転倒の原因と対策をわかりやすく解説 自宅でできる転倒予防トレーニング

パーソナルトレーナーの小林素明です。年齢を重ねると気になってくる「転倒」。
「なぜ転びやすくなるの?」「転倒の原因は年のせいだけ?」「どんな対策をすればいいの?」と疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。
特に65歳以上の高齢者にとって転倒は、ただのケガでは済まされない重大な問題です。
脚の骨折がきっかけで寝たきりや要介護状態になることもあり、健康寿命を左右するリスクのひとつといえます。
そこで今回は、転倒の主な原因と、自宅でできるかんたんな予防トレーニングについて、わかりやすくご紹介します。
この記事は以下のような方におすすめです!
- つまずいたり、よろけたりすることが増えてきた
- 転倒の原因を知って予防したい
- 自宅でできる運動を探している
- 体力の衰えが気になっている
この記事を読めば、転倒の仕組みが理解でき、自分の体のどこを鍛えればよいかが明確になります。
今日から始められる予防の第一歩として、ぜひお役立てください。
なぜ転倒が危険なのか?

転倒は、高齢者にとって命に関わる重大な問題です。
介護が必要になるきっかけとして、よく知られているのは「認知症」や「脳卒中」ですが、実は「骨折・転倒」もその一因です。
厚生労働省の調査によると、65歳以上の方が介護を受けることになった理由の第4位が「骨折・転倒」でした。これは見過ごせない数字です。※1
また、転倒が原因で命を落とすこともあります。不慮の事故による死因では、「転倒・転落・墜落」が「交通事故」の約4倍となっており、転倒の危険性は想像以上に高いのです。
特に注意が必要なのが、骨粗しょう症と診断された方や、骨がもろくなりやすい女性です。転倒によって股関節や手首などを骨折し、そのまま寝たきりになってしまう例もあります。
大切なのは、転倒を「年のせい」で済ませないことです。
どこで、どんなふうに転倒が起きているのか。そして、どうすれば防げるのか。これを知ることが、健康な暮らしを続ける第一歩になります。
次の章では、実際に転倒が起こりやすい場所や状況について、詳しく見ていきましょう。
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転倒はどんな場所で起こっているの?

転倒事故の約半数が「自宅」で発生していることをご存じでしょうか。意外に思われるかもしれませんが、次に多いのが「一般道路」、そして「介護施設」と続きます。
このデータからわかるように、転倒予防の対策においては、自宅での環境整備が重要です。
まず、自宅内で転倒しやすい場所を特定し、どのような状況で転倒が発生するのかを把握することが、効果的な予防策の第一歩となります。
自宅での転倒発生場所どこ?
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自宅内で転倒が多く発生している場所は、
- 浴室・脱衣所
- 庭・駐車場
- ベッド・ふとん周り
- 玄関・勝手口
- 階段
などが挙げられます。
これらの場所では、日常的に足元が不安定になる要因が多く潜んでいます。
自宅で転倒する原因とは?

具体的な転倒原因としては、
- 滑る
- つまづく
- ぐらつく
- ベッドやふとんからの移動時
- 引っ掛かる
などが一般的です。
特に、水回りである「浴室・脱衣所」では、滑りにくい床材やマットの設置が必須です。
また、廊下やリビングでは、コードや小さな障害物を取り除きましょう。歩行時のつまづきを防ぐための効果的な対策となります。
階段はつまずいたり、ぐらつく、滑ることが予想されますので、手すりや滑り止めを施しておくと安心です。
安全な生活環境を整えるためには、こうしたリスク箇所を特定し、適切な対策を講じることが転倒予防の鍵となります。
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なぜヒトは転倒するのか?

転倒は、内的要因と外的要因の複合的な結果として発生します。
内的要因とは、加齢に伴う筋力低下やバランス感覚の衰え、視覚障害や既往症など、身体機能や健康状態に関連する要素を指します。
一方、外的要因は、床面の滑りやすさ、建物の構造、階段や段差の有無といった環境に起因する転倒リスクです。
これらの要因が重なることで、転倒のリスクは高まるため、効果的な予防には、身体機能の改善とともに、住環境の整備が不可欠です。
転倒の内的要因

転倒の内的要因としては、加齢による身体機能の低下が大きく関与します。特に、足腰の筋力低下や歩行能力の衰え、バランスの維持が難しくなること、さらに反応速度の鈍化が、転倒のリスクを高めます。
これらの変化により、日常的な動作でも転びやすくなるのです。
また、薬の副作用やめまい、パーキンソン病といった神経疾患も転倒リスクを増大させる要因です。早期の対策が転倒予防において重要な役割を果たします。
前脛骨筋の筋力低下と転倒リスク

加齢に伴う歩行機能の変化として、特に「つま先を上げる(足首の背屈)角度」が顕著に低下することが注目されます。
これは、前脛骨筋の筋力低下が主な原因であり、足首を十分に上げられなくなるため、わずかな段差でもつまづきやすくなります。
このような筋力低下は、日常の歩行における安定性を損ない、転倒リスクを大幅に増加させます。
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転倒の外的要因
転倒の外的要因には、以下のような環境要素が含まれます。まず、段差(玄関や敷居など)や、部屋の明るさの不足(暗い環境)は、視認性を低下させ、転倒リスクを高める要因となります。
さらに、床に散乱するコードや絨毯、滑りやすい床材なども、足元の不安定さを引き起こし、つまづきやすくなる原因となります。
これらの外的要因を改善することが、転倒防止に向けた重要な対策となります。では次に具体的な転倒予防対策を話します。
転倒予防対策(生活環境編)

転倒の半数は自宅で起こっています。その自宅での外的要因である「生活環境」の見直し行なってみましょう。
転倒予防対策チェックリスト
- 浴室内に手すりがあるか?
- 浴室内は滑らないように清掃をしているか?
- 浴室内、シャンプー時に目を閉じていることを想定しているか?
- 脱衣所のマットは滑らないか?(滑り止めマットがおすすめ)
- 玄関にスリッパや靴は散乱していないか?
- 玄関の段差には手すり、段差解消スロープはあるか?
- 階段に滑り止め、手すりはついているか?
- 朝、夜間に起き上がる時は動作はゆっくり行なっているか?
- 食卓などに敷いている絨毯で躓かないか?
- 通り道に電気のコードがないか?(電気製品の移動)
自宅でできる転倒予防トレーニング法(筋力トレーニング)

わずかな段差でのつまずきは、加齢による筋力低下、姿勢を保持するバランス筋力の低下が大きな要因です。つまづきを予防すれば、転倒するリスクは大幅に軽減できます。
転倒を予防するためには、筋力トレーニングで加齢による筋力低下を防ぐ必要があります。ご自宅でも安心して筋力トレーニングができるよう、自分の体重で負荷をかける「自重トレーニング法」を紹介します。
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筋力トレーニングの注意点


トゥレイズ(つま先上げ筋トレ) /初心者向け



期待できる効果
歩行中につまづきにくくなる
主に鍛える筋肉
すねの筋肉:前脛骨筋(ぜんけいこつきん)
エクササイズの方法
- 片足を半歩前に出し、背中を伸ばします
- 息を吐きながら、つま先を天井に上げます (脛に力が入ります)
- 息を吸いながら、元に戻します
- 2〜3を繰り返します
- 反対側の脚も同様に行いましょう
回数:15回
注意:動作中に姿勢が崩れないようにしましょう
カーフレイズ(踵上げ運動) /初心者向け



期待できる効果
姿勢を保持する筋力を養成し、転びにくくなる。姿勢が良くなる。
主に鍛える筋肉
ふくらはきの筋肉:下腿三頭筋(かたいさんとうきん)
エクササイズの方法
- 肩幅に足を広げて、つま先を前方へ向けます
- 息を吐きながら、踵を上げてつま先立ちになります(姿勢に保持が重要)
- 息を吸いながら、元に戻します
- 2〜3を繰り返します
回数:15回
注意:動作中に姿勢が崩れないようにしましょう
転倒予防メリーゴーランド / 初中級者向け




期待できる効果
不意の動作でも姿勢を保持できる筋力を養成し、様々なスポーツでのブレを予防する。
主に鍛える筋肉
お尻の筋肉:中臀筋(ちゅうでんきんきん) 、股関節のインナーマッスル(外旋筋)
太ももの筋肉: 大腿四頭筋(だいたいしとうきん) など
エクササイズの方法
- 両手を水平に伸ばし、片足立ちになります(背中も伸ばします)
- 自然呼吸を行いながら、ゆっくり体を回旋させます
- ゆっくりと反対側へ体を回旋させます
- 2〜3を繰り返します
- 反対側の脚も同様に行います
回数: 5往復 2セット
注意: 姿勢が崩れたらスグに中断してください。腕が先に移動しないようにしましょう
壁を持ちながら「片足スクワット」 /初中級者向け



期待できる効果
階段や歩行での踏ん張り力を養成し、転倒しにくくなる。脚力向上。
主に鍛える筋肉
お尻の筋肉:大臀筋(だいでんきん) 中臀筋(ちゅうでんきんきん) 、股関節のインナーマッスル(外旋筋)
エクササイズの方法
- 壁に片手を添えて、背中を伸ばします
- 片足立ちになり、お腹に力を入れます(反り腰予防)
- 息を吐きながら、お尻を後方へ下げていきます【つま先より膝が突き出さないようにします】
- 息を吸いながら、元の位置に戻ります
- 反対側の脚も同様に行います
回数: 10〜15回
注意: 姿勢が崩れたらスグに中断してください。
レベルアップ編: 壁から手を離し、腰に手を当てて行いましょう
着地スクワット/初中級者向け



期待できる効果
階段下り、ジョギングでの踏ん張り力を養成し、転倒しにくくなる。脚力向上。
主に鍛える筋肉
お尻の筋肉:大臀筋(だいでんきん) 中臀筋(ちゅうでんきんきん) 、股関節のインナーマッスル(外旋筋)
エクササイズの方法
- 背中を伸ばし、片足を床から浮かせます
- 浮かせた足を前方に着地させて、片足スクワットのポーズを取ります【自然呼吸】
- 元の位置に戻ります
- 同じ足で2〜3を繰り返します
- 反対側の脚も同様に行います
回数: 10〜15回
注意: 腰や膝に痛みがある場合には中断してください
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階段トレーニングもおすすめです

階段を使ったトレーニングは、転倒予防に抜群の効果を発揮します。階段を上がるときには、太ももの前に位置する大腿四頭筋やお尻の大臀筋が自然に鍛えられ、筋力アップに繋がります。
一方、階段を下る際には、体を安定させるためのバランス感覚が養われ、筋肉をゆっくり伸ばしながら負荷をかける「ブレーキ収縮(エキセントリック収縮)」が行われます。
これが筋力の成長と転倒防止に大きく貢献するのです。
この階段トレーニングの魅力は、特別な器具が不要で、日常生活に無理なく取り入れられる点にあります。自宅の階段や近所の公園の階段を使って、気軽にトレーニングをスタートできます。
また、階段の昇降は心肺機能の向上にも効果的で、健康寿命の延長にもつながるため、まさに一石二鳥です。
フォームが鍵!安全で効果的なトレーニングを
階段トレーニングは、正しいフォームで行うことがとても大切です。誤ったフォームでは膝や腰に負担をかけるリスクがあり、思わぬケガを引き起こしかねません。
正しい階段の上り下りの方法を学び、体に優しく効果的に運動を続けることで、長期的な健康効果を手に入れましょう。
さあ、今日から気軽に始められる階段トレーニングで、筋力アップと転倒予防を目指してみませんか?自宅や近所の階段を使って、まずはトライしてみてください!
今すぐ読みたい!階段上り、下りの正しいフォームを学ぶための記事
転倒予防対策と転倒予防トレーニング まとめ
いかがでしたでしょうか? 転倒予防には、加齢による筋力低下を防ぐための筋力トレーニングだけでなく、自宅の生活環境を整えることも不可欠です。
実際、転倒事故の多くは自宅内で発生しているため、転倒を引き起こす要因を排除することが最初のステップとして重要です。
転倒予防トレーニングは、脚力の強化と歩行筋力の向上に寄与し、健康寿命の延伸や要介護状態の回避に繋がります。ぜひ、この機会に運動習慣を取り入れ、健康的な生活を目指しましょう!
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参考資料・文献
※1 厚生労働省「国民生活基礎調査」令和元年
※2 厚生労働省「人口動態調査」平成26年〜令和2年
・Chris Jarmey、野村嶬(2018)「骨格筋ハンドブック(原著第3版)」 南江堂
・Donaid A. Neumann(2018)「筋骨格系のキネシオロジー(原著第3版)」 医歯薬出版株式会社
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この記事を書いた人


小林素明 (お城好きフィットネストレーナー)
テレビ番組「ちちんぷいぷい」「大阪ほんわかテレビ」「ten.」などに出演し、専門的でわかりやすい解説が好評のフィットネストレーナー。
健康運動指導士の有資格者であり、指導歴は30年以上。2010年に大阪市でパーソナルフィットネスジム「どこでもフィット」を開業し、これまでに延べ1万回以上のパーソナルトレーニングを実施。特に50代以上の「加齢に負けない体づくり」に定評がある。
医療機関と連携した安全性の高い運動指導、企業・団体向けの腰痛予防や健康経営に関する講演も数多く行い、受講者の98%から「わかりやすい」と高い評価を得ている。
趣味は城巡り、鉄道とグルメの旅、スポーツ観戦、80~90年代のプロレス、書店めぐり、そして焼肉。身体づくりも人生も、楽しみながら続けることを大切にしている。
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