内転筋(長内転筋、短内転筋、大内転筋、恥骨筋、薄筋)の解剖学から筋トレ、ストレッチ法までの基礎知識
内転筋とは、太ももの内側にある筋肉で「大内転筋」「長内転筋」「短内転筋」「恥骨筋」「薄筋」の総称。この内転筋は、骨盤の坐骨、恥骨に付着(起始)していて、骨盤の歪み、慢性的な姿勢不良、腰痛や膝痛、スポーツのパフォーマンスにも影響する重要な筋肉です。
意外にも、椅子から立ち上がるとき、座った後の歩く出しで腰が痛くなる場合、内転筋が硬くなっている場合がよくあります。
では、内転筋群は、どんな形をした筋肉で、どんな働きをしているのか?どのようにして鍛えれば良いのか?を話します。
内転筋は例えるなら「筋交い」水平方向の揺れに強い
内転筋は骨盤から大腿骨にかけて斜めに付着している筋肉です。それはまるで建物の構造を補強するための「筋交い(すじかい)」の役割。
筋交いは、家をはじめ多くの建造物になくてはならない部材で、水平方向への強度を高めることで知られています。つまり、内転筋は体を安定させ、姿勢を真っ直ぐに保つために必要不可欠な筋肉です。
内転筋群とは? 筋肉のしくみ(解剖、起始停止、動き)
内転筋群とは、「長内転筋」「短内転筋」「大内転筋」「恥骨筋」「薄筋」の総称。
長内転筋、短内転筋
筋肉の起始: 恥骨
筋肉の停止: 大腿骨粗線
神経支配: 閉鎖神経(L2〜4)
主な筋肉の働き(作用): 股関節の内転、股関節の屈曲
大内転筋
筋肉の起始: 恥骨、坐骨
筋肉の停止: 大腿骨粗線
神経支配: 閉鎖神経(L2〜4)、坐骨神経
主な筋肉の働き(作用): 股関節の内転、股関節の伸展
恥骨筋
筋肉の起始: 恥骨
筋肉の停止: 大腿骨骨幹近位後面
神経支配: 大腿神経(L2,3)
主な筋肉の働き(作用): 股関節の内転、股関節の屈曲
薄筋
筋肉の起始: 恥骨
筋肉の停止: 脛骨近位内側面の鵞足
神経支配: 閉鎖神経(L2、3)
主な筋肉の働き(作用): 股関節の内転、股関節の屈曲、膝関節の屈曲・内旋
関連ワード: 鵞足炎
内転筋群(長内転筋、短内転筋、大内転筋、恥骨筋、薄筋)の作用とは?
内転筋群は、主に股関節の内転、屈曲、伸展。薄筋は膝関節の屈曲・内旋と複数の作用を行う筋肉です。
内転筋のことがよく分かるYouTube動画を用意しました
内転筋群が弱くなるとどうなるの?
- ガニ股(O脚)になりやすい
- 脚が不安定になる
- 骨盤の傾きで歩行が不安定、しんどくなる
1 ガニ股(O脚)になりやすい
内転筋は足を閉じる働き(股関節の内転)がありますが、内転筋が衰えると膝が外側に開く、ガニ股(O脚)になります。
2 脚が不安定になる(筋肉のアンバランス)
脚をまっすぐに保つには、筋肉のバランスが必要です。内転筋の場合、脚を外側に開く(外転)ための中臀筋、小臀筋、大腿筋膜張筋の「外転筋」とバランスを取り(協調)、脚をまっすぐにすることを可能にしています。
しかし、内転筋が弱い場合、中臀筋、小臀筋、大腿筋膜張筋の「外転筋」が過剰に働き、脚をまっすぐに保つことができなくなります。脚がまっすぐに保てないために、膝の負担が増えて、中高年者に多い膝の痛み「変形膝関節症」になることもあります。
3 歩行で腰を痛める、しんどくなる
歩行やランニングの足の着地の際に「片足」で踏ん張る動作を繰り返しています。足の踏ん張りに必要なのは、先程述べました足をまっすぐにするための「筋肉のバランス」が必要です。
内転筋が弱くなった場合、足をまっすぐに保つことが困難なため、その代償(作用)として、骨盤が傾き→腰や膝に過大な負担がかかります。このまま歩行やランニングを続けてると、腰痛や膝痛が発生します。この代償作用は、歩行やランニングがしんどくなり、長時間続けることができなくなります。
個人指導専門のパーソナルトレーニングどこでもフィットでは、次のような内転筋に効果的なエクササイズを厳選して指導しています。
自宅でもできる内転筋を鍛える方法
内転筋を鍛える方法を運動強度が「やさしい」から「きつめ」の順で紹介しています。
<筋トレを効果的に行うために>
・15回前後で限界 がくるような種目は筋力アップに効果的(ギリギリ限界はNG)
・20回以上できるようになれば、レベルアップします。
・フォームが崩れたり、違うフォームはNG
1 椅子内転トレーニング 【やさしい】
鍛える筋肉: 内転筋
運動方法
- 椅子に座り、腹筋に力を入れて背中を伸ばします
- 息を吸いながら、両足をゆっくりと外側に開きます
- 息を吐きながら、両足を閉じます(内転筋に効きます)
- 繰り返します
回数: 15〜20回
2 ライイング・ヒップアダクション【やさしい】
鍛える筋肉: 内転筋
運動方法:
- 床に横向きになり、上になっている足は曲げておきます
- 息を吐きながら、下になった足を上げます(内転筋に効きます)
- 息を吸いながら、元の位置に戻ります
- 姿勢を崩さずに繰り返します
回数: 15〜20回
3 ワイドスタンス・スクワット【ややきつめ】
鍛える筋肉 内転筋、大腿四頭筋、大臀筋、ハムストリングス
運動方法
- 背中を伸ばし、両手を前方に組み、両足を開きます。
- 息を吸いながら、ゆっくりお尻を下げていきます。(できる範囲でお尻を下げます)
- 息を吐きながら、元の位置に戻ります
- 繰り返します
回数: 15〜20回
背中を丸めないようにしてください
5 サイドランジ スライダー【ややきつめ】
鍛える筋肉 内転筋、大腿四頭筋、ハムストリングス、大臀筋
運動方法
- スライダー、もしくは雑巾を準備します。(床はフローリング)
- 片足をスライダー、もしくは雑巾の上にのせて真っ直ぐ立ちます
- 息を吸いながら、足を横へ開きます。
- 息を吐きながら、足を閉じます(内転筋に効きます)
- 繰り返します
回数:15〜20回
エクササイズ中に上半身が斜めに傾かないようにします。
6 仰向け・足バタフライ【きつめ】
鍛える筋肉: 内転筋、外転筋
運動方法:
- 仰向けになり、お尻の横(中臀筋を目安)に手を当てます
- 腹筋に力を入れて、腰を床に近づけます
- 上体を少しだけ起こして、腹筋に力を入れます
- 息を吸いながら、足を横へ開きます。
- 息を吐きながら、足を閉じます
- 繰り返します
回数:15〜20回
紹介した筋トレ法は動画で学ぶことができます。ぜひご覧くださいね!
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【動画】内転筋(大内転筋、長内転筋、短内転筋、恥骨筋、薄筋)を効果的に鍛える自重トレーニング法 筋トレ
部位別のミニボール内転筋トレーニング
内転筋群を効果的に鍛える方法として、ターゲットとする筋肉に合わせてトレーニングフォームを変えていきます。ミニボールを使って行うとわかりやすいので紹介します。
ミニボールは太ももの間に挟み、両膝でボールを押さえつける静的な筋トレ法「アイソメトリックトレーニング」で実施します。
恥骨筋トレーニング
- 仰向けで足を上げて膝を直角にします。
- 息を吐きながら、両膝でボールを3秒間押さえつけます。
- 息を吸いながら、緩めます(ボールは保持しままま)
- 15回繰り返します
長内転筋、大内転筋の強化トレーニング
- 仰向けで膝を曲げます
- 息を吐きながら、両膝でボールを3秒間押さえつけます。
- 息を吸いながら、緩めます(ボールは保持しままま)
- 15回繰り返します
大内転筋、薄筋の強化トレーニング
- 仰向けで膝を曲げます
- 息を吐きながら、両膝でボールを3秒間押さえつけます。
- 息を吸いながら、緩めます(ボールは保持しままま)
- 15回繰り返します
ミニボール内転筋トレーニング YouTube動画
次に見逃されやすい、内転筋が硬くなっている場合のことについて話します。
内転筋群が硬くなるとどうなるの?
1 X脚になりやすい
内転筋が硬くなると、膝が内側に入りX脚になりやすくなります。この姿勢で動作を繰り返すと、よりX脚が強調されて、膝への負担が増えます。
2 骨盤の歪み
内転筋は、骨盤の下部である恥骨、坐骨についていて、筋肉が硬くなることで、骨盤を太もも方向へと引っ張られます。これは骨盤が傾き、骨盤の歪みへと繋がります。骨盤が傾くことにより、上半身が不安定になり、バランスを保つために上半身が横に移動します。(姿勢不良になります)
また内転筋が硬くなると骨盤の歪みにより、椅子から立ち上がる時、座った姿勢から歩き始める時に腰が痛くなり、しばらく動けなくなることがあります。
3 外転筋が弱くなる
内転筋が硬くなることで、股関節の柔軟性が失われて、中臀筋を始めとする「外転筋」が筋力が弱ってきます。そうなるとますます、脚をまっすぐに保つこどができず、腰や膝の負担が増えます。
4 腰痛、膝痛が起こる
先ほど述べた1〜3のことが原因で、腰や膝の負担が増えてきます。代表的なのは、膝の変形性膝関節症です。これは、内転筋が弱くなることでも起こりますが、内転筋が硬くなっても同様に起こるのです。
個人指導専門のパーソナルトレーニングどこでもフィットでは、次のような骨盤の歪み、腰痛、膝痛の予防となる「内転筋」に効果的なエクササイズを厳選して指導しています。
自宅でできる内転筋ストレッチ法
体を柔軟にするストレッチを安全かつ効果的に行うために
- 1ポーズに30秒間静止が基本です。(動かすストレッチの場合は動作はゆっくり)
- 特に硬いと感じる筋肉には2セット実施(30秒間×2回)をお勧めします
- ポーズを取っている間は自然呼吸を実施します
- 痛みを伴わない程度に体を伸ばします
- お風呂上がりに行うと効果抜群です
1 カニポーズ内転筋ストレッチ
伸ばす筋肉: 内転筋
運動方法:
- 床に両膝を開きます
- 両手を前方にして、ゆっくりとお尻を下げます(内転筋が伸びます)
- 自然呼吸で30秒間静止します
2 座り内転筋ストレッチ
伸ばす筋肉: 内転筋
運動方法:
- 床に座り、足の裏を合わせます
- できる範囲で膝を床に近づけます
- 自然呼吸で30秒間静止します
3 股関節イチローストレッチ【おすすめ】
伸ばす筋肉: 内転筋、腹斜筋
運動方法:
- 両足を開き、膝の内側に手を当てます
- 手で膝を押しながら、体を捻ります
- 自然呼吸で30秒間静止します
- 反対側にも体を捻ります
- 自然呼吸で30秒間静止します
4 脚前後の内転筋ストレッチ(大内転筋)
伸ばす筋肉: 内転筋(大内転筋)
運動方法:
- 足を前後に開き、前傾姿勢を取ります
- 手で膝を押し膝を外側へ開きます
- 自然呼吸で30秒間静止します
- 反対側の足も同様に行います
5 仰向け内転筋ストレッチ(長内転筋)
伸ばす筋肉: 内転筋(長内転筋)
運動方法:
- 仰向けになり、膝を深く曲げます(できる範囲で)
- 膝の内側に手を添えてます
- ゆっくりと膝を床に近づけます(反対側のお尻が浮かない範囲で)
- 自然呼吸で30秒間静止します
- 反対側の足も同様に行います
6 仰向け内転筋ストレッチ(大内転筋)
伸ばす筋肉: 内転筋(大内転筋)
運動方法:
- 仰向けになり、片足を抱え込みます(写真上)
- 膝を外側へ倒します(写真中)
- 手で膝の内側を持ちます(写真下)
- 自然呼吸で30秒間静止します
- 反対側の足も同様に行います
7 内転筋ほぐし フォームローラー
ほぐれる筋肉: 内転筋
運動方法:
- フォームローラーを太ももの内側に当てます
- 太ももの内側を横断するようにローラーを転がします
- 徐々に内転筋がほぐれます
- 自然呼吸で30秒間行います
- 反対側の足も同様に行います
フォームローラーを転がしているときは、気持ち良さを感じるくらいが丁度良いです。
朝イチでできる内転筋ストレッチ
紹介したストレッチは動画で学ぶことができます。ぜひご覧くださいね!
【動画】内転筋(大内転筋、長内転筋、短内転筋、恥骨筋、薄筋)を柔軟にするストレッチ
内転筋の筋肉の仕組み、エクササイズのまとめ
いかがでしたでしょうか? 内転筋は骨盤と大腿骨についていて、弱っていても、硬くなっていても体に影響を与えます。特に中臀筋を始めとする外転筋と拮抗のバランスを取り、良い姿勢を保ったり、歩行やランニングで自然な動作を作り出しています。また、腰痛や膝痛にも繋がりやすいので、内転筋はしっかり鍛えて、ケアもしておきたいですね。
ぜひ、内転筋と均衡を図る中臀筋のエクササイズも見逃さないようにしてくださいね!
内転筋を効果的に鍛え、年齢に負けない筋肉づくり、姿勢の改善、腰痛や膝痛の改善を加速させたい方は、ぜひにパーソナルトレーナーの小林素明までご相談くださいませ。小林素明が代表兼トレーナーを務めるパーソナルトレーニングどこでもフィットは、親切、丁寧で定評があり、コミュニケーションを第一に考えるトレーニングジムです。
この記事を書いた人
小林素明 (城好きパーソナルトレーナー)
テレビ番組「ちちんぷいぷい」「大阪ほんわかテレビ」「ten」などに多数出演し、メディアからも注目されるパーソナルトレーナー。30年以上の指導経験と健康運動指導士の資格を有し、1万レッスンを超えるパーソナルトレーニング指導の実績。特に40代からシニア世代向けの「加齢に負けない」トレーニングに定評があり、親切で丁寧な指導が評価されている。
医療機関との連携を通じて、安全で効果的なトレーニング法を研究し、病院や企業での腰痛予防に関する講演では受講者の98%から「分かりやすかった」と高評価を得る。また、パーソナルトレーナー養成講座の講師としても豊富な実績を誇り、多くのトレーナーの育成に貢献しています。