免疫力を左右する生活習慣とは? 運動・ストレス・睡眠と風邪の関係

パーソナルトレーナーの小林素明です。

コロナ禍を経て、「免疫力」という言葉を耳にする機会が増えました。免疫力が高いとウイルスや細菌に感染しにくく、健康を維持しやすいことはよく知られています。

しかし、免疫力はただ強ければよいわけではなく、生活習慣によって大きく左右されるものです。

特に、運動は免疫力を高める効果がある一方で、過度な運動は逆に免疫力を低下させることもあります。また、睡眠不足やストレスの蓄積も免疫機能に悪影響を与え、体調を崩す原因になりかねません。

そこで今回は、免疫の基本と運動の関係について詳しく解説していきます。

免疫力とは? 体を守る防御システム

私たちの体には、ウイルスや細菌などの病原体から身を守るための防御システムが備わっています。この仕組みを「免疫」と呼び、その働きの強さを「免疫力」といいます。

免疫力が高いと、病原体が体内に侵入しても撃退しやすく、感染症にかかりにくくなります。また、もし感染した場合でも、軽症で済むことが多くなります。

しかし、免疫力は生まれつき決まっているわけではなく、年齢や生活習慣によって大きく変化します。特に 運動・睡眠・食事・ストレス管理 は、免疫機能に深く関わる重要な要素です。

適度な運動は免疫細胞を活性化し、健康維持に役立ちますが、逆に 過度な運動や睡眠不足が続くと免疫力が低下し、風邪をひきやすくなる こともあります。免疫には、大きく分けて「自然免疫」と「獲得免疫」の2種類があります。それぞれどのような働きをするのか、詳しく見ていきましょう。


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自然免疫と獲得免疫とは? 体を守る2つの仕組み

私たちの体には、ウイルスや細菌から身を守るための 2つの免疫システム があります。それが「自然免疫」と「獲得免疫」です。それぞれの役割を知ることで、免疫力を高める方法が見えてきます。

自然免疫 体に備わった“最前線”の防御

自然免疫は 生まれつき持っている防御機能 です。ウイルスや細菌が体に入ってきたとき、すぐに働き、感染を防ごうとします。

たとえば、

  • 皮膚や粘膜 が異物の侵入をブロックする
  • 白血球(マクロファージや好中球) がウイルスを攻撃する
  • くしゃみや涙 で体外へ排出する

このように、自然免疫は 「とりあえず敵を排除する!」 という即時対応の仕組みです。ただし、すべての病原体を防げるわけではありません。そこで、もうひとつの免疫が重要になります。

獲得免疫 “学習して進化する”免疫

獲得免疫は 「一度経験した敵を覚えて、次に素早く対応できる」 仕組みです。たとえば、水ぼうそうに一度かかると、二度とかかりにくくなるのは獲得免疫のおかげ。ワクチンもこの働きを利用しています。

獲得免疫の特徴は、

  • 一度戦った病原体を記憶する
  • 次に侵入してきたとき、素早く対処する

つまり、自然免疫が 「とにかく防ぐ」 ものだとしたら、獲得免疫は 「学習して、より強くなる」ものなのです。

免疫力を高めるカギは生活習慣

この 2つの免疫がしっかり働くかどうかは、生活習慣にかかっています。運動・睡眠・食事のバランスがとれていれば、免疫システムはスムーズに機能します。逆に、不規則な生活やストレスが続くと、免疫力は低下し、風邪をひきやすくなることも。

では、免疫力が低下すると具体的にどんな変化が起こるのでしょうか? その鍵を握るのが「唾液SlgA」です。次に、唾液SlgAと風邪の関係について詳しく見ていきましょう。

唾液SlgAと風邪の関係 免疫のバロメーター

あくびをする男性

「最近、なんだか風邪をひきやすい…」「疲れが抜けにくい…」そんなとき、体の免疫バランスが崩れているのかもしれません。

そのサインのひとつが、口の中にある 「唾液SlgA(分泌型免疫グロブリンA)」 という免疫物質です。

唾液SlgAとは?

唾液SlgAは、ウイルスや細菌の侵入を防ぐ“最前線”の防御システム です。口や喉の粘膜に分泌され、病原体が体内に入るのをブロックする働きを持っています。つまり、この量が十分にあると、風邪をひきにくくなるのです。

スポーツ選手の研究でわかったこと

上のグラフはスポーツ選手を対象にした研究です。激しいトレーニングをすると、風邪をひく約3週間前から唾液SlgAの量が減少することがわかっています。

そして、風邪をひいた後は 約2週間かけて回復することも確認されました。(Med Sci Sports Exerc. 2008 Jul;40(7):1228-36.)

この結果から、唾液SlgAが減ると免疫力が低下し、病原体が体に入りやすくなることがわかります。逆に、唾液SlgAを維持できれば、風邪を予防しやすいということです。

では、具体的にどんな生活習慣を意識すれば、免疫力を維持できるのでしょうか? まずは「運動と免疫力の関係」から見ていきましょう。

運動と免疫力の関係――「ちょうどいい運動」が免疫を強くする

「運動は体にいい」とよく言われますが、実は やりすぎるとかえって免疫力が低下する ことがわかっています。大切なのは、運動不足を避けつつ、適度な運動を続けること です。

運動と風邪のリスク

運動不足の人」と、「過度な運動をする人」は、どちらも風邪をひきやすい 傾向があり、「適度な運動をしている人」が 最も風邪をひきにくいことが分かっています。

「適度な運動」ってどれくらい?

適度な運動の目安は、

  • 運動後に7時間以上の睡眠がとれる
  • 翌日に強い疲労を感じず、すっきり過ごせる

この2つを目安にし、過度な運動に気をつけましょう。

では、運動だけでなく 睡眠 はどうでしょうか?実は、睡眠も免疫力に大きく影響します。


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睡眠と免疫力の関係 睡眠不足で風邪をひきやすくなる

「最近、寝不足が続いている…」そんなとき、風邪をひきやすくなったと感じることはありませんか?実際に、睡眠時間が短い人ほど、風邪のリスクが高まる ことが研究で明らかになっています。

睡眠時間と風邪の発症率

18〜55歳を対象にした研究では、睡眠時間と風邪の発症率にはっきりとした関係がある ことが確認されています。(上のグラフ)

この研究をまとめますと

  • 7時間以上眠る人は風邪をひきにくい
  • 5時間未満の人は、風邪をひくリスクが大幅に上昇

睡眠が不足すると、免疫細胞の働きが低下し、ウイルスや細菌への抵抗力が落ちてしまいます。「忙しくて睡眠時間を削っている」 という人は要注意。免疫力を落とさないためにも、まずは 7時間の睡眠を目標にしてみましょう。


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飛行機移動と免疫力の関係「長時間フライトが免疫を下げる?」

フライト

長時間の飛行機移動で 体調を崩したことがある という人も多いのではないでしょうか? 飛行機移動は 免疫力に影響を与えることを示した研究があります。

10時間のフライトで免疫物質が減少

研究によると、約10時間の飛行機移動で唾液SlgAが大幅に低下することが確認されています。

その理由は、

  • 機内の気圧が低く、酸素が薄い
  • 湿度が低いため、粘膜が乾燥しやすい

これらの影響により、喉や鼻の防御機能が弱まり、ウイルスに感染しやすくなります。長時間のフライトをする際は、マスクやこまめな水分補給で粘膜の乾燥を防ぐことが大切です。


「最近、風邪をひきやすい…」「疲れやすくなった…」そんなサインが出ていませんか? もしかすると、免疫力が低下しているかもしれません。ここで一度、自分の免疫力をチェックしてみましょう。

免疫低下サインを見逃さない!

免疫力が低下していると、体はさまざまなサインを出してくれます。ここでは、そのサインと、免疫力を高めるための対策をご紹介します。

免疫力低下のサイン

1 休んでも疲れが取れにくい

普段の休養を取っても、身体が重く感じる。やる気が出ない。そんな感覚を抱えていませんか?免疫力が低下していると、疲労が取れにくくなり、普段の疲れやストレスが抜けにくくなります。

2 夜、寝つきが悪く、朝スッキリと起きられない

眠りの質が低下すると、朝の目覚めがすっきりしません。眠っても疲れが取れないと感じる方は、免疫力が影響している可能性があります。

3 水分を摂っても口が乾く

喉の渇きがひどく、水分を摂ってもなかなか治まらない。これも免疫力が低下しているサインの一つです。体内のバランスが崩れ、粘膜が乾燥しやすくなるためです。

免疫力低下を予防するための対策

免疫力を守るためには、日常の小さな習慣が大切です。無理なく実践できる方法を紹介します。

対策【1】病原体の侵入を防ぐ

普段から病気を予防するための基本的な対策をしっかり行いましょう。

  1. 手洗い・うがい:外出先から帰った後や食事前に、手洗いとうがいをすることで、病原菌の侵入を防ぐことができます。
  2. マスク:風邪やインフルエンザの時期は、マスクを着用することで、ウイルスや細菌を口や鼻からの侵入を防げます。保温と保湿の効果もあります。
  3. 水分補給:こまめに水分を摂ることで、体内の粘膜を保湿し、免疫機能を守ることができます。
  4. 室内の湿度管理:室内の湿度を60%前後に保つことで、乾燥からくる感染症のリスクを減らせます。

対策【2】適切な運動

運動は免疫力を高めるために重要ですが、過剰な運動は逆に免疫力を下げることもあります。

過度な疲労を感じない運動:軽めの運動を心がけると免疫力をサポートしてくれます。特に筋力トレーニングは、免疫力を高める効果があると言われています。

有酸素運動の注意:長時間のウォーキングやランニングなど、激しい有酸素運動は免疫力を下げやすいこともあります。1日8,000歩程度の運動量が目安です。


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対策【3】適切な睡眠と栄養

免疫力を高めるためには、十分な睡眠とバランスの取れた食事が欠かせません。

睡眠:免疫力の維持には、1日7時間程度の睡眠が必要です。規則正しい生活リズムを心がけて、質の高い睡眠を取るようにしましょう。

栄養:免疫力を高める食べ物を意識して摂取しましょう。特に「たんぱく質」「ビタミンA」「ビタミンD」は免疫に大きな影響を与える栄養素です。これらをバランス良く摂取することが大切です。

免疫力を左右する生活習慣 まとめ

免疫力を維持するためには、適切な運動、十分な睡眠、バランスの取れた食事が重要です。さらに、病原体の侵入を防ぐための基本的な対策も欠かせません。普段からこれらを意識して生活することで、風邪や病気にかかりにくい健康な体を作りましょう。

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テレビ番組「ちちんぷいぷい」「大阪ほんわかテレビ」「ten.」などに出演し、専門的でわかりやすい解説が好評のフィットネストレーナー。

健康運動指導士の有資格者であり、指導歴は30年以上。2010年に大阪市でパーソナルフィットネスジム「どこでもフィット」を開業し、これまでに延べ1万回以上のパーソナルトレーニングを実施。特に50代以上の「加齢に負けない体づくり」に定評がある。

医療機関と連携した安全性の高い運動指導、企業・団体向けの腰痛予防や健康経営に関する講演も数多く行い、受講者の98%から「わかりやすい」と高い評価を得ている。

趣味は城巡り、鉄道とグルメの旅、スポーツ観戦、80~90年代のプロレス、書店めぐり、そして焼肉。身体づくりも人生も、楽しみながら続けることを大切にしている。

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