膝の外側の痛みは腸脛靭帯炎かも?ランニングや曲げ伸ばしでの症状と原因

パーソナルトレーナーの小林素明です。
ランニング中や、スクワットで膝を曲げたときに、膝の外側が痛くなることはありませんか? この痛みがある場合、「腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)」かも知れません。
腸脛靭帯炎は、太ももの外側にある靭帯が骨とこすれて炎症を起こし、痛みが出る症状です。
特にランナーの方に多く見られるため、「ランナー膝」とも呼ばれています。また、左右の膝の間が広い「ガニ股」や「O脚」の方にも発症しやすいのが特徴です。
日常では、階段の上り下り、長時間の歩行、膝の曲げ伸ばしでも痛みが強くなることがあります。
腸脛靭帯炎になりやすい方には、いくつかの共通点があります。
- 膝が外に開きやすいO脚の方
- 股関節やお尻まわりが硬い方
- 足が外向きで歩く癖がある方
- 靴の外側だけが擦り減っている方
- お尻の筋力が落ちてきたと感じる方
こうした特徴が見られることが多くあります。
この記事では、腸脛靭帯炎の原因と症状、そして体にやさしいストレッチによる対策を紹介します。
膝の外側が痛む「腸脛靭帯炎」とは?

腸脛靭帯炎は、走るたびに繰り返される膝の曲げ伸ばしで、太ももの外側にある腸脛靭帯が膝の骨とこすれ合うことによって起こります。
初めのうちは、少し休めば治るように感じるかもしれません。実際、運動をやめると痛みが引くこともあります。
しかし、症状が進むと、膝の曲げ伸ばしがスムーズにできなくなり、歩くのもつらくなることがあります。
無理をして走り続けると、痛みを避けるような動きになり、反対側の膝や腰にまで負担がかかることもあります。その結果、フォームが崩れ、思うように体が動かなくなってしまうことも少なくありません。
痛みは走っているときだけではありません。階段の上り下りや、長時間の歩行、しゃがむ・立ち上がるといった動作でも強くなることがあります。
違和感が続くときは、放置をせずに早めの対策が大切です。
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腸脛靭帯とは何か?
からだの解剖の専門的な内容になります。ここでは筋肉の形をイメージしていただくだけで大丈夫です。
腸脛靭帯

腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)は、骨盤の外側にある「大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)」という筋肉とつながっています。太ももの外側を通り、すねの外側の骨(脛骨の外側)にくっついている、長くて丈夫な靭帯です。
この靭帯には、膝の外側を安定させる働きがあります。とくに歩く・走る・階段をのぼるなど、日常の動きの中で重要な役割を担っています。
腸脛靭帯は、膝を曲げたり伸ばしたりするたびに前後に動きます。
この動きが何度も繰り返されると、膝の骨の外側とこすれ合って、炎症が起こることがあります。そのことから、膝の外側にチクチクとした痛みを感じたり、膝の曲げ伸ばしがつらくなったりするのです。
腸脛靭帯炎の原因とメカニズム

腸脛靭帯炎の主な原因は「膝の使い過ぎ」と「準備運動不足」です。
腸脛靭帯は太ももの骨(大腿骨)を通り、すねの骨(脛骨)にくっついています。膝を曲げ伸ばしするとき、この靭帯が大腿骨の外側にある骨の出っぱり部分(大腿骨外顆)とこすれ合います。
このこすれ合いが繰り返されることで、炎症や痛みが起こっています。
特にランニングやサイクリング、登山など、膝の曲げ伸ばしを長時間・繰り返すスポーツで発生しやすいです。痛みは膝を伸ばすときに感じやすく、階段を下りるときや屈伸運動でも出ることが多いのが特徴です。
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腸脛靭帯炎 痛みを感じるタイミングとは?

足のかかとが地面についたとき、膝が20〜30度くらい曲がっている状態(膝関節20〜30°屈曲位)で痛みが出ることが多いです。こうした動作で痛みを感じる場合は、腸脛靭帯炎の可能性が高いので注意が必要です。
腸脛靭帯炎が起こりやすい人の特徴

脛靭帯炎は、マラソンランナーに多く見られるスポーツ障害のひとつです。しかし、それに限らず、膝の外側に負担がかかりやすい体の使い方をしている方にも起こります。
たとえば、O脚(いわゆるガニ股)の方は、膝の外側に体重がかかりやすく、炎症が起こりやすくなります。
次のような特徴がある方も注意が必要です。


- 靴の外側ばかりがすり減っている方
体重が外側に偏っていて、膝の安定が保たれにくくなっています。腸脛靭帯にかかる負担が増します。 - 膝が安定せず、走っているとぐらつく方
膝周りの筋力が十分でない場合、靭帯に頼りがちになり、炎症につながります。 - 道路の端など、傾いた場所をよく走っている方
体が片側に傾き、膝の外側に負担がかかる状態が続きます。
こうした体の使い方や走る環境によって、腸脛靭帯炎は誰にでも起こり得ることです。「少し当てはまるかも」と思った方は、早めにケアすることが大切です。
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要注意スポーツ

マラソンやトライアスロン、サイクリング、バスケットボールなど、膝の曲げ伸ばし動作が頻繁に行われるスポーツは特に注意が必要です。
これらの動作が繰り返されることで、腸脛靭帯に過度な負荷がかかりやすくなります。膝の痛みを予防するためには、適切なランニングフォームやシューズの選び方、走行環境の確認が欠かせません。
腸脛靭帯炎は、ちょっとした工夫や予防策で大きくリスクを減らせます。後ほど、日常的に実践できる予防法やストレッチについて詳しく紹介します。
痛みを軽視せず、早めの対処を

腸脛靭帯炎かもしれないと感じたら、自己判断をせず、まずは医療機関で診断を受けることが大切です。
簡単な目安として、
膝を90度に曲げた状態で、指で膝の外側上部を押さえながら膝を伸ばしたときに痛みを感じる場合 → 腸脛靭帯炎の可能性が考えられます。
診断が確定した場合、まず取り組むべきは膝の曲げ伸ばし動作を中止することです。
これは痛みを悪化させないための基本的な対応です。
その後、回復を早めるために適切なストレッチを取り入れていきます。運動前の十分な準備運動も欠かせません。これらの対策は、腸脛靭帯にかかる摩擦を軽減し、炎症を防ぐための第一歩です。
痛みを放置するとどうなる?
膝の痛みを放置してしまうと、スポーツのパフォーマンスが低下するだけでなく、日常生活にも支障をきたす可能性があります。
特に腸脛靭帯炎は、初期の対応が不十分だと症状が長引き、治療に時間がかかることも少なくありません。
次に腸脛靭帯炎を予防する具体的なストレッチや運動方法をご紹介します。痛みのない快適なスポーツライフを目指して、一緒に取り組んでいきましょう。
腸脛靭帯炎の予防ストレッチ

腸脛靭帯炎の予防の鍵は、膝の柔軟性と血行を良くし、負担を軽減することです。そのためには、腸脛靭帯だけでなく、お尻や太ももの前後をしっかりとストレッチすることが重要です。
まず、過度なランニングや膝の使いすぎを控えることを心がけましょう。
そのうえで、膝周りのケアを習慣にすることが予防の第一歩です。
以下に、腸脛靭帯炎の予防に効果的な代表的なストレッチをご紹介します。短時間できるものばかりですので、日常に取り入れてみてください。
腸脛靭帯炎の予防に役立つ、主に伸ばしたい筋肉
- お尻の横(大腿筋膜張筋〜腸脛靭帯)
- 太もも(大腿四頭筋、ハムストリングス)
- お尻(大臀筋)
(1) バレリーナストレッチ



<方法>
- 脚をクロスします(左足が後方)
- 左手を天井に伸ばし、右手は骨盤に手を当てます
- 右手で骨盤を押しながら、体を左に傾けます
- 自然呼吸で20秒間静止します
- ゆっくりと元の位置に戻ります
- 反対側も同様に行います
<ポイント>
- 痛みのない範囲で行ってください
- 余裕があれば、2セット行います
- お風呂上りに行うと効果的です
(2)太もも前面ストレッチ

<方法>
- テーブル、壁に手を添えます
- 膝を曲げて、足首を持ちます
- 踵をお尻に近づけて、太ももの前面(大腿四頭筋)を伸ばします。
- 自然呼吸で20秒間静止します
- ゆっくりと元の位置に戻ります
- 反対側も同様に行います
<ポイント>
- 痛みのない範囲で行ってください
- 余裕があれば、2セット行います
- お風呂上りに行うと効果的です
足首が届きにくい場合は、タオルを使って行う方法もあります。

もう少し刺激が欲しい人向け 大腿四頭筋ストレッチ(ランナー向け)


(3)お尻ストレッチ


<方法>
- お尻を床につけて、右足の「足首」を左足の太ももの上に乗せます
- ゆっくりと左足を曲げて、右足を上げていきます
- 右足が伸びたところで、自然呼吸で20秒間静止します
- ゆっくりと元の位置に戻ります
- 反対側も同様に行います
<ポイント>
- 痛みのない範囲で行ってください
- 余裕があれば、2セット行います
- お風呂上りに行うと効果的です。
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腸脛靭帯炎の再発を防ぎたい方へ 腸脛靭帯靭帯炎予防トレーニング
腸脛靭帯炎の予防には、動作中に膝が正しい位置で安定することがポイントです。
特に重要なのが、臀部の筋肉の強化。これにより、膝の位置を適切にサポートし、再発リスクを減らすことができます。
ボール挟み片足ヒップリフト


エクササイズの方法
- 仰向けになり、膝の間にミニボールを挟みます
- お尻を持ち上げて、片足を伸ばします
- つま先と膝の向きが天井に向いていることを確認します
- 息を吸いながら、お尻を床に近づけます
- 息を吐きながら、お尻を持ち上げます
- 反対側の脚も同様に行います
回数:片足10〜15回
注意点:フォームが崩れたら動作を中断し、始めからやり直しましょう
ランニングマン


鍛える筋肉: 軸足/大臀筋、中臀筋 腿上げ/腸腰筋、大腿直筋
エクササイズの方法
- 足を前後に開き、走るポーズをとります
- 腿上げを行います(背中はまっすぐ)
- 軸足は床を押すイメージで、つま先と膝の向きを合わせます
- 元の位置に戻り、繰り返します
- 反対側の脚も同様に行います
回数:片足10〜15回
注意点:フォームが崩れたら動作を中断し、始めからやり直しましょう
エクササイズ動画
入浴も取り入れて、さらに予防効果を高めましょう

ストレッチとあわせて、入浴も腸脛靭帯炎の予防にとても有効です。
温かいお湯にゆっくり浸かることで、大腿筋膜張筋や大臀筋など、腸脛靭帯に関係する筋肉が自然とほぐれやすくなり、靭帯にかかる負担を軽減できます。
さらに、入浴によって血行が促進され、筋肉の疲労回復がスムーズになります。体が温まることで筋肉や靭帯の柔軟性も高まり、ケガの予防につながります。
特に運動後は、シャワーだけで済ませずに、しっかりと湯船に浸かることを習慣にしましょう。
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腸脛靭帯炎にならないためには

腸脛靭帯炎には特効薬はありません。まずは、使い過ぎた膝を休めることから始めます。そこから、疲労している筋肉をほぐすストレッチを行っていきます。
大切なことは、腸脛靭帯炎を予防するストレッチを習慣にすることです。また、膝に負担がかからないようにするための「筋力強化」「アライメント矯正」を行うと強力な腸脛靭帯炎の予防となります。
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参考文献
- 広瀬統一、泉重樹、上松大輔、笠原政志(2019)「アスレティックトレーニング学」文公堂
- リーダ・マレック、川上康雄(2025)「サイエンス・オブ・ストレッチ」西東社
- Shirley A.Sahrmann、竹井仁、鈴木勝(2005)「運動機能障害症候群のマネジメント理学療法評価・MSIアプローチ・ADL指導」医歯薬出版
- Chris Jarmey、野村嶬(2018)「骨格筋ハンドブック(原著第3版)」 南江堂
- Donaid A. Neumann(2018)「筋骨格系のキネシオロジー(原著第3版)」 医歯薬出版株式会社
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この記事を書いた人


小林素明 (お城好きフィットネストレーナー)
テレビ番組「ちちんぷいぷい」「大阪ほんわかテレビ」「ten.」などに出演し、専門的でわかりやすい解説が好評のフィットネストレーナー。
健康運動指導士の有資格者であり、指導歴は30年以上。2010年に大阪市でパーソナルフィットネスジム「どこでもフィット」を開業し、これまでに延べ1万回以上のパーソナルトレーニングを実施。特に50代以上の「加齢に負けない体づくり」に定評がある。
医療機関と連携した安全性の高い運動指導、企業・団体向けの腰痛予防や健康経営に関する講演も数多く行い、受講者の98%から「わかりやすい」と高い評価を得ている。
趣味は城巡り、鉄道とグルメの旅、スポーツ観戦、80~90年代のプロレス、書店めぐり、そして焼肉。身体づくりも人生も、楽しみながら続けることを大切にしている。
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