専門家監修!膝の健康回復を目指す変形性膝関節症の運動プラン

大阪のフィットネス・パーソナルトレーナーの小林素明です。

ひざの痛みの原因は様々ですが、50歳以上の方に最も多いのは、ひざの関節の軟骨がすり減る「変形性膝関節症」です。これは加齢に伴う疾患の1つで、日本全国では予備軍を含めると、3000万人。50歳以上の2人に1人が変形性膝関節症と推定されています。

ひざの痛みを放置しておくと、徐々に日常生活にも支障をきたし、自力歩行が困難になり、やがて要介護になる危険性もあります。しかし、適切な運動を行えば「ひざの痛み」の予防や症状の緩和ができることが分かっています。

なぜ、変形性膝関節症が起こってしまうのか?

ひざの関節は、太ももの「大腿骨(だいたいこつ)」、すねの「脛骨(けいこつ)」、お皿と言われている「膝蓋骨(しつがいこつ)」の3つの骨によって構成されています。立っている時に体重を支えているのは、大腿骨と脛骨です。この2つの骨に直接負担がかからないように、骨の端に関節の「軟骨」が覆われています。また、ひざの衝撃の吸収をするクッションの役割として「半月板(はんげつばん)」という組織も存在します。


 
ところが、私たちのひざは加齢とともに、ひざの関節のクッションの役割をする軟骨や半月板がすり減って、ひざの関節が変形してしまうのです。そこで、ひざの痛みとして感じることになります。このように長年の時間をかけて、関節の軟骨や半月板がすり減り、骨の変形が進んだ症状が、変形性膝関節症です。

変形性膝関節症は中年女性に多いのが特徴


変形性膝関節症は、加齢が最も大きな要因ですが、特に女性の方は注意が必要です。女性の方は、男性に比べて関節を支える筋肉量が少ないため、ひざの負担が大きくなります。(女性は男性の2倍と言われています)

また、ひざが外側へ向くO脚や、肥満の方も膝に負担をかけますので注意が必要です。

進行した変形性膝関節症の症状は?

・ひざの関節の痛みやこわばり
・O脚、X脚が目立ってきた
・ひざが真っ直ぐに伸びない
・ひざの曲げ伸ばしがつらい
・階段の上り下りで、ひざが痛む など

変形性膝関節症は、関節の痛みに加えて、脚の筋力やバランス力の低下を招き、歩行能力が低下します。そのために、転倒するリスクが高くなり、運動不足になることで生活習慣病のリスクも高くなります。

また、上記の項目にある症状を感じた場合には、医療機関での診断をされることをお勧めします。変形性膝関節症の進行度(病期分類)には個人差があります。医療機関で受診されて、医師からの指示のもと運動を始めるようにしてください。

コラム/膝の関節と歩行で使われる筋肉


歩行において、膝の関節は0〜60°の角度(屈曲)の範囲で動いています。その歩行において、膝の関節に付いている筋肉によって膝の安定性が保たれ、膝の関節を保護します。その膝の関節に付いている代表的な筋肉は、大腿四頭筋ハムストリングス下腿三頭筋。これらの筋肉が弱くなったり、硬くなると歩行において膝の関節に負担がかかります。

膝の状態を良くするための歩き方

岡山大学の研究によると、「1秒に一歩」のゆっくり歩きは適度なストレスとなり、軟骨の成分であるコラーゲンが作り出されることが分かった。

ただし、

・膝に痛みを感じない範囲で

・つま先と膝の向きを合わせる

・足をそっと地面に着地するイメージ

で行いましょう。

歩行時における大腿四頭筋の役割


膝の関節において重要な役割を果たしているのが、大腿四頭筋です。主には足の着地の際、地面からの衝撃を受け止める役割をしています。もし、大腿四頭筋が十分な働きができないと、着地の際に上体を前に傾けながら歩く、又は足を棒(膝がロック)のようにして歩くという歩行の変化が現れます。

変形性膝関節症を予防する運動療法


医療機関で変形性膝関節症と診断された場合には、医師の指示のもとで適切な治療が行われます。医療機関でもリハビリの一環として、運動療法が行われています。これは、ひざの関節の負担を軽減するために、ひざの周りの「筋力の強化」や「関節を柔軟」にします。具体的には、筋力トレーニングやストレッチ、自転車漕ぎ、水中運動などです。では、自宅でもできる!ひざの痛み予防運動を紹介します。

自宅でできる!変形性膝関節症を予防する運動法

では、年齢も関係なく、どこでも好きな時にできる変形性膝関節症を予防する運動法を紹介します。ポイントになるのは、ひざの関節だけでなく、体重を支えている股関節の運動も行っておくことです。

 
【ご注意】ひざの腫れ、ひざに熱がある、運動に不安、体調が悪い場合は運動を一旦中断するか、医師にご相談ください。 運動中の注意:痛みを感じる場合は運動を中断してください

変形性膝関節症の予防運動の動画

こちらの動画を見ながら無理のない範囲で運動を行うことをお勧めします。

1 ひざ伸ばし、足上げエクササイズ(大腿四頭筋の強化)



鍛える筋肉: 大腿四頭筋
運動方法:

  1. 仰向けになり、片足を曲げておきます
  2. 伸ばした足を床から10センチ程上げ、5秒間静止します
  3. この時、太ももの前面(大腿四頭筋)に力が入ります
  4. ゆっくりと足を戻します(バタンと降ろさないように)
  5. 10〜15回繰り返します
  6. 反対側の足も同様に行います

※上げている足の足首は直角にしておきます

2 足の横上げエクササイズ( 中臀筋の強化)



鍛える筋肉: 中臀筋
運動方法:

  1. 横向きになり、下になった足は曲げておきます
  2. 上になった足を床から15センチ程上げ、5秒間静止します
  3. この時、お尻の横(中臀筋)に力が入ります
  4. ゆっくりと足を戻します(バタンと降ろさないように)
  5. 10〜15回繰り返します
  6. 反対側の足も同様に行います

3 足の後ろ上げエクササイズ(大臀筋の強化)


鍛える筋肉: 大臀筋
運動方法:

  1. うつ伏せになり、あごの下に手を置きます
  2. 右足を床から10センチ程上げ、5秒間静止します
  3. この時、お尻(大臀筋)に力が入ります
  4. ゆっくりと足を戻します(バタンと降ろさないようにします)
  5. 10〜15回繰り返します
  6. 左足も同様に行います

4 ボール押しエクササイズ(内転筋の強化)


鍛える筋肉: 内転筋
運動方法:

  1. ミニボールを膝に当てます
  2. 両膝でミニボールを軽く押します
  3. この時、太ももの内側(内転筋)に力が入ります
  4. ゆっくりと足を戻します
  5. 10〜15回繰り返します

 
参考)変形性膝関節症の予防エクササイズにお勧めのミニボール

5 テーブルでスクワット運動(足腰の強化)



鍛える筋肉: 大臀筋大腿四頭筋ハムストリングス
運動方法:

  1. 椅子に腰掛け、テーブルに手を当てます
  2. 手で軽くテーブルを押し、立ち上がります
  3. ゆっくりと椅子に腰掛けます(ドスンと座ると腰を痛めます)
  4. 2〜3を15回繰り返します

6 ひざの疲労回復!太もも前面ストレッチ



伸ばす筋肉: 大腿四頭筋
運動方法:

  1. うつ伏せになります
  2. 右足を曲げて、足首もしくは足の甲を持ちます。(手が届きにくい場合は、タオルを足首にかけて、タオルを持ちます)
  3. 痛みのない範囲で、かかとをお尻に近づけます
  4. 太ももの前面(大腿四頭筋)が伸びます
  5. 自然呼吸で30秒間静止します。
  6. 左足も同様に行います

余裕があれば2セット行ってください

紹介したエクササイズの方法は動画で学ぶことができます。ぜひご覧くださいね!

【動画】自宅でできる変形性膝関節症を予防するエクササイズ

こちらの動画を見ながら無理のない範囲で運動を行うことをお勧めします。

ひざの痛み、変形性膝関節症の予防運動のまとめ

いかがでしたでしょうか? 変形性膝関節症は長年のひざの負担によって、徐々に症状が進行して行くもので気がつきにくい症状の1つです。そのため、年齢に関係なく早めの予防対策が必須となっています。

現在では、ロコモティブシンドロームが問題となっていて、運動器(骨、筋肉、関節など)の働きの衰えによって、自立歩行が困難になり、介護が必要になってしまう危険性が高まり、国民病の1つとして挙げられています。ひざの痛みは決して対岸の火事ではなく、どなたでも気をつけておかなければならないのですね。

 
特に足腰の筋肉である大臀筋中臀筋大腿四頭筋ハムストリングスを鍛えるトレーニングは欠かすことができません。明るい生活習慣を送るためにも、無理のない範囲で、ひざの関節を強化したり、疲労回復に務めることをお勧めします。

参考文献

1)オーチスのキネオロジー 身体運動の力学と病態力学(ラウンドフラット)
2)運動療法大全 第6版 II 実践編 (ガイアブックス)
3)からだの発達と加齢の科学(大修館書店)
4)理学療法のための筋力トレーニングと運動学習(羊土社)
5)スポーツでのばす健康寿命(東京大学出版会)
6)アンチエイジングフィットネス 40歳からはじめる加齢に負けないからだづくり(ラウンドフラット)
7)サルコペニアを知る・測る・学ぶ・克服する(NAP)
8)加齢とトレーニング(朝倉書店)

この記事を書いた人

大阪のパーソナルトレーナー小林素明
天空の城・竹田城(兵庫県)にて

小林素明 (城好きパーソナルトレーナー)

テレビ番組「ちちんぷいぷい」「大阪ほんわかテレビ」「ten」などに多数出演し、メディアからも注目されるパーソナルトレーナー。30年以上の指導経験と健康運動指導士の資格を有し、1万レッスンを超えるパーソナルトレーニング指導の実績。特に40代からシニア世代向けの「加齢に負けない」トレーニングに定評があり、親切で丁寧な指導が評価されている。

医療機関との連携を通じて、安全で効果的なトレーニング法を研究し、病院や企業での腰痛予防に関する講演では受講者の98%から「分かりやすかった」と高評価を得る。また、パーソナルトレーナー養成講座の講師としても豊富な実績を誇り、多くのトレーナーの育成に貢献しています。

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