高血圧対策ガイド|50代からはじめる健康づくりの基本

フィットネストレーナーの小林素明です。
高血圧は自覚症状がほとんどなく、気づかないうちに進行してしまうことが多い病気です。放置すれば、心臓病や脳卒中といった深刻な病気を引き起こすおそれもあります。
「自分の血圧は大丈夫だろうか…」と不安を感じたことはないでしょうか?
実はボク自身も、50代に入り血圧が上昇していることに気づき、食事の見直しによって2ヶ月で血圧を改善した体験があります。この経験から、生活習慣を少し変えるだけでも、血圧はしっかりとコントロールできることを実感しました。
今回のテーマは、50代から始める高血圧の予防と改善。
高血圧の原因とされる生活習慣に着目し、誰でも実践できるシンプルで効果的な対策法をご紹介します。特別な道具や激しい運動は必要ありません。無理なく、毎日の生活の中で続けられる方法ばかりです。ぜひ、ご自身の健康づくりの参考にしていただければと思います。
正常血圧と高血圧の基準とは?

血圧には、2つの数値があります。「最高血圧(収縮期血圧)」と「最低血圧(拡張期血圧)」です。日本高血圧学会によると、最高血圧が140mmHg以上、または最低血圧が90mmHg以上の場合は、高血圧とされています。これが医療機関で測ったときの基準です。
家庭で測る場合は、少し低めの数値が目安になります。最高血圧が135mmHg以上、最低血圧が85mmHg以上のときは注意が必要です。
ただし、血圧はいつでも同じではありません。体調や気持ちによって変わることがあります。たとえば、咳をしたとき。人と話したあと。トイレに行った直後や、食事のあとなど。こうした場面では、一時的に血圧が高くなります。
そのため、正しく測るための準備が大切になります。以下のポイントに気をつけましょう。
- 測定の前は5分ほど座って安静にしましょう
- 深呼吸をして、リラックスした状態で測ります
- 腕は心臓の高さに合わせます
毎日同じ時間帯に測ることで、自分の血圧の傾向もつかめるようになります。自分の血圧がどのくらいか、知ることが第一歩です。まずは「正確に測る習慣」から始めてみましょう。
なぜ50代から血圧対策?

それは、日本人の血圧が年齢とともに上がりやすいからです。日本人は、加齢にともなって血圧が上がる傾向があります。厚生労働省の「国民健康・栄養調査」(上の表)でも、年代が上がるごとに平均血圧が高くなることが示されています。
特に50代は、体の変化がわかりやすく出る時期です。疲れやすくなったり、体力の衰えを感じたり。病気のリスクも高まりはじめます。だからこそ、50代をきっかけに血圧対策をはじめておくことが大切です。
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なぜ年をとると血圧が上がるの?

その理由のひとつは、「血管の変化」にあります。若いころは、血管がしなやかで、血液もスムーズに流れています。しかし、年を重ねるにつれて、血管は少しずつ硬くなっていきます。すると、血液が流れにくくなり、心臓が強い力で押し出さなければならなくなります。この「強い力」が、血圧の上昇につながるのです。
こうした変化は、特別な病気でなくても、誰にでも起こります。
たとえば、50代になると、すでに上の血圧(収縮期血圧)が130~140mmHgを超える人が増えてきます。これは「高血圧予備群」と呼ばれる状態です。この段階で生活を見直せば、本格的な高血圧を防げる可能性があります。
血圧が気になったら?
最近、健康診断で「血圧が高め」と言われた。あるいは、自宅で測っても高い数字が出ることが増えた。そんなときは、まず年齢による変化を疑ってみてもいいかもしれません。けれども、年のせいだからといって放っておくのは危険です。知らないうちに、脳や心臓に負担がかかっていることもあります。
血圧は、静かに進む病気のサインを教えてくれる、大切なバロメーターです。だからこそ、50代からは自分の血圧に目を向けて、しっかりと向き合っていきましょう。
高血圧の原因って何?

高血圧の原因には、食塩の過剰摂取、肥満、飲酒、運動不足、ストレスや、遺伝的体質があります。よく知られているのが、遺伝や加齢です。家族に高血圧の人がいると、自分もなりやすい傾向があります。また、先ほど紹介しましたが年をとると、血管の弾力性が失われ、硬くなりやすくなります。(動脈硬化)。このことが、血圧を上げる原因になります。
高血圧の主な原因について
塩分:塩分をとりすぎると、体の中に水分がたまりやすくなります。血液の量が増えることで、血管の内側にかかる圧力が高まり、血圧が上がってしまいます。これが高血圧の主な原因のひとつです。
運動不足:体をあまり動かさないと、血流が悪くなり、心臓や血管に負担がかかります。
肥満:体重が増えると、血液を送るために心臓がより多くの力を必要とするため、血圧が上がりやすくなります。
喫煙:タバコに含まれるニコチンは、吸った直後に血管をキュッと収縮させます。その結果、血液が流れにくくなり、血圧が上がってしまいます。さらに、喫煙を続けることで血管が傷み、動脈硬化も進みやすくなります。
お酒:お酒は適量ならリラックス効果がありますが、飲みすぎると逆効果。アルコールが交感神経を刺激し、心拍数と血圧を上げてしまいます。毎日のように多く飲む人は、慢性的な高血圧になりやすくなります。ちなみに1日のお酒の適量の目安は、日本酒1合、ビール中びん1本、ウイスキー水割りシングル2杯までです。女性はその半分となります。
ストレス:強いストレスを受けると、交感神経が働き、血圧が一時的に高くなります。これが繰り返されると、慢性的な高血圧につながることがあります。
睡眠不足:睡眠不足が続くと、自律神経が乱れ、血圧の調整がうまくいかなくなります。
このように、高血圧の原因はひとつではありません。いくつかの要因が重なって起こることが多く、生活習慣を少しずつ見直すことが、何よりの予防になります。中でも、日本人の高血圧対策で重要なのは、食塩の摂取量です。では、食塩の摂取をピックアップして話します。
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日本人にとって重要な高血圧対策「減塩」

高血圧の原因の中で、日本人にとって重要なのは、食塩の過剰摂取がよく指摘されています。特に日本人は塩分をとりすぎる傾向があり、味噌汁や漬物、加工食品などに多く含まれています。、今もなお、1日の摂取量が多い傾向にあります。
「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、塩分の目標量として、成人男性は1日7.5g未満、成人女性は6.5g未満とされています。さらに、日本高血圧学会では、高血圧の人は1日6g未満を目指すようにと勧めています。実際にはその1.5倍以上とっている人も少なくありません。
減塩には、身近な食品、調味料にどのくらいの塩分が含まれているかを知ることから始めることが大切です。
身近にある食品の塩分量
減塩を心がける第一歩は、日々口にしている食品や調味料に「どのくらいの塩分が含まれているのか」を知ることから始まります。たとえば、私たちがよく利用するコンビニの食品には、意外と多くの塩分が含まれていることがあります。以下にいくつかの例をご紹介します。
コンビニ食品の塩分量(目安)

- おにぎり(鮭)1個:約1.5~2.0g
- サンドイッチ(ハム&たまごなど)1パック:約2.0~3.0g
- お弁当(からあげ弁当など):約3.5~5.0g
これらは忙しいときに手軽に食べられる便利な選択肢ですが、実は1食で1日の推奨塩分量(男性7.5g未満、女性6.5g未満 ※厚生労働省)の半分以上を摂ってしまうこともあります。さらに、外食でも同様に塩分量は高めです。
外食メニューの塩分量(目安)
- 牛丼 並盛:約2.5~3.5g
- 味噌汁1杯:約1.5~2.0g
- ハンバーガー1個(チーズ入り):約2.0~2.5g
このように、手軽さと引き換えに、気づかないうちに塩分を多く摂取しているケースが少なくありません。毎日の食事の中で少し意識を変えるだけで、減塩への第一歩を踏み出すことができます。
まずは、自分が普段食べている食品にどのくらいの塩分が含まれているのか、パッケージの表示を確認したり、調べてみたりすることから始めてみましょう。続いて、調味料はどうでしょうか?
よく使う調味料の塩分量をチェックしてみましょう

料理を作る際に欠かせない「調味料」にも、意外と多くの塩分が含まれています。とくに毎日の食事で繰り返し使うものだからこそ、どれだけの塩分を摂っているのかを知ることが大切です。以下は、主な調味料の「小さじ1杯あたり」の塩分量の目安です。
調味料: (小さじ1杯あたりの塩分量)
- 塩(精製塩) : 約6.0g
- 濃い口しょうゆ : 約0.9g
- オイスターソース : 約0.8g
- 合わせ味噌 :約0.7g
- ポン酢 :約0.5g
- マヨネーズ : 約0.1g
このように比べてみると、塩1杯(6.0g)は他の調味料の何倍もの塩分を含んでいることがわかります。味噌や醤油も意外と塩分が高めなので、使いすぎには注意が必要です。
とはいえ、塩分をゼロにするのではなく、上手に調整して使うことが大切です。例えば、しょうゆは「かける」より「つける」ことで使用量を抑えることができますし、ポン酢や香辛料、だしの風味などを活かせば、減塩でも美味しく仕上げることが可能です。
このように毎日の食事の中で、「どの調味料にどれだけの塩分が含まれているか」を意識するだけでも、減塩の第一歩になります。
塩分を摂り過ぎた時の対策

外食が続くと、どうしても塩分を摂りすぎてしまいます。とくにラーメンや丼もの、定食などは、1食で1日分の塩分量に近いこともあります。気づかないうちに、体に負担がかかっていることもあるのです。
そんなときは、塩分を外に出す働きのある「カリウム」を含む食材を取り入れることがポイントです。
カリウムの働き
カリウムには、体の中にたまったナトリウム(塩分)を尿と一緒に排出する作用があります。これにより、血圧の上昇を抑えることができます。
特に50代以降は、血管の柔軟性が落ち、血圧が上がりやすくなります。塩分を控えると同時に、カリウムを意識して摂ることが大切です。
カリウムを多く含む食品(例)
カリウムは、野菜・果物・いも類・豆類・海藻などに幅広く含まれています。普段の食事に取り入れやすいものを中心に、以下のような食材があります。
- バナナ(1本)
- トマト(中1個)
- ほうれん草(ゆでたもの 小鉢1杯)
- じゃがいも(中1個)
- さつまいも(輪切り2〜3枚程度)
- アボカド(1/2個)
- キウイフルーツ(1個)
- 小松菜(おひたし1皿)
- 納豆(1パック)
- 大豆の煮もの(小鉢1杯)
- 切り干し大根(煮物1皿)
- ひじき(煮物1皿)
注意点:ただし、腎臓に持病がある方はカリウムを摂りすぎると逆効果になることがあります。腎機能が低下していると、カリウムが体にたまりやすく、心臓に負担がかかることがあるからです。健康診断で腎機能の数値(eGFR)が低い方、または医師から指導を受けている方は、カリウムの摂取量にも注意が必要です。心配な方は、かかりつけ医にご相談ください。
これらの食品は、1食分の中で無理なく取り入れられるものばかりです。たとえば、朝はバナナを1本、昼は野菜スープやサラダにトマト、小松菜を使うなど、自然にカリウムを摂れる工夫をするとよいでしょう。ただし、果物は夕方以降に食べると体重が増えやすいため、15時までの摂取をお勧めします。
また、塩分を減らした分、だしや素材の味を活かす調理法に切り替えると、減塩でも満足感のある食事になります。
外食が続いた日は、野菜や果物を意識して、体のバランスを整えましょう。それが、50代からの健康づくりの第一歩です。
減塩対策2ヶ月で血圧の低下に成功事例:50代からの高血圧予防に実践的な第一歩

50代に差しかかると、健康への意識はますます重要になります。今回は、ボク自身の実体験として、減塩対策を2ヶ月間実践したことで血圧の改善に成功した事例を紹介します。これから高血圧対策を始めたいという方にとって、現実的で取り入れやすい方法をお伝えします。
血圧の異常に気づいたのは突然のことでした
2025年2月、久しぶりに家庭用血圧計で血圧を測定したところ、最高血圧143mmHg/最低血圧90mmHgという数値が出ました。それまでは、通常最高血圧115〜120mmHgほどだったため、明らかな上昇に驚き、これは本格的に対策が必要だと感じました。
実践したのは「日常の中の減塩」
すべての食事を減塩に切り替えるのは現実的ではないと感じたため、まずは仕事中の昼食から見直すことにしました。外食は塩分が多くなりがちなので、代わりに活用したのがセブンイレブンの「セブンミール日替わりおかず」です。
このおかずセットは、栄養バランスに配慮されており、ネットで事前注文して店頭で受け取れるため、忙しい日々にも無理なく続けられます。幸いにも、ジムのすぐ近くにセブンイレブンがあったため、昼食時に受け取る習慣もつけられました。
食材の力も取り入れる

加えて、血圧を安定させる働きがあるカリウムを含む食品も毎日の習慣に加えました。具体的には、以下のような食品を意識的に摂取しました。
- バナナ(手軽に食べられ、カリウムが豊富)
- トマト(リコピンも含まれ、抗酸化作用も期待)
これらは間食や朝食に無理なく取り入れられるため、長続きしやすいのがポイントです。(奥さんにも協力してもらいました)
2ヶ月後の驚くべき変化
このような取り組みを2ヶ月間継続した結果、2025年4月には血圧が以下のように改善されました。
- 最高血圧:120mmHg前後
- 最低血圧:75mmHg前後
明らかに血圧が安定し、体調の良さも実感できました。今回の経験から、「減塩」は高血圧対策として非常に有効であることを改めて実感しています。
食事内容を少し工夫するだけでも、減塩は十分可能です。今回のように「昼食だけでも外食を控える」「カリウムを含む食品を意識する」など、できる範囲で無理なく、スグに始めることが、長続きの秘訣と言えるでしょう。
高血圧対策には運動も大切です!

先ほどは「減塩による血圧の改善」について、ボク自身の体験を話しました。この効果の背景には、運動習慣を含む日頃の健康的な生活があることも忘れてはいけません。具体的には、日常的に運動を取り入れ、体重管理や睡眠の質向上、ストレスの軽減を意識して生活してきたことが、血圧の安定に大きく寄与したと考えています。
運動が血圧に与えるメリットとは?
定期的な運動は、自律神経のバランスを整えることに加え、以下のようなさまざまな健康効果をもたらします。
- 睡眠の質が向上し、夜間の血圧の自然な低下を促進
- ストレスホルモン(コルチゾール)の分泌が抑えられ、精神的な安定が得られる
- 代謝が高まり、体重管理がしやすくなる
- 血管の柔軟性が向上し、血流がスムーズになる
これらの効果はすべて、高血圧の予防・改善につながる重要な要素です。特に中高年においては、薬に頼りすぎずに生活習慣でコントロールできることが、長期的な健康維持のカギになります。
無理なく始められる「歩数アップ」のすすめ
運動と聞くと、つい「ジムに通わないと」「ジョギングしなきゃ」とハードルを感じてしまう方も多いですが、まずは日常の歩行量を少し増やすことから始めましょう。
目標は「今より+1,000歩」

現在の平均歩数に1日あたり1,000歩(約10分)をプラスするだけでも、血圧への効果は期待できます。厚生労働省のデータによると、中高年の歩数目標は男女で平均7,000~8,000歩程度とされていますが、「1万歩を目指す」のではなく、少しずつ増やすことが長続きのコツです。歩数はスマートフォンで確認できますね。
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慣れてきたら「インターバル速歩」にチャレンジ
運動に少し慣れてきたら、効率的に体を鍛える方法として「インターバル速歩」がおすすめです。
インターバル速歩のやり方
- 1分間 速歩(やや息が上がる程度)
- 3分間 普通のペースで歩く
- これを2〜3回繰り返す。
この歩き方には以下のようなメリットがあります:
- 心肺機能の強化
- 脚力・筋力の向上
- 基礎代謝アップにより減量しやすくなる
- 持続的な血圧降下効果
特に50代以降は、筋肉量の低下が血圧のコントロールを難しくする要因にもなるため、脚力を維持することが重要です。
運動は「気軽に、でも継続的に」
高血圧対策において運動は、薬に頼らない“自然の処方箋”です。まずは日々の歩数を少し増やすことから始めてみましょう。そして、自分のペースでインターバル歩行などを取り入れ、継続可能な運動習慣を身につけることが大切です。
50代から始める健康づくりは、難しいことではありません。「無理なく、気持ちよく続けられる」ことを選びましょう。身体は正直です。
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まとめ|50代からの健康づくりは「一歩ずつ、確実に」

今回の実体験を通して、50代からでも無理なく始められる減塩対策が、血圧の改善に大きく貢献することが分かりました。高血圧は「サイレントキラー」とも呼ばれ、自覚症状が少ないまま進行することがあります。だからこそ、日々の小さな積み重ねが将来の健康につながります。
すべての対策を行うのは大変ですので、まずは減塩対策、歩数を増やすを優先して行うことがよいでしょう。
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この記事を書いた人

小林素明 (お城好きフィットネストレーナー)
テレビ番組「ちちんぷいぷい」「大阪ほんわかテレビ」「ten」などに多数出演し、メディアからも注目されるパーソナルトレーナー。30年以上の指導経験と健康運動指導士の資格を有し、1万レッスンを超えるパーソナルトレーニング指導の実績。特に40代からシニア世代向けの「加齢に負けない」トレーニングに定評があり、親切で丁寧な指導が評価されている。
医療機関との連携を通じて、安全で効果的なトレーニング法を研究し、病院や企業での腰痛予防に関する講演では受講者の98%から「分かりやすかった」と高評価を得る。また、パーソナルトレーナー養成講座の講師としても豊富な実績を誇り、多くのトレーナーの育成に貢献しています。