体脂肪の基礎知識と正しい測定法をパーソナルトレーナーが解説

公園でストレッチエクササイズする女性

パーソナルトレーナーの小林素明です。身近な話題として関心が高い体脂肪。しかし、「そもそも体脂肪とは?」「どうすれば正しく体脂肪が測れるの?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、体脂肪の基礎知識と正しい測定法をパーソナルトレーナー小林素明が徹底解説します!

この記事は以下のような人におすすめです!

  • 体脂肪とはなにか分からない
  • 体脂肪率の基準がわからない!
  • 体脂肪の正しい測定法が知りたい
  • 健康管理のために、正しい体脂肪の知識を持ちたい!

この記事では、体脂肪の基本的な役割から測定方法、さらに体脂肪が健康に与える影響までを詳しく紹介します。この記事を読めば、体脂肪に関する知識が深まり、健康的な体を維持するための運動の重要性が理解できるようになります。ぜひ、参考にしてください。

体脂肪とは?その役割と重要性

体脂肪測定 脚で乗る2024

体脂肪と聞くと、「減らしたほうがいい」「太る原因」といったイメージを持つ人が多いかもしれません。しかし、体脂肪は私たちの体にとって非常に大切な栄養素です。パーソナルトレーナーの視点から体脂肪のことをわかりやすく解説します。

体脂肪の基本的な役割

体脂肪とは、体内に蓄えられた脂肪のことを指し、糖質やたんぱく質と並ぶ三大栄養素の一つです。体脂肪にはいくつかの重要な役割があり、私たちの体にとって欠かせない要素です。

体脂肪はエネルギーの貯蔵庫です。食べ物から摂取したエネルギーがすぐに使われなかった場合、体脂肪として蓄えられます。蓄えられた体脂肪は、運動したり、体を動かしたりする時にエネルギーとして使われます。

また、体脂肪は体を守るクッションのような役割も果たしています。例えば、皮下脂肪は体を外部の衝撃から守り、内臓脂肪は内臓をしっかりと支える役割があります。さらに、体脂肪はホルモンや細胞膜の材料になることで体の機能を正常に保ち、寒さから体を守る役割も果たします。ビタミンA・D・E・Kといった脂溶性ビタミンの吸収を助ける働きもあります。※1

内臓脂肪と皮下脂肪

お腹周りの脂肪

体脂肪は内臓脂肪と皮下脂肪に分かれています。内臓脂肪は腹部の内臓周りに蓄積される脂肪のことで、内臓を保護する役割があります。内臓脂肪はエネルギーの貯蔵場所としても働きますが、過剰に溜まると心臓病や糖尿病などの疾病のリスクが高まる脂肪として知られています。正確に内臓脂肪を知るためには、医療機関で腹部CT検査を受けることがありますが、市販されている内臓脂肪のレベルを推定する体脂肪計もあります。

皮下脂肪は皮膚の下に蓄積される脂肪です。皮下脂肪は体を保護し、体温を調節する働きがあります。皮膚の下にあるため、内臓脂肪に比べると疾病のリスクは少ないですが、過剰になると腰や膝の関節への負担が増え、体の見た目や動きに影響を与えることがあります

このように体脂肪は、体の健康維持に欠かせない重要な役割を果たしています。次に体脂肪率の基準について話します。

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体脂肪率の基準について

体脂肪の計算法  BMI

体脂肪率の基準は、健康や理想の体型を維持するために非常に重要となります。では、理想的な体脂肪率はどのくらいなのか?その範囲を超えた場合に体にどのような影響があるのか?を詳しく説明します。

健康的な体脂肪率とは?

体脂肪率は、体内の脂肪の割合を示す指標で、男女や年齢によって理想的な範囲が異なります。男性であれば10%~19.9%、女性では20%~29.9%が健康的とされています。この範囲に収まることで、体の健康状態が保たれ、日常生活も快適に過ごしやすくなります。

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体脂肪率が高すぎるとどうなるの?

体脂肪率が男性で20%を超える、女性で30%を超え得ると肥満につながり、心臓病や糖尿病などの病気のリスクが増大します。体脂肪率が高い人の特徴として、動くたびに体が重く感じ、疲れを感じやすくなります。体を動かすことが億劫になり、運動不足が原因でさらに体脂肪が増えるという悪循環に陥る可能性もあります。

2005年、日本内科学会などが肥満と関連する病気のリスクを示すメタボリックシンドロームの診断基準を発表し、通称「メタボ」が大きな注目を集めました。※2

体脂肪率が低すぎるとどうなるの?

体脂肪率が低すぎる場合も健康上、問題が生じます。体脂肪が少なすぎると、エネルギー不足になりやすく、疲労や免疫力の低下を引き起こします。(風邪をひきやすくなるなど) 運動のパフォーマンスも低下し、健康維持が難しくなることも考えられます。

女性の場合、体脂肪率が10%を下回ると、女性ホルモンの分泌が減少し、生理不順が起こりやすくなるほか、筋肉や骨の形成が困難になることがあります。 

お腹を引き締めるために知っておきたい!体脂肪率との深い関係

メジャーをウエストに当てる女性

「お腹を引き締めるには腹筋運動が一番ですか?」という質問をよくいただきます。確かに、腹筋運動はお腹を引き締めるために効果がありそうですが、実はそれだけでは十分ではありません。というのも、腹筋の上には脂肪が覆われており、筋肉がどれだけ鍛えられても脂肪が多いと腹筋は見えにくいのです。つまり、引き締まったお腹を手に入れるためには、体脂肪を減らすことが不可欠です。

一般的に、男性は体脂肪率が15%、女性は20%以下になると、お腹のラインが見え始めます。ただし、女性の場合は、体脂肪率が低すぎる(20%以下)と健康に影響を与える可能性があるため、無理な減量は禁物です。※3

お腹を引き締めるためには、有酸素運動で脂肪を燃焼させつつ、筋力トレーニングで筋肉を鍛えることが最適です。特に「ドローイン」と呼ばれるお腹を引き締める基本的なトレーニングは非常に効果的なので、ぜひ取り入れてみてください。

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体脂肪の正しい測定法

体重を測定するフローリング

体脂肪を測定する方法は複数あります。体脂肪率の正確な数値を知るためには、測定方法の違いと注意点を理解することが大切です。ここでは、広く使われている体脂肪測定法であるインピーダンス法での測定の注意点。体脂肪を正確に測るポイントについて解説します。

広く普及しているインピーダンス法とは?体脂肪測定の仕組みを解説

体脂肪を測定する方法として、最も正確な数値が期待できる「水中体重測定法」、皮下脂肪の厚みを測る「キャリパー法」がありますが、これらの測定法は専門施設でしか測定できません。そこで、誰でも手軽に測定できるインピーダンス法が広く用いられています。

インピーダンス法は、体脂肪を測定する一般的な方法の一つで、市販されている体組成計に使用されています。このインピーダンス法では、体内に微弱な電流を流し、電気を通しにくい脂肪の電気抵抗値を測定して体脂肪量を推定します。しかし、いくつかの注意点があります。

インピーダンス法による体脂肪測定の注意点と正確な測り方

体脂肪の記録を書く 体脂肪計

インピーダンス法の測定は、体内の水分量に影響を受けやすいという特徴があります。例えば、運動後や入浴後、あるいは水分補給の直後では、測定値が異なることがよくあります。これを避けるためには、毎回同じ条件で測定することが大切です。朝起きた直後や、食事を取る前に測ると比較的安定した数値が得られます

インピーダンス法による主な測定条件

  • 同じ時間帯で測定する
  • 運動後は避ける
  • 食後2時間以上経過している

体脂肪率よりもBMIが用いられている理由

インピーダンス法は、体内の水分量や使用する測定器のメーカー、モデルによって誤差が生じることがあり、正確性に課題があります。そのため、国際的に統一された基準は存在しません。一方、世界的にはBMI(ボディ・マス・インデックス)が肥満度を判断するために広く使用されています。BMIは、体重(kg)を身長(m)の二乗で割るだけで計算でき、特別な装置が必要ないため、誰でも簡単に算出できます。※4

ただし、BMIは筋肉量や体脂肪の分布を考慮しないため、筋肉質な方や高齢者にとっては、必ずしも健康状態を正確に反映しないことがあります。正確な評価のためには、一度専門家のアドバイスを受けるのが理想的です。また、体脂肪や体重の短期的な変動に左右されず、長期的なトレンドを把握することが大切です。

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体脂肪と運動の関係とは

公園でランニングする女性フィットネス2024

体脂肪と運動は切り離せない関係にあります。日常生活でエネルギーを使う量よりも摂取するカロリーが多ければ、その分が体脂肪として蓄積されます。しかし、運動をすることでエネルギーの消費量が増え、体脂肪を減らす効果が期待できます。では、どのような運動が体脂肪減少に有効なのか、一緒に考えていきましょう。

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有酸素運動(エアロビクス)

糖質、脂質のエネルギー代謝

有酸素運動は、酸素を使って長時間にわたり行える運動のことです。例えば、ジョギングやウォーキング、サイクリング、水泳などがこれに該当します。これらの運動は、体全体を使いながらゆっくりとエネルギーを消費し、脂肪を燃焼させるのに最適です。上のグラフは運動を開始して、糖質、脂質(脂肪)の使われる割合を示しています。特に、20分以上の運動を続けることで脂肪燃焼が促進されやすくなります。

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筋力トレーニング

筋トレも体脂肪を減らすために重要です。筋肉を増やすことで基礎代謝が上がり、安静時でもより多くのエネルギーを消費できる体になります。スクワットやランジ運動など、全身の筋肉を使うトレーニングが効果的です。また、筋力トレーニングを行うと、筋肉が修復される過程でもエネルギーが消費されるため、運動後も脂肪が燃えやすくなります。

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高強度インターバルトレーニング(HIIT)

高強度インターバルトレーニング(HIIT)は、短時間で効果的に体脂肪を燃やすことができるトレーニング法として注目されています。この方法では、20秒間の高強度運動と10秒間の休憩を交互に行い、合計8セットを繰り返します。短時間で多くのカロリーを消費できるため、忙しい方にもおすすめです。ただし、強度が高いため、始める前に専門家のアドバイスを受けることが重要です。

このように体脂肪を減らすためには、有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせたバランスの良い運動習慣が大切です。まずはできる範囲で運動を取り入れてみましょう。

なぜサウナで体重が減るのか?

サウナ 健康フットネス

サウナに入った後、体重計に乗ると「おっ、体重が減ってる!」と思うことはありませんか?サウナに入る前と後では、実際に数百グラムから1キロ近く体重が減ることがあります。しかし、サウナでは体脂肪が燃えているのでしょうか?

サウナ後の体重減少の理由

サウナで体重が減る主な理由は「水分の損失」です。サウナの高温により、体温が上がり、体は体温を下げようとして大量の汗をかきます。この汗には水分や塩分(ナトリウム)が含まれており、これが体重減少の原因です。 ※5

つまり、サウナ後に体重が減るのは、一時的に水分が体から出ているだけで、脂肪が減ったわけではありません

サウナはリラックスや疲労回復に効果的ですが、サウナで汗をかいても、脂肪燃焼のプロセスには大きく影響しません。逆に、水分を失ったまま放置すると脱水症状を引き起こす危険があるため、こまめに水分補給を行いましょう。

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体脂肪を健康的にコントロールするための方法

朝食を食べる女性 栄養を摂る

体脂肪を効果的に管理するには、ただ体重を落とすことが目的ではなく、体に必要な栄養素を摂取しながら健康的に脂肪をコントロールすることが重要です。ここでは、バランスの取れた食事と継続的な運動がどのように役立つかを解説します。

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バランスの取れた食事の重要性

体脂肪を健康的に管理するためには、まず食事が重要な役割を果たします。単にカロリーを減らすのではなく、必要な栄養素をバランスよく摂取することが大切です。例えば、糖質・脂質・タンパク質を適切に組み合わせることで、体に必要なエネルギーと栄養を効率よく取り入れられます。脂質も重要で、ホルモンバランスの維持やエネルギー供給に役立つため、適度な量を摂ることが必要です。

さらに、野菜や果物に含まれるビタミンやミネラルは代謝を助け、体調を整えるサポートをしてくれます。極端な食事制限や糖質を大幅にカットする方法は、かえって体調不良を招く可能性があるため、無理のない範囲で続けられる食事の習慣を作ることが成功のカギです。

まずは1週間分の食事内容を確認することから始めましょう。例えば、タンパク質が不足している、糖質が多いといった傾向をつかむことができます。スマホで食事を撮影するだけで栄養バランスを確認できる便利なアプリもありますので、ぜひ活用してみてください。

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継続的な運動のメリット

運動は体脂肪を減らすだけでなく、筋肉を維持し、基礎代謝を高めるために非常に重要です。特に、有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせることで、効率的に脂肪を燃焼させながら筋力を保つことができます。もしまとまった時間が取れない場合でも、日常生活の中で体を動かす機会を増やすだけでエネルギー消費を高めることが可能です。

大切なのは、無理なく継続できる運動習慣を身につけることです。例えば、ヨガやジムに通うのも効果的で、決まったレッスン時間に合わせて行動を調整することで、自然と習慣化しやすくなります。さらに、パーソナルトレーニングなら、週に一度、時間や曜日を固定することで、継続しやすく集中してトレーニングに取り組めるため、より高い運動効果を期待できます。

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まとめ

公園でストレッチエクササイズする女性

いかがでしたか?体脂肪についての正しい知識を持ち、適切に測定することは健康管理において非常に重要です。同じ測定器と条件で体脂肪率を測ることが大切です。また、体脂肪率は健康状態や体のバランスを判断するための重要な指標となります。

体脂肪を管理するには、エネルギー消費を増やす工夫や摂取カロリー、栄養バランスの管理が必要です。自分で管理するのが難しい場合は、アプリやYouTube、フィットネスジム、ヨガ教室などが役立ちます。特にアプリは無料で使えるものが多く、毎日の歩数なども簡単に管理できます。まずは手軽に始められる方法を試してみてください。さらに本格的に取り組みたい方には、パーソナルトレーニングが最適です。より効率的に目標を達成しましょう。皆さんの健康を心から応援しています。

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参考文献

  1. Scott K. Powers・Edward T. Howley(2020)『パワーズ運動生理学』メディカル・サイエンス・インターナショナル 
  2. e-ヘルスネット(2021)「メタボリックシンドロームの診断基準」厚生労働省 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-01-003.html (参照 2024-09-04)
  3. Eric Helms, Andy Morgan他(2021)『肉体改造のピラミッド栄養編』AthleteBody
  4. e-ヘルスネット(2024)「体脂肪率」厚生労働省 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-041.html (参照 2024-09-05)
  5. John E. Hall(2018)『ガイトン生理学 原著第13版』エルゼビア・ジャパン

この記事を書いた人

パーソナルトレーナー小林素明

小林素明

健康運動指導士 米国ハワイ州立大学医学部人体解剖学実習修了 介護予防運動トレーナー マッスルコンディショナー 日本臨床運動療法学会会員

【経歴】 運動指導歴30年超、テレビ出演多数、延べ1万人超のパーソナルトレーニング指導実績、YouTube登録者数1万人超。医療機関との連携も図り、安全かつ効果的なトレーニング法を研究。

フィットネスクラブ、温浴施設に17年間勤務後、株式会社ウェルネス&スマイルを起業。大阪市阿倍野区にパーソナルトレーニングどこでもフィットを開業し、「加齢に負けない筋肉づくり」「日常生活・スポーツ動作のパフォーマンスアップ」を得意とし、80歳代の方までトレーニング指導にあたる。病院をはじめとする医療機関、教育機関、不動産会社などで講演・講師活動。パーソナルトレーナー指導者養成講座の講師も務める。

【テレビ出演】 毎日放送「ちちんぷいぷい」/朝日放送テレビ「キャスト-CAST-」/読売テレビ「ten.」/テレビ朝日「ナニコレ珍百景」/読売テレビ「大阪ほんわかテレビ」/サンテレビ「4時!キャッチ」他

【講演・講師実績】 一般財団法人関西労働保健協会/経済産業省ヘルスケアサービス社会実践事業「医療運動マッチング対応トレーナー育成講習会」/徳島県教育委員会 /箕面市立病院/日本臨床運動療法学会(第36回)/ファインレジデンス枚方香里園(京阪電鉄不動産)特別講師/SSK /八尾市教育委員会/岸和田市民病院/南河内環境局組合 他多数 (敬称略)

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