は、首から腰の背骨(脊椎)を繋ぐ筋肉と言われ、大きな動きはなく、関節の保護の役割が多い筋肉です。特に腰部にある多裂筋は、腰周りを強靭にするための「腰のコルセット」を作り出す役割があり、体幹のインナーマッスルである腹横筋とともに腰痛の予防に貢献しています。
そのため、腰を強化したい場合には、腹横筋、腰回りをサポートしている腹斜筋も同時に鍛えておくことが大切になります。
この記事を書いた人
小林素明 (城好きパーソナルトレーナー)
テレビ番組「ちちんぷいぷい」「大阪ほんわかテレビ」「ten」などに多数出演し、メディアからも注目されるパーソナルトレーナー。30年以上の指導経験と健康運動指導士の資格を有し、1万レッスンを超えるパーソナルトレーニング指導の実績。特に40代からシニア世代向けの「加齢に負けない」トレーニングに定評があり、親切で丁寧な指導が評価されている。
医療機関との連携を通じて、安全で効果的なトレーニング法を研究し、病院や企業での腰痛予防に関する講演では受講者の98%から「分かりやすかった」と高評価を得る。また、パーソナルトレーナー養成講座の講師としても豊富な実績を誇り、多くのトレーナーの育成に貢献しています。