背中が丸くなる原因は「胸」にあり? 姿勢改善に効くストレッチと対策法
フィットネストレーナーの小林素明です。
「最近、背中が丸くなってきたかも…」
「姿勢のこと、家族に言われて気になっています」
こんなお声をよくいただきます。
たしかに、年を重ねると姿勢が変わりやすくなります。とくに、背中が丸くなるのはよくある変化のひとつです。
しかしながら、何もせずにそのままにしていると、ますます背中は丸くなるばかりです。
そこで大事になるのが、「胸」です。
背すじを伸ばそうとすると、つい背中ばかり意識しがちですが、実は胸の動きが関係しています。
この記事では、胸まわりのしくみを分かりやすく解説し、自宅でできるかんたんなストレッチ法を紹介します。
胸を伸ばすことで、背すじも伸びるだけでなく、スムーズな呼吸も、肩こりもラクになりますよ。一緒に始めてみませんか?
こんな方におすすめです
- 姿勢が崩れてきたと感じている方
- 背中の丸まりが気になっている方
- スマホやパソコン作業が多く、前かがみの姿勢が続きやすい方
- 肩まわりが硬くなっていると感じる方
- 運動に慣れていないけれど、何か始めてみたい方
では、なぜ背中が丸くなってしまうのか? その原因から話していきます。
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背中が丸くなる原因は?
背中が丸くなるのには、人間の背骨の構造によるもの、筋力の低下や加齢によるものなど、いくつかの理由があります。中でも、胸の背骨(胸椎)まわりの動きが小さくなることが大きな原因となります。
1 加齢により胸の背骨(胸椎)のカーブが大きくなる

人間の背骨は自然なS字カーブを持っており、胸の背骨(胸椎)はもともと後ろにカーブしています。後ろにカーブすることを後弯(こうわん)と呼びます。
胸椎=胸の高さにある12個の背骨、胸椎の後弯の角度は40度と言われています。
この胸椎の後弯がもともと存在するため、背中が丸くなりやすい土台があると言えます。
胸椎の後弯は自然なものですが、年齢とともに、背骨の間にあるクッション「椎間板(ついかんばん)」が弱くなり圧迫され、少しずつ後弯の角度が大きくなってしまうことがあります。
参考)胸椎は成人以降、10年ごとに約3度ずつ後弯が進むと言われている。
2 胸椎はもともと大きくは動かない場所

胸椎は動ける範囲が小さいことがあります。
- 前にかがむ(屈曲):30〜40度
- 胸を張る (伸展):15〜20度
正常に動く人でも、背中を反らす動作はやりずらく(15〜20度なので)、猫背のまま固まりやすい傾向があります。
加齢に関係なく、運動不足や長時間の前かがみ姿勢が続くと、胸椎の動きが悪くなり、背中が丸い姿勢が固定されやすくなります。
3 筋肉の影響

筋肉が硬くなる、弱ることで背中は丸くなりやすくなります。
胸の前側にある筋肉(大胸筋や小胸筋)が硬くなると、体を開く動きがしづらくなり、肩が前に出て、背中も丸まりやすくなります。背中全体が「前に引っ張られる」ような姿勢です。


また、背中を支える「脊柱起立筋(左)」、「僧帽筋 下部線維(右)」などの筋力が低下すると、姿勢を保持する力が弱まり、背中が丸まりやすくなります。
50代から筋力低下が著しくなりますので、注意が必要です。では次に背中が丸くなる姿勢は、どんな姿勢なのかを話します。
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姿勢が悪くなると、なぜ呼吸がしにくくなるの?

よい姿勢には、ちゃんとした理由があります。
それは、体が本来の働きをしやすくなるからです。
たとえば、今回のテーマである「背中が丸くなるような、前かがみの姿勢」は、呼吸に関わる筋肉である「横隔膜」がうまく動きにくくなります。
横隔膜は、胸とお腹を分ける位置にあるドーム状の筋肉です。正しい位置にあることで、息を吸ったり吐いたりがスムーズに行えます。
ところが、前かがみの姿勢では、この横隔膜が下へ押し下げられたり、圧迫を受けたりして、本来の動きが制限されてしまいます。
その結果、呼吸が浅くなったり、胸が十分に広がらず、息がしにくくなるのです。
つまり、姿勢を整えることは、見た目だけでなく、呼吸のしやすさにも関わってくるというわけです。
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背中が丸くなる姿勢って?
背中が丸くなっている姿勢とは、胸の背骨(胸椎)が本来よりも強く後ろにカーブしている状態です。この姿勢は自分では気づきにくいのですが、簡単な方法でチェックできます。
おすすめなのが、「壁立ちチェック」です。やり方はとてもシンプル。
壁立ち姿勢チェック

やり方: 壁に向かって、次の4つのポイントが壁につくように立ってみてください。
- かかと
- おしり
- 肩甲骨(背中の真ん中あたり)
- 後頭部(うしろ頭)
評価の方法
頭だけが壁から大きく離れてしまう場合は、胸椎のカーブ(後弯)が強くなっていて、背中が丸くなっている可能性があります。
また、頭を無理に壁につけようとすると、首や背中にツラさを感じることもあります。これは、胸まわりが硬くなっており、自然に背すじを伸ばすのが難しくなっているサインです。
反対に、4点すべてが違和感なくピタッと壁につくようであれば、姿勢は安定していて、背すじもまっすぐに近い状態です。
ご自宅の壁や鏡の前で、ぜひ一度試してみましょう。ちょっとした変化に気づけるだけでも、姿勢を見直すきっかけになりますよ。
次に姿勢改善の対策法を紹介します。
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背中が丸い姿勢にはどんな対策が有効なの?

まず知っておきたいのは、背骨そのものを大きく変えることは、なかなか難しいということです。背骨の間にあるクッションのような部分(椎間板)や、骨の形自体を直接よくするのは簡単ではありません。
そこで重要になるのが、筋肉のケアと強化です。
先ほどご紹介したように、背中が丸くなりやすい方は、胸の筋肉がかたくなっていたり、背中の筋肉が弱くなっていることがよくあります。
こうした筋肉のバランスを整えることで、姿勢改善には有効です。
具体的には、
- 硬くなった胸の筋肉を伸ばすストレッチ
- 背中の筋肉を強化するトレーニング
このエクササイズ法が、姿勢改善の基本となります。どちらも、自宅でできる方法をこのあとご紹介します。
さらに、毎日の過ごし方にも一工夫が必要です。

たとえば、スマートフォンやパソコンの作業。前かがみの姿勢が長く続くと、背中が丸い姿勢が習慣化されやすくなります。
イスの座り方を変えてみたり、こまめに体を動かしたり。こうしたちょっとした習慣の見直しも、背すじを整えるうえでは大切なポイントです。
では次に、すぐに始められるストレッチとトレーニングを紹介します。たくさん紹介していますが、これならできる!と思うストレッチを1つずつやってみましょう。
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胸ストレッチ(1) 背すじストレッチ


間違った方法

ストレッチのやり方
- 片手を高く天井へ伸ばし、反対の手で手首を持ちます。
- 肩、背中の筋肉が伸びます。
- 真横へ腕を伸ばします。(さらに肩と背中が伸びます)
- 自然呼吸で20〜30秒間静止します。
- 反対側も同様に行います。
注意点
背中が丸くならないようにします
胸ストレッチ(2) 猫ストレッチ



やり方
- 膝を床につけて、両手を前方へ伸ばします。
- 膝とお尻の位置を固定し、胸を床に近づけます。(効果的に胸が伸びます)
- 余裕があれば、指先を立ててみてください。(下の写真)
- 息を止めず、自然な呼吸を続けながら20~30秒キープします。
注意点:
背中が丸くなったり、お尻の位置を動かさないようにします。
慣れてきた人向け 指立て猫ストレッチ

猫ストレッチのポーズを取った後、指先を立ててストレッチを行います。
ただし、指が痛くなる場合は中断してください。
胸ストレッチ(3) 背泳ストレッチ


やり方
- 椅子に浅く腰かけ、ひざとひざの間にミニボールを軽くはさみます。 ※ミニボールがなければ、座布団など柔らかいものでも代用できます。
- 背すじを伸ばし、両手をまっすぐ前に伸ばします。
- 片方の腕を、天井をなぞるように後ろ側へゆっくり回します。(目線は動かしている手の指先を追いかけましょう。)
- 腕を元の位置に戻したら、反対側も同じように行います。
- 左右交互に、合計10回ずつ行ってください。
注意点:
- 背中が丸くならないようにします
- 背中や肩に痛みがある場合は、無理のない範囲で行ってください。
- ゆっくりとした動きが、より効果を高めます。
姿勢改善エクササイズ(1) ハンドニー

鍛える筋肉
やり方
- 床に手とひざをつき、四つん這いになります。 ※背中はできるだけまっすぐに保ちましょう。
- 右足と左手を、床と平行になるようにゆっくり持ち上げます。
- その姿勢のまま、5秒間キープします。 ※腰が反ったり、ぐらついたりしないように注意しましょう。
- ゆっくりと元の姿勢に戻し、反対側(左足と右手)も同じように行います。
- 左右交互に、合計10回繰り返します。
注意点:
- できる範囲で無理なく行いましょう。
- フローリングの上ではヨガマットやタオルを敷くと、ひざへの負担がやわらぎます。
立って行うバージョンもあります。

下半身の筋肉も同時に鍛えられます。
姿勢改善エクササイズ(2) T字背筋トレーニング



鍛える筋肉
やり方
- 足を肩幅に開いて立ち、背すじをスッと伸ばします。
- ひざを軽く曲げて、上半身を少し前に倒します。背中が丸くならないように注意しましょう。
- そのままの姿勢で、両手を真横に広げ、Tの字を作ります。
- 腕の高さをキープしながら、両手をゆっくりと上下に動かします。 ※小さな動きでかまいません。肩甲骨を意識すると効果的です。
回数: 15〜20回
注意点
- 呼吸は止めず、自然に続けながら行いましょう。
- 背中や腰に違和感がある場合は、無理をせず休憩してください。
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まとめ
いかがでしたでしょうか?
背中が丸くなる原因には、いくつかの要素がありました。中でも見逃せないのが、胸まわりの筋肉が硬くなることです。
今回ご紹介した胸のストレッチを取り入れることで、背すじが自然に伸びやすくなります。
また、日頃からスマホやパソコンの使い方にも少し気を配ると、姿勢のくずれを防ぎやすくなります。
姿勢を整えることは、見た目の印象を良くするだけでなく、呼吸のしやすさや肩・腰の不調予防にもつながります。
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参考文献
- Donaid A. Neumann(2018)「筋骨格系のキネシオロジー(原著第3版)」 医歯薬出版株式会社
- Shirley A.Sahrmann、竹井仁、鈴木勝(2005)「運動機能障害症候群のマネジメント理学療法評価・MSIアプローチ・ADL指導」医歯薬出版
- 建内宏重(2020)「股関節~協調と分散から捉える」 株式会社ヒューマン・プレス
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この記事を書いた人


小林素明 (お城好きフィットネストレーナー)
テレビ番組「ちちんぷいぷい」「大阪ほんわかテレビ」「ten.」などに出演し、専門的でわかりやすい解説が好評のフィットネストレーナー。
健康運動指導士の有資格者であり、指導歴は30年以上。2010年に大阪市でパーソナルフィットネスジム「どこでもフィット」を開業し、これまでに延べ1万回以上のパーソナルトレーニングを実施。特に50代以上の「加齢に負けない体づくり」に定評がある。
医療機関と連携した安全性の高い運動指導、企業・団体向けの腰痛予防や健康経営に関する講演も数多く行い、受講者の98%から「わかりやすい」と高い評価を得ている。
趣味は城巡り、鉄道とグルメの旅、スポーツ観戦、80~90年代のプロレス、書店めぐり、そして焼肉。身体づくりも人生も、楽しみながら続けることを大切にしている。
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