体幹トレーニングを科学、日常やスポーツに欠かせない背骨を安定させる筋肉、どんなトレーニングが効果的?筋電図で解明する

体幹トレーニング 

フィットネストレーナーの小林素明です。体幹は体を支える土台となるもので、頭や手足を除く胴体すべてを言います。体幹を鍛えるトレーニングは、サッカーや野球、陸上競技、テニスなど数々の一流スポーツ選手が効果を上げていて、ご存知の方も多いはずです。

 
体幹を鍛えておくことで、

  • 正しい姿勢を保持できる(若々しく見える)
  • 手足の動きをスムーズにする(歩行や階段がラクになる)
  • ブレない体で無駄な動きや怪我が少なくなる
  • 腰痛や膝痛が予防できる
  • 疲れにくくなる

というメリットがあり、決してスポーツ選手だけのものではなく、日常生活でも欠かせない筋力です。

 
しかし、体幹トレーニングはテレビや雑誌、インターネットでたくさん紹介されているけど、実際どの方法でやれば効果があるの? 自分に合った体幹トレーニングってあるのかなぁ~? と疑問を持ってしまいます。そこで今回は、エビデンスを交えて、体幹トレーニングに詳しくなれるお話をします。

体幹の注目度が高まった有名な研究とは?

1990年代に「肩の運動をした時、どの筋肉が活動するのか?」(写真)という研究が行われました。写真のように、腕を上げた時には、肩周りを覆う筋肉=三角筋(さんかくきん)※図1 に力が入りますので、肩の運動が正しいのです。

 
しかし、その肩の三角筋よりも早く腹筋に力が入っていることが分かったのです。この腹筋とは、腹横筋(ふくおうきん)※図2 という腹筋のインナーマッスル(深層部にある筋肉)です。

図1 三角筋(肩の筋肉)

図2 腹横筋(腹筋のインナーマッスル)

 
驚くことに、足の運動でも同じく、腹横筋(ふくおうきん)が足の筋肉よりも先に活動するこという結果が得られたのです。

 
つまり、運動の多くは、腹筋の「腹横筋」で体を安定させて動作が行われ、とても重要な役割を担っているのです。

腰、膝の障害と関係が深い体幹の筋肉「多裂筋」とは?

 
体幹の筋肉で腹横筋と同様、とても重要な筋肉があります。それは、背骨に沿って付着している多裂筋(たれつきん)※上の図 です。

 
この多裂筋は、いわば腹横筋の裏側にある筋肉で、姿勢を保持すること、腰や膝の障害の予防に関わっていることが研究で明らかになっています。

 
多裂筋がしっかり活動することで、

  • 背骨と背骨の間にある「椎間板(ついかんばん)」の負担を軽減
  • 腹横筋と多裂筋が同時に収縮(力が入る)することで背骨の位置の正常化

と、腰痛を予防することができます。

 
では、良い姿勢を保つ、スムーズな動作、腰や膝の障害も予防ができるための体幹の基本である、腹横筋、多裂筋はどのようにして鍛えれば良いのか?を話します。

腹横筋、多裂筋の鍛え方を科学!


写真1 筋電図(筋肉の活動=電気発生)

 
筋肉に針を刺し、運動中に筋肉の活動量を可視化できる「筋電図」。【写真1】 この筋電図を用いて、実際に体幹トレーニングを行った時、腹横筋や多裂筋がどれだけ活動するのか?の研究データがあります。

参考)筋肉が活動すると電気発生があり、グラフの波が大きくなります

 
筋電図を用いて、腹横筋、多裂筋が活動する代表的な体幹トレーニングを3種目ピックアップし、【表1】にまとめました。

【表1】筋電図による筋肉の発揮度

主に活動する筋肉 運動種目 筋肉の発揮度(筋電図)
腹横筋 エルボー・トゥ※1 約40%MVC
多裂筋 バックブリッジ※2 約60%MVC
腹横筋、多裂筋 同時 ハンドニー※3 30~40%MVC

※1 肘&つま先立ちで、片手、片足を伸ばす
※2 仰向けになりお尻を上げる
※3 手&膝立ちで片手、片足を伸ばす

筋肉の発揮度の目安

【表1】には筋肉の発揮度の 「%MVC」という単位がありますが、これは筋肉の力を発揮の度合いで、最小「0」〜最大「100」%となります。

筋肉の発揮(筋電図) 効果
30%MVC程度 背骨(腰椎)の安定性
45~66%MVC以上 筋力の強化

 
今回の体幹トレーニングの目的は、腹横筋や多裂筋の働きである、背骨(腰椎)の安定性 となりますので、30%MVC以上の活動量が有効です。

何から始めれば良いのか? オススメの体幹トレーニングとは?

先ほどの表にある体幹トレーニングで、まずやっておきたい種目は、体幹の前後を同時に鍛える= 手&膝立ちで片手、片足を伸ばす「ハンド・ニー」。

なぜならば、運動強度はそれほど高くないにも関わらず、体幹部の多くの筋肉をバランス良く鍛えることができるからです。

【1】 腹横筋、多裂筋をバランスよく鍛えられるハンドニー

 
主に鍛えられる筋肉

外腹斜筋(腹筋)、腹横筋(腹筋)、多裂筋(背筋)、脊柱起立筋(背筋)など

運動方法

  1. 四つん這いになります
  2. 右手、左足を「床と並行」なるように上げます
  3. 自然呼吸で30秒間静止します
  4. 反対の手と足も同様に行います
  5. 2セット行います。

動画:ハンドニー

【2】 多裂筋がよく鍛えられるバックブリッジ

 
主に鍛えられる筋肉

外腹斜筋(腹筋)、多裂筋(背筋)、脊柱起立筋(背筋)など

 
多裂筋がよく鍛えられるトレーニングです。お尻の筋肉も同時に鍛えることができ、腰痛予防に最も効果を発揮します。

 
運動方法

  1. 両膝を曲げて、仰向けになります。
  2. お尻を上げます(お尻、背筋に効きます) → 腹筋にも力を入れておきます
  3. ゆっくりと片足を上げて前方に伸ばします(片足立ち)
  4. 体を真っ直ぐに保ったまま、自然呼吸で20〜30秒間静止します
  5. 体が斜めになったり、姿勢が保てなくなったらスグに中止し、初めからやり直します
  6. 反対側の足も同様に行います。2セット実施

<注意> 腰を反らし過ぎないよう、腹筋に力を入れておきます。

【3】 腹筋を一気に鍛える!エルボー・トゥ

 
主に鍛えられる筋肉

外腹斜筋(腹筋)、腹横筋(腹筋)、腹直筋など

強度は高めの「エルボー・トゥ」。腹横筋だけでなく、お腹の横にある外腹斜筋と、お腹周りを一気に鍛えることができます

運動方法

  1. 床に両肘をつき、爪先立ちになります
  2. 右手、左足を床から上げます
  3. 自然呼吸で10〜20秒間静止します
  4. 左手、右足も同様に行います

動画:エルボー・トゥ

合わせてやっておきたい!体幹力をアップさせる自重トレーニング

今紹介した体幹トレーニングは、ブリッジエクササイズという名称で、静止した状態で体幹部の筋肉を鍛える方法でした。しかし、このブリッジエクササイズだけでは、体幹トレーニングとしては不十分。

実際に手足を動かし、体の軸を安定させる「体幹力」を養うことで、日常生活での動作やスポーツ動作に生かすことができるのです。では、次に手足を使い体幹力をアップさせる筋力トレーニングを紹介します。

階段がラクに!腿上げトレーニング&ウォークニー

主に鍛えられる筋肉
腸腰筋(太もも付け根)、太もも(大腿直筋、縫工筋など)

 
運動方法

  1. 前方を見て、真っ直ぐに立ちます
  2. 腕をつけながら腿上げを行います
  3. 腿上げをした状態で3秒間静止し、体を真っ直ぐにしておきます
  4. 左右交互に行います
  5. 慣れてくれば、前方に歩きながら腿上げを行います

動画:腿上げトレーニング&ウォークニー

【チャレンジコース】足腰が強靭!3つの下半身強化エクサササイズ

いかに体幹力が必要であるか?が体感できるエクササイズを紹介します。といいますのも、エクササイズには体を回転させたり、膝を高くあげてジャンプしたりと、体幹力がなければできない種目だからです。

「何とかできた」では十分ではなく、姿勢を保持して「余裕を持ってできた!」が求められます。姿勢の保持は筋トレの効果だけでなく、関節の保護(怪我の危険性を回避)する大切な役割があるからです。

体幹トレーニングを科学する!まとめ

いかがでしたでしょうか? 体幹トレーニングは、どんな目的で鍛えるか?によって、トレーニング種目を選択する必要があります。今回は、姿勢の保持、腰痛や膝痛の予防などに焦点をあて必要な体幹トレーニングを紹介しました。紹介したトレーニングは、体幹を鍛える基本的な種目で、ここから動きを交えたトレーニング(腿上げトレーニングなど)を行うと、スムーズな動きに変化しているはずです。

 
もし、本格的な体幹トレーニングをしたいなぁ〜と思われましたら、プロの指導!完全マンツーマンで安心トレーニング をお勧めします。
 ↓ ↓ ↓
パーソナルトレーニングどこでもフィット

この記事を書いた人

大阪のパーソナルトレーナー小林素明
天空の城・竹田城(兵庫県)にて

小林素明 (城好きパーソナルトレーナー)

テレビ番組「ちちんぷいぷい」「大阪ほんわかテレビ」「ten」などに多数出演し、メディアからも注目されるパーソナルトレーナー。30年以上の指導経験と健康運動指導士の資格を有し、1万レッスンを超えるパーソナルトレーニング指導の実績。特に40代からシニア世代向けの「加齢に負けない」トレーニングに定評があり、親切で丁寧な指導が評価されている。

医療機関との連携を通じて、安全で効果的なトレーニング法を研究し、病院や企業での腰痛予防に関する講演では受講者の98%から「分かりやすかった」と高評価を得る。また、パーソナルトレーナー養成講座の講師としても豊富な実績を誇り、多くのトレーナーの育成に貢献しています。

小林素明の詳しいプロフィールはこちら