プロテインは本当に必要?50代からの筋肉づくりと栄養の話

パーソナルトレーナーの小林素明です。
「運動するならプロテインを飲んだほうがいいですよね?」 そんなご相談をよくいただきます。
たしかに、筋肉をつくるには「たんぱく質」が欠かせません。しかし実は、日常の食事だけでも、必要なたんぱく質はしっかり摂れている場合も多いのです。
重要なのは、たんぱく質“だけ”では筋肉づくりがうまくいかないということ。筋肉には他の栄養素、特に糖質とのバランスも深く関係しています。
今回は、
- プロテインは本当に必要なのか?
- たんぱく質の適正量は?
- なぜ「たんぱく質だけ」では不十分なのか?
この3つを、体づくりの視点からわかりやすく解説します。
プロテイン=必ず必要?という誤解

テレビやインターネットでは、運動後にプロテインを飲んでいる場面をよく見かけます。そのため、運動を始めると、「プロテインは飲まないと筋肉がつかない」と考えてしまうのも無理もありません。
結論から言えば、プロテインは「絶対に必要」というものではありません。そもそも「プロテイン」とは、英語で「たんぱく質」のこと。
私たちは毎日の食事から、すでにたんぱく質を摂っています。
たとえば――
- 朝食の納豆と卵
- 昼の焼き魚定食
- 夜の豆腐入りみそ汁と鶏肉炒め
こうした日常の食事にも、しっかりたんぱく質は含まれており、1日3食をバランスよく食べていれば、多くの人は十分な量を摂取している可能性があります。
では、なぜプロテインが注目されているのでしょうか?
サプリメントと食事の違いを知る
その理由は、「手軽にたんぱく質を補える」ことにあります。
- 体調がすぐれず固形物が食べにくいとき
- 食欲が落ちて食事量が減っているとき
- 外出や仕事、家事でゆっくり食事がとれないとき
プロテイン(粉末タイプやドリンク)は便利な補助食品として大変役立ちます。僕自身も、食事が十分に摂れない日があります。そんなときは、プロテイン入りのサプリメントを購入しています。
つまり、プロテインは「食事の代わり」ではなく、「食事で不足するときの補助」と考えるのが良いでしょう。
日本人のたんぱく質摂取量は不足している?

たんぱく質が必要と言われている背景には、高齢になると筋肉量の低下やフレイル(虚弱)のリスクが高まることにあります。
実際に私たちは十分なたんぱく質をとれているのでしょうか?
厚生労働省の「国民健康・栄養調査」(令和元年)によると、60代・70代の多くの方は、1日の推奨量に近い、あるいはそれ以上のたんぱく質をすでに摂取しているケースも少なくありません。
たんぱく質はどれくらい必要?

一般的に、たんぱく質の1日の必要量は「体重1kgあたり約1.0g〜1.2g」が目安です。たとえば、体重60kgの方なら「60g〜72g」が目安になります。
【たんぱく質の目安量(一部)】
- 卵1個:6〜7g
- 納豆1パック:7g前後
- 鶏むね肉(100g):約22g
- 焼き魚(1切れ):15〜20g
- 木綿豆腐(1/2丁):約10g
3食の中で毎回15〜20g前後のたんぱく質がとれていれば、必要量はおおよそクリアできます。
たんぱく質を摂取するときのポイント
たんぱく質ならどんな食品でも良いかと言いますと、そうではありません。
- 動物性食品(魚・肉・卵)
- 植物性食品(大豆製品など)
この2つのたんぱく質をバランスよく取り入れていることが大切です。動物性食品のたんぱく質に偏ると、以下のようなデメリットがあります。
- 脂質やコレステロールの過剰摂取につながり、動脈硬化や心疾患のリスクが高まる。
- 食物繊維が不足し、便秘や腸内環境の悪化を招く。
- ビタミンやミネラルの偏りが起きやすく、疲れやすさや代謝低下の原因になる。
たんぱく質がしっかりとれる!1日の食事モデル【たんぱく質75g摂取】
例:筋トレをしている・体重60kgの方(必要量72〜84g)
食事 | メニュー内容 | おおよそのたんぱく質量 |
---|---|---|
朝食 | ・ごはん1杯(150g) ・納豆1パック ・卵1個 ・味噌汁(豆腐入り) |
約20g |
昼食 | ・焼き鮭(1切れ 約80g) ・ほうれん草のおひたし ・ごはん1杯 ・味噌汁 |
約25g |
夕食 | ・鶏むね肉の野菜炒め(100g) ・冷ややっこ(1/2丁) ・ごはん1杯 ・ゆで卵1個 |
約30g |
合計 | 約75g |
体重60kg/筋トレに励んでいる人の場合、1日合計75g前後を目標。【目標を達成】
ポイント
- 主菜(肉・魚・大豆製品)を1食1品は意識します
- 豆腐・納豆・卵を上手に使えば、無理なく摂取可能です
- ごはんなどの糖質も一緒にとると、吸収効率アップします
たんぱく質だけでは筋肉にならない理由

実はたんぱく質だけを摂っていても、筋肉は効率よく作られません。ここで大事になるのが「糖質」と、その糖質によって分泌されるインスリンというホルモンです。
インスリンは、血糖値を下げるだけでなく、筋肉にたんぱく質を運び入れるサポート役も担っています。そのため、食事で糖質が不足するとインスリンが十分に分泌されず、せっかく摂ったたんぱく質もうまく筋肉に使われません。
特に50代以降は、筋肉が落ちやすくなる年代です。主食(ごはん・パン・麺)をゼロにするのではなく、適量をしっかり摂って、たんぱく質とバランスをとることが大切です。
※ただし、病院で食事指導を受けられている方はこの限りではありません。
食事+プロテインで栄養を補うのは、有効な手段
プロテイン(粉末タイプやドリンク)は便利な補助食品として大変役立つことを話しました。50代以降は食事の量が減り、筋肉が落ちやすくなります。そんなときに食事+プロテインで栄養を補うのは、有効な手段です。
また、運動後30分以内は「筋肉の回復を助けるゴールデンタイム」とも言われ、たんぱく質の吸収がスムーズになります。このタイミングでプロテインを活用するのも、効率的です。
しかし、プロテインを飲めば筋肉がつくわけではありません。日常の食事や運動と組み合わせて使うことが、何よりも大切になります。
合わせて読んでおきたい記事
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筋肉づくりに必要なのは、たんぱく質だけではありません。最も大切なのは、「食事」「運動」「休養」の三拍子が揃っていることです。
いくら高価なプロテインを飲んでも、運動をしていなければ筋肉への刺激が足りませんし、十分な睡眠や休養がなければ、体が回復・成長できません。
短期間で結果を求めすぎたり、サプリメントにばかり頼ってしまうと、かえって体に負担がかかることもあります。大切なのは、毎日できる範囲で、コツコツと続けること。
- 偏りのない食事を意識する
- 自分に合った運動を取り入れる
- しっかり眠って、体を休める
こうした基本を大事にすることで、年齢に関係なく、少しずつ体は変わっていきます。特に日本人は、睡眠時間が足りていないことが知られています。7〜8時間の睡眠は、確保しておきたいのものです。
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「筋肉づくり=プロテイン」と思われがちですが、必要かどうかは人それぞれです。年齢や活動量、食事内容によっても変わります。
普段の食事でたんぱく質がしっかりとれていれば、プロティンに頼らずとも筋肉は育ちます。
ただ、食が細くなった方や、忙しくて食事が不規則な方には、プロテインが便利な補助になることもあります。
大切なのは、「何を飲むか」よりも、自分の生活の中で何が不足しているのかを知ること。
栄養・運動・休養のバランスを見直し、無理なく続けられる形を整えることが、健康的な筋肉づくりへの第一歩です。
もし運動を始めたいけれど方法がわからない方は、マンツーマンの運動サポートを行う「どこでもフィット」をご利用ください。
30年以上の指導経験とテレビ出演実績を持つトレーナー・小林素明が、目的や体力に合わせた運動を丁寧にサポートします。
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参考文献
- 寺田新(2024)「スポーツ栄養学 第2版: 科学の基礎から「なぜ?」にこたえる」東京大学出版会
- ルイーズ・バーク、ヴィッキー・ディーキン(2023)「スポーツ栄養学」大修館書店
- 厚生労働省「令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要」
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この記事を書いた人


小林素明 (お城好きフィットネストレーナー)
テレビ番組「ちちんぷいぷい」「大阪ほんわかテレビ」「ten.」などに出演し、専門的でわかりやすい解説が好評のフィットネストレーナー。
健康運動指導士の有資格者であり、指導歴は30年以上。2010年に大阪市でパーソナルフィットネスジム「どこでもフィット」を開業し、これまでに延べ1万回以上のパーソナルトレーニングを実施。特に50代以上の「加齢に負けない体づくり」に定評がある。
医療機関と連携した安全性の高い運動指導、企業・団体向けの腰痛予防や健康経営に関する講演も数多く行い、受講者の98%から「わかりやすい」と高い評価を得ている。
趣味は城巡り、鉄道とグルメの旅、スポーツ観戦、80~90年代のプロレス、書店めぐり、そして焼肉。身体づくりも人生も、楽しみながら続けることを大切にしている。
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