ドスン座りをやめるだけで関節は守れる|日常動作の見直し

やっていませんか? ドスン座り。
パーソナルトレーナーの小林素明です。
帰宅後、椅子に体を「どすん」と預ける。無意識のうちに、そのまま体重を落としていませんか?
この動きは、筋肉でゆっくり支えるのではなく、骨や関節に任せてしまう動作です。体をコントロールせずに落とすと、体重に“勢い”が加わります。
その結果、瞬間的に体重の2倍ほどの負担が腰の骨にかかることがあります。体重60kgの人であれば、100kg以上の力が腰に伝わる可能性があるのです。
1回では問題にならなくても、習慣になれば負担は積み重なります。
日常生活によくある「ドスン」


椅子に体を預ける動作は、日常の中で何度も繰り返されています。力を抜いたまま座ると、筋肉は十分に働かず、骨や関節が体重を直接受け止める形になります。
この「体を落とす動き」は、椅子に座る場面だけではありません。
たとえば、
- 仰向けに寝るとき。後頭部をコツンと落とす。
- 足をバタンと床に下ろす。
このように体を自分でコントロールしながら、ゆっくり下ろせない状態は、「支える力」が弱くなっている一つのサインです。
階段の下りにご注意

階段を下りるときも同じです。本来、階段の下りは太ももの筋肉がブレーキをかけながら体を支える動きです。ところが、力を抜いて体を落とすように下りると、その衝撃を膝や股関節が直接受け止めることになります。
指導現場でも、階段の下りが不安定な方ほど、膝のトラブルを抱えているケースが多く見られます。
このような動作が積み重なると、関節内の軟骨にかかる負担も少しずつ蓄積します。
やがて炎症を起こし、軟骨のすり減りにつながる可能性があります。その延長線上に、将来的な変形性膝関節症があることも否定できません。
日常の中で無意識に行っている「ドスン動作」。体を落とす習慣は、体を守るための筋肉を使わない習慣とも言えます。
逆に言えば、「ゆっくり下ろす」だけで、体を守る力は少しずつ育ちます。特別な運動をしなくても、日常の動きそのものがトレーニングになります。
「ゆっくり下ろす」で筋肉を鍛える

ゆっくり体を下ろす動作では、筋肉は伸ばされながら力を発揮します。そのため、ややきつく感じることがあります。
この働きは専門的には「エキセントリック収縮(伸張性収縮)」と呼ばれます。縮みながら力を出すのではなく、伸びながらブレーキをかける筋肉の使い方です。
身近な例の一つが、階段の下りです。
1段ずつ踏ん張りながら降りるとき、体重を支えている側の太もも前の筋肉がブレーキをかけ、体が前に落ちないようにコントロールしています。
このブレーキ動作を担う筋肉は、運動効果が高いことでも知られ、近年さまざまな分野で注目されています。
ブレーキ動作を使うことで筋力向上、血液検査の数値も良い結果に

実際に、階段を上るグループと下るグループに分けた研究では、下る動作、つまりブレーキ動作を多く行ったグループの方が、筋力向上だけでなく血液検査の数値にも良い変化が見られたと報告されています。※1
椅子にゆっくり座る動きも同じです。
体を落とさず、筋肉で支えながら下ろすだけで、日常の中に自然なトレーニングが生まれます。
運動指導の現場でも、ゆっくり下ろす動きができるようになると、階段や椅子の動作が安定してきます。動作が安定すると、関節への負担も軽減しやすくなります。
このように、「ゆっくり下ろす動作」は関節を守るための動きであると同時に、体を鍛える動きでもあります。
特別なトレーニングを増やさなくても、日常動作の質を変えるだけで、体への刺激は確実に変わります。
ここまでお読みいただくと、「難しいことをしなければいけない」と感じるかもしれません。
ですが、特別なトレーニングを増やす必要はありません。まずは、日常の動きを少し丁寧にすることから始めます。
体を落とすのではなく、支えながら下ろす。
その意識だけで、体の使い方は変わります。
今からできるドスン対策
では、日常生活の中で体への負担を減らす具体的な方法を紹介します。
(1)椅子に座るとき(トイレの便座も同様)

方法: 「1、2、3」と心の中で数えながら、ゆっくり腰を下ろします。テーブルや肘掛けに手を添えるのも有効です。
(2)仰向けに寝るとき


方法: いきなり倒れ込まず、いったん四つん這いになり、そこから体をコントロールしながら横向き、そして仰向けへとゆっくり転がります。
(3)階段の下り

方法: 足の裏全体で段をとらえ、体が安定したことを確認してから次の一歩を出します。必要に応じて手すりを持ちましょう。
このとき、つま先と膝のお皿の向きをそろえておくことも大切です。膝が内外にぶれにくくなり、安定してブレーキをかけることができます。
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まとめ

椅子に座るとき。
階段を下りるとき。
仰向けに寝るとき。
私たちは日常の中で、無意識に体を「落とす」動きを繰り返しています。1回では問題にならなくても、その積み重ねが関節への負担になります。
一方で、ゆっくり下ろす動きは、関節を守るだけでなく、筋肉を育てる動きでもあります。日常動作の質を変えるだけで体への刺激は変わります。
「落とす」動きから「支える」動きへ。
それだけで、体の使い方は大きく変わります。
そして、もしお一人では不安があるなら。一緒に、無理のない運動から始めてみませんか。
無理なく、続けられる形で。
あなたの体づくりをお手伝いします。
パーソナルトレーナー小林素明の取り組みは、こちらにまとめています。
参考文献
- ※1 Chen et al. Med Sci Sports Exerc. 2017
- Donaid A. Neumann(2018)「筋骨格系のキネシオロジー(原著第3版)」 医歯薬出版株式会社
- Chris Jarmey、野村嶬(2018)「骨格筋ハンドブック(原著第3版)」 南江堂
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この記事を書いた人


小林素明 (お城好きフィットネストレーナー)
指導歴30年超、テレビ番組「ちちんぷいぷい」「大阪ほんわかテレビ」「ten.」などに出演し、専門的でわかりやすい解説が好評のフィットネストレーナー。
健康運動指導士、マッスルコンディショナー、介護予防運動トレーナーの有資格者。
2010年に大阪市でパーソナルフィットネスジム「どこでもフィット」を開業し、これまでに延べ1万回以上のパーソナルトレーニングを実施。特に50代以上の「加齢に負けない体づくり」に定評がある。
医療機関と連携した安全性の高い運動指導、企業・団体向けの腰痛予防や健康経営に関する講演も数多く行い、受講者から「わかりやすい」と高い評価を得ている。
趣味は城巡り、鉄道とグルメの旅、スポーツ観戦、80~90年代のプロレス、書店めぐり、そして焼肉。身体づくりも人生も、楽しみながら続けることを大切にしている。

