股関節の構造と機能を知ろう!正しい運動のために必要な基礎知識とは?
大阪のパーソナルトレーナー、小林素明です。
股関節は、太ももの骨(大腿骨)の先端にある球状の部分と、骨盤の下部にあるソケット(寛骨臼)で構成される非常に重要な関節です。この関節は、体重を支えながらも大きな動きを可能にし、歩行やランニング、階段の上り下り、さらにはスポーツ動作において、中心的な役割を果たしています。
たとえば、歩く際には股関節に体重の3〜4倍、ジョギングでは4〜5倍、階段を上る際には7倍もの負荷がかかっています。この負荷に耐えられるのは、強靭な筋肉や靭帯を含む股関節の優れた構造のおかげです。
では、そんな股関節にはどんな特徴があるのでしょうか? どのような場面で股関節の筋肉が働くのか、そして効果的なトレーニング方法について、これから詳しくお話しします。
股関節は球関節
股関節は「球関節」と呼ばれ、その最大の特徴は、膝や足首と比べて可動域が非常に広く、自由度が高いことです。
股関節の広い動きのおかげで、私たちは自由に脚を前後左右、さらには回す(回旋)ことができます。この柔軟性が、日常の動作からスポーツまで、幅広い動きを可能にしています。
さらに、股関節は非常に強力な靭帯、特に腸骨大腿靭帯や恥骨大腿靭帯によってしっかりと固定されています。これに加え、複数の筋肉が股関節を支え、安定性を保つ役割を果たしています。そのため、股関節は体の中で最も脱臼しにくい関節として知られており、歩行やランニング、階段の上り降りといった負荷のかかる動作でも、確実に体を支えることができます。
股関節の代表的な靱帯:腸骨大腿靱帯、恥骨大腿靱帯、坐骨大腿靱帯
この強固な構造は、姿勢を安定させ、スムーズな動作が可能にしています。股関節の健康を保つことは、年齢を重ねても快適な日常生活を送るために非常に重要です。適切なストレッチや筋トレを取り入れることで、この大切な関節を守り、動きをより快適にすることができます。
あわせて読みたい関連記事
肩関節も球関節
肩関節も股関節と同様に「球関節」に分類されますが、両者には大きな違いがあります。肩関節は、非常に自由な動きを可能にする反面、その構造上、股関節に比べて不安定な特徴を持っています。これは、肩関節の接触面が浅く、骨同士のはまり込みが弱いためです。
この浅い接触部分のおかげで、腕を360度自由に動かすことができる一方で、脱臼しやすいリスクがあります。股関節は靭帯や筋肉によってしっかり固定されているため、脱臼しにくいのに対して、肩関節はより広い可動域を確保するために、安定性をある程度犠牲にしているのです。
そのため、肩の柔軟さを保ちながらも、筋肉を強化することが、脱臼やケガのリスクを軽減し、健康な肩の維持に重要となります。
股関節の動きの仕組み
股関節の運動は、股関節の屈曲、伸展、内転、外転、内旋、外旋の6つです。その股関節の運動で使われている股関節周りの筋肉も合わせて紹介します。
股関節の屈曲
股関節の「屈曲」とは、太ももを前に引き上げる動作を指します。この動きは、階段を上る、歩く、走るなど、私たちの日常生活で頻繁に使われる基本的な動作のひとつです。特に高齢者や運動不足の方は、この股関節の屈曲力が弱くなると、脚が十分に上がらず、つまずきやすくなってしまいます。
股関節の屈曲力が低下すると、歩行が不安定になり、最終的には転倒のリスクが高まる可能性があります。転倒はケガの原因となるだけでなく、特に高齢者にとっては大きな健康問題に発展することもあります。
あわせて読みたい関連記事
股関節の屈曲で使われている筋肉
股関節の屈曲で主に使われている筋肉は、太もも付け根の腸腰筋、太ももの大腿直筋(大腿四頭筋)です。
股関節の伸展
股関節の「伸展」とは、脚を後方へ蹴り出す動作を指します。これは、階段を上るときや走るとき、さらには椅子から立ち上がる際にも使われる非常に重要な動きです。
しかし、股関節の伸展が弱くなると、歩行や立ち上がり動作に支障が生じます。具体的には、歩いているときに体が後方に傾きやすく、バランスを崩しやすくなることがあります。これにより、歩行が不安定になり、以前よりしんどく感じることが多くなります。また、転倒やケガのリスクが高まる可能性があります。
股関節の伸展を強化することは、歩行が楽になり、活動的な生活をサポートすることができます。
股関節の伸展で主に使われている筋肉
股関節の伸展動作で主に使われている筋肉は、大臀筋、ハムストリングスです。
あわせて読みたい関連記事
股関節の内転
股関節の「内転」とは、太ももを内側に寄せる動作を指します。日常の動作ではあまり意識されないかもしれませんが、この動きは姿勢を安定させるために非常に重要です。股関節の内転は、特に体のバランスを保ち、横方向への動きをサポートする役割を果たしています。
イメージとしては、建物の構造を補強する「筋交い(すじかい)」のような働きをしていると言えます。股関節の内転筋がしっかり機能していることで、立っているときや歩いているときに体が安定し、左右にブレることなくスムーズに動くことができるのです。
しかし、内転筋が弱くなると、歩行や立ち姿勢が不安定になり、足を引きずったり、体が左右に揺れやすくなってしまうことがあります
筋交とは
股関節の内転で主に使われる筋肉
股関節の内転では主に、内転筋の恥骨筋、長内転筋、短内転筋、大内転筋、薄筋が使われています。
股関節の外転
股関節の「外転」とは、太ももを外側に開く動作を指します。この動きは、片足で立ったときに骨盤を安定させ、体が横に倒れないようにする重要な役割を果たしています。普段の生活で意識しにくいかもしれませんが、階段の昇り降りやバランスを取る場面、さらには横方向への移動でも股関節の外転がしっかりと働いています。
たとえば、片足立ちになったとき、股関節の外転が機能していないと、骨盤が傾き、体全体のバランスが崩れてしまいます。また、スポーツや日常生活の中で横に移動する際も、この外転の動きが欠かせません。股関節の外転筋が強いと、スムーズに移動しやすく、姿勢を維持しやすくなります。
一方で、外転筋が弱くなると、歩行時や立ち姿勢で体が不安定になり、バランスを崩しやすくなります。パーソナルトレーニングでの指導で感じることは、この外転筋が弱い人が多いことです。過去にアメリカンフットボール(Xリーグ)の選手、ラクビー選手なども外転筋が弱い選手が多かったです。鍛えていても、見逃しやすい筋肉の1つです。
股関節の外転で主に使われる筋肉
股関節の外転では主に中臀筋、小臀筋、大腿筋膜張筋が働いています。
参考)股関節の外転筋の中臀筋強化で起こりやすい3つの罠とは?
股関節の外旋
股関節の「外旋」とは、足を伸ばした状態でつま先を外側に向ける動作や、股関節を曲げた状態で下腿部を回旋させる動きを指します。この外旋の動きは、日常生活や運動の中で意外と多く使われています。たとえば、片足でしゃがむ際に股関節を安定させたり、方向転換をするときに体を支えながらスムーズに動くために重要な役割を果たしています。
特に、足を固定して体を反対方向にひねるような動作では、股関節の外旋筋がしっかりと働くことで、体を安定させながらスムーズな方向転換を可能にします。スポーツや日常のちょっとした動きでも、股関節の外旋が活躍しているのです。
しかし、外旋筋が弱いと、体の安定性が損なわれ、しゃがむ動作や方向転換時に不安定になりやすくなります。特に片足でバランスを取る動作や、急な方向転換が必要な場面では、ケガのリスクも高まる可能性があります。
股関節の外旋で使われる筋肉
股関節の内旋では主に梨状筋、外閉鎖筋、内閉鎖筋、上双子筋、下双子筋、大腿方形筋の外旋六筋が働いています。
股関節の内旋
股関節の「内旋」とは、足を伸ばした状態でつま先を内側に向ける動作や、股関節を曲げた状態で下腿部を内側に回旋させる動きを指します。この動きは普段意識することが少ないかもしれませんが、実は股関節の安定性を保つために非常に重要な役割を果たしています。
股関節の内旋がしっかり機能していることで、歩行や立ち姿勢のバランスが保たれ、体全体の安定感が向上します。たとえば、急な方向転換をする際や、足を引きずらずにスムーズに歩くためには、内旋筋が正常に働くことが欠かせません。
もし股関節の内旋が弱まると、歩行が不安定になりやすく、足元がぐらついたり、姿勢が崩れやすくなります。特に片足でバランスを取る場面や、狭い場所を歩くときなどには、股関節の内旋力が不足していると転倒のリスクも高まります。
股関節の内旋運動では、特定の主動筋はなく補助筋となります。中臀筋、小臀筋、大腿筋膜張筋、長内転筋、短内転筋など。
プロ推薦!股関節をしっかり鍛える筋力トレーニング
自宅で無理なくできるエクササイズを取り入れることで、股関節の柔軟性と安定性を強化し、日常生活での動作や姿勢がスムーズになります。股関節をしっかり鍛えることで、歩行や立ち座りなどの基本的な動作が安定し、正しい姿勢を保ちやすくなります。継続的なトレーニングを行うことで、バランス力が向上し、転倒やケガのリスクを軽減し、より快適で安全な生活をサポートする効果が期待できるでしょう。
エクササイズで重要なのはフォームです!
股関節を強化!自宅でできる筋トレ法
1 サイドランジ&体幹ツイスト
主に鍛える筋肉
お尻の筋肉:大臀筋(だいでんきん) 中臀筋(ちゅうでんきんきん) 、股関節のインナーマッスル(外旋筋)
太ももの筋肉: 大腿四頭筋(だいたいしとうきん) など
体幹の筋肉: 腹斜筋
エクササイズの方法
- 背中を伸ばし立ちます
- 横に足を移動し、踏ん張ります(下の写真)
- 体幹を捻ります。
- 元の位置に戻ります
- 動作を繰り返します
- 反対側の足も同様に行います
回数:左右各10回
注意:膝とつま先の方法を一致させましょう
2 片足スクワット
主に鍛える筋肉
お尻の筋肉:大臀筋(だいでんきん) 中臀筋(ちゅうでんきんきん) 、股関節のインナーマッスル(外旋筋)
太ももの筋肉: 大腿四頭筋(だいたいしとうきん)、ハムストリングス など
エクササイズの方法
- 壁に片手を添えて、背中を伸ばします
- 片足立ちになり、お腹に力を入れます(反り腰予防)
- 息を吐きながら、お尻を後方へ下げていきます【つま先より膝が突き出さないようにします】
- 息を吸いながら、元の位置に戻ります
- 反対側の脚も同様に行います。慣れてきたら壁を持たずに行いましょう
回数: 10〜15回
注意: 姿勢が崩れたらスグに中断してください。
ニーアップ(腿上げトレーニング)
主に鍛える筋肉
手動筋: 腸腰筋、大腿直筋(大腿四頭筋)
支持足の固定: 中臀筋
運動の方法
- 両手を腰に当てて、まっすぐに立ちます
- 息を吐きながら、右足の太ももを上げます(腿上げ)
- 息を吸いながら、元の位置に戻ります
- 息を吐きながら、左足の太ももを上げます(腿上げ)
- 息を吸いながら、元の位置に戻ります
- 左右交互にそれぞれ10回行います
プロ推薦!股関節をしっかり伸ばすストレッチ体操
股関節を柔軟し、動きやすい体づくり、腰痛や膝痛も予防できるストレッチ体操を厳選して紹介します。
腸腰筋ストレッチ
主に伸びる筋肉(柔軟)
腰の筋肉: 腸腰筋
エクササイズの方法
- 足を前後に開きます
- 両手をお尻に当て、お尻を前方へ押すようなイメージで体を移動します
- 後足の太ももの付け根(腸腰筋)が伸びます
- 前足はお尻の大臀筋が伸びます
- 自然呼吸で30秒間静止します
- 脚を入れ替えて、反対側も同様に行います
相撲ストレッチ(イチローストレッチ)
主に伸びる筋肉(柔軟)
太ももの筋肉: 内転筋
エクササイズの方法
- 足を左右に大きく開きます
- 両手を膝の内側に添えます
- 体を捻り、斜め後ろを見ます(肩入れ)
- 自然呼吸で30秒間静止します
- 反対側も同様に行います
梨状筋ストレッチスーパー
主に伸びる筋肉(柔軟)
お尻の筋肉: 梨状筋、中臀筋
エクササイズの方法
- 椅子に座り、片足を太ももの上に添えます
- 背中を伸ばし、両手も前方へ伸ばします(写真上)
- 背中を伸ばしながら、可能な限り両手を遠くに移動させます(写真下)
- 自然呼吸で30秒間静止します
- 反対側も同様に行います
股関節の運動 まとめ
股関節は、階段の上り降りや歩行、さらには走るといった日常の動作で、私たちの体を支える重要な役割を果たしています。特に階段を上る際には、片足の股関節に体重の約7倍もの負荷がかかっており、この大きな負担を吸収しているのが股関節周りの筋肉です。しかし、股関節にトラブルが発生すると、この負担を支えきれなくなり、日常生活に大きな支障をきたすことになります。
股関節は、移動動作の中心にある関節であり、その健康状態が私たちの動作や姿勢に直接影響します。股関節の周囲を支える筋肉を強化する筋トレや、柔軟性を高めるストレッチを習慣化することで、股関節を健やかに保ち、快適な日常生活を送ることができるでしょう。特に初心者でも取り組みやすい運動から始めることで、股関節の安定性を高め、姿勢の改善やケガの予防につながります。
股関節を大切にケアし、定期的なトレーニングを続けることで、よりアクティブで充実した日常生活を楽しみましょう。
あわせて読みたい関連記事
フィットネスの始め方を知りたい!実際にフィットネスを始めたい方へ
当メディアでは、初心者でも簡単に始められるフィットネス法を、分かりやすく丁寧に紹介しています。
運動指導歴30年以上、テレビ出演も多数の実績、健康運動指導士の資格を持つパーソナルトレーナー・小林素明が、確かな信頼性をもとに情報をお届けしますこれからフィットネスを始めたい方は、ぜひこちらの健康と運動ガイドをご覧ください!
また、本格的にフィットネスを始めたいとお考えの方は、40代からシニア世代の方に特化したパーソナルトレーニングどこでもフィットもご検討くださいませ。
参考文献
- Chris Jarmey、野村嶬(2018)「骨格筋ハンドブック(原著第3版)」 南江堂
- Donaid A. Neumann(2018)「筋骨格系のキネシオロジー(原著第3版)」 医歯薬出版株式会社
- 松平浩、松下克志(2013)「英国医師会 腰痛・頚部痛ガイド 」医道の日本社
- 林典雄(2018)「運動器疾患の機能解剖学に基づく評価と解釈」運動と医学の出版社
- Arnold G.Nelson , Jouko Kokkonen , 西端泉(2009)「ストレッチングアナトミー」株式会社医学映像教育センター
- A.I.Kapandji、塩田悦仁(2019)「カパンジー機能解剖学 下肢 原著第7版」医歯薬出版
この記事を書いた人
小林素明 (城好きパーソナルトレーナー)
テレビ番組「ちちんぷいぷい」「大阪ほんわかテレビ」「ten」などに多数出演し、メディアからも注目されるパーソナルトレーナー。30年以上の指導経験と健康運動指導士の資格を有し、1万レッスンを超えるパーソナルトレーニング指導の実績。特に40代からシニア世代向けの「加齢に負けない」トレーニングに定評があり、親切で丁寧な指導が評価されている。
医療機関との連携を通じて、安全で効果的なトレーニング法を研究し、病院や企業での腰痛予防に関する講演では受講者の98%から「分かりやすかった」と高評価を得る。また、パーソナルトレーナー養成講座の講師としても豊富な実績を誇り、多くのトレーナーの育成に貢献しています。