熱中症から自分を守る 今こそ見直したい基本の習慣

パーソナルトレーナーの小林素明です。
暑い季節が近づくと、毎年のように話題になる「熱中症対策」。総務省消防庁の発表によると、令和6年には全国で97,578人が熱中症で救急搬送され、過去最多となりました。
最近では、大阪・関西万博の会場でも、実際に倒れて運ばれていく人を見かけました。「自分は大丈夫」と思い込むのは危険です。
たとえば、「喉が渇いたら水を飲めばいい」と考えていませんか? それでは遅いのです。喉の渇きを感じた時点で、体はすでに脱水状態に入っています。
熱中症は誰にでも起こりうるものです。特に50代以上の方は、注意が必要です。今回は、熱中症の原因と、どなたでも実践しやすい予防法について解説します。
熱中症とは?

熱中症とは、体が暑さにうまく対応できなくなり、体温の調整ができなくなる状態です。特に暑い日や湿度が高いときに起こりやすく、体内に熱がこもることでさまざまな症状が現れます。
たとえば、
- めまいや立ちくらみ
- 筋肉のけいれん(こむら返り)
- 頭痛や吐き気
- 重くなると、意識を失ったり、命にかかわることもあります。
熱中症は、炎天下だけでなく、室内や夜間でも起こることがあります。特に高齢になると、暑さに対する感覚が鈍くなり、自分では気づきにくいのが特徴です。
熱中症の症状と重症度の分類

熱中症は、症状のあらわれ方によって3つの段階(1度~3度)に分けられています。それぞれの段階には、体からのサインがあり、見逃さないことが大切です。
1度(軽度)
まず最も軽いのが「1度」の症状です。顔が青白くなったり、立ちくらみ、吐き気、こむら返りなどが起こります。この段階は「熱失神」「熱けいれん」と呼ばれます。
見た目には軽そうでも、すでに体には負担がかかっています。この時点で無理せず休むこと、そして119番をためらわず呼ぶことが大切です。
また、よく言われる「喉が渇いたら水を飲む」は要注意。喉の渇きは、体重の1%の水分を失ってから感じると言われており、すでに脱水が始まっているサインなのです。
2度(中等度)
次の段階は「2度」、口の渇きがひどくなり、頭痛やめまい、だるさやイライラなどが現れます。これは「熱疲労」と呼ばれる状態です。
この段階では、体の水分や塩分が大きく不足し、体温調節がうまくできなくなっています。そのまま放置すると重症化するため、速やかに医療機関を受診し、体を冷やす必要があります。
3度(重度)
最も危険なのが「3度」の症状です。意識がなくなる、けいれんが起こる、体が異常に熱くなるといった深刻な状態で、「熱射病」と呼ばれます。
この段階になると、自力での回復は困難で、救急車による搬送と入院治療が必要です。ためらわず119番通報をしましょう。
熱中症は、早期の気づきと対処が命を守るカギになります。年齢とともに、暑さへの感覚が鈍くなりやすいため、少しでも異変を感じたら早めに休む・冷やす・水分補給することを心がけてください。
脱水の進行と症状

ここでは、「体の水分がどれだけ失われると、どんな症状が出るのか」をお話しします。気温が高い日ほど、脱水は急速に進みます。そして、熱中症は気づかないうちに一気に悪化するのが特徴です。
水分バランスを保つことが大切
私たちの体は、体内の水分を一定に保つことがとても大切です。
汗をかき、喉が渇いたと感じたときには、すでに体重の約1%の水分が失われているといわれています。これは、真夏の日中などに多くの方が経験している状態です。
脱水率と症状の目安
脱水率(体重比) | 主な症状 |
約1% | 喉の渇き、大量の汗 |
約2% | めまい、吐き気、頭がぼんやりする、尿が減る |
約3% | 汗が出にくくなる |
約4% | 全身のだるさ、吐き気、イライラ、気分が不安定になる |
20%以上 | 命にかかわる重度の脱水状態に |
脱水は気付かないうちに進む
運動やスポーツ、屋外レジャーなどでは、自分では気づかないうちに脱水が進むことがあります。「今日はなんだか体が重い」「集中できない」と感じたら、まず脱水を疑ってください。
1日に失われる水分量は、約2,300ml。長時間の激しい運動時には、1日に6,600mlの水分が失われます。ここに暑さが加わるとさらに水分が失われているのです。
水分と塩分をこまめに補うことが、パフォーマンスだけでなく、命を守る行動になります。
足がよくつる人は要注意!脱水のサインかも?

熱中症対策として、「水分補給」が大切だとよく言われますが、実は脱水が原因で足がつることもあるのをご存じでしょうか?
夜中や朝方にふくらはぎが突然つる(こむら返り)という人は、体の水分やカリウムなどのミネラルが不足している可能性があります。寝ている間は、汗や呼吸によって500ml前後の水分が失われるといわれており、知らないうちに軽い脱水状態になっていることも。
脱水が進むと、筋肉の働きにも影響が出て、けいれんや違和感、つりやすくなる症状があらわれやすくなります。「なんとなく足がだるい」「最近よくつる」と感じたら、まずは寝る前の水分補給を見直してみましょう。
コップ1杯の水が、夜間の熱中症予防にも、足の不快症状にも効果的です。
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加齢による感覚の変化にご注意

テレビや新聞でも、「高齢者は熱中症に注意」とたびたび呼びかけられています。その理由には、いくつかの身体的な特徴が関係しています。
高齢になると、体の中にある水分の量が若いころよりも少なくなっています。そのため、体温をうまく調整する力が弱くなるのです。
また、暑さを感じにくくなったり、喉の渇きに気づきにくくなったりします。これは、加齢による感覚の変化によるものです。
たとえば、室内にいても「まだ大丈夫」と思いがちですが、気づかないうちに体内の水分が失われ、脱水や熱中症が進んでしまうことがあります。特に一人暮らしの方や、外出を控えている方は注意が必要です。
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今日から始めよう!熱中症対策

熱中症は、気づかないうちに進行してしまうのが怖いところです。そのため、早めの対策が大切です。ここでは、日常で実践できる予防法をご紹介します。
基本の対策
- 喉が渇く前に水分補給: 15〜20分おきに、少しずつ飲むのが理想です。
- 外出時は冷えたペットボトルを持参: 体を冷やすための氷や冷たいタオルも用意しておきましょう。
- 適切な冷房利用: 屋内にいるときは冷房でしっかりと温度管理をしましょう
- 通気性・速乾性のある服を選ぶ: 汗が蒸発しやすく、体温調整に役立ちます。
- 食事も水分源: 食事からも1日あたり約1リットルの水分を摂っています。3食しっかり食べることも大切です。
- 睡眠と休息: 睡眠や休息で疲労回復を行いましょう
- 食事と運動: 食事をしっかりと摂り、適度に運動を行いましょう

この熱中症対策マニュアル(PDF)は、無料でダウンロードしていただけます。職場や学校など、さまざまな場面でご活用ください。
屋内での熱中症対策
- エアコンで室温を調整: 室温は28℃以下、湿度は60%以下を目安にしましょう。
- 温湿度計を設置: 最近では熱中症警戒表示付きのデジタル温湿度計もあります。
- 直射日光を避ける: 遮光カーテンやすだれを使って、部屋が暑くなりすぎないようにします。
屋外での熱中症対策
- 日傘や帽子で直射日光を避ける: できるだけ日陰を選び、外出は朝夕の涼しい時間帯に。
- 携帯用扇風機の活用: 風をあてて汗の蒸発を助けることで、体温を下げやすくなります。
- 水分と一緒に塩分(ナトリウム)も補給: スポーツドリンクや塩飴などを活用しましょう。
- しっかりと休憩を取りましょう: 暑い場所に長時間とどまらないようにし、定期的に涼しい場所で休憩を取りましょう。
水分補給は何がいい?

基本は水で大丈夫
軽度の発汗なら水だけで十分です。電解質入りの飲料と比べても、通常の水分補給に大きな差はありません。
たくさん汗をかいたときはスポーツドリンク
汗と一緒にナトリウムなどのミネラルが失われるため、倦怠感・吐き気・筋肉のけいれんなどの原因になります。そんなときは、電解質を含むスポーツドリンクが効果的です。ただし、糖分が多いため毎日大量に飲まないよう注意しましょう。
衣服も熱中症対策の一部

体温を下げるには、汗の蒸発をうながす服装が効果的です。通気性がよく、速乾性のある素材の衣類を選びましょう。白や淡い色の服は、直射日光を反射して暑さを和らげてくれます。
熱中症警戒アラートをこまめにチェックしましょう!

暑い日の外出や運動の前には、「熱中症警戒アラート」を確認することをおすすめします。この情報は、環境省が公式ホームページで公開しており、全国をエリア別に詳しくチェックできます。
暑さ指数(WBGT)に基づく情報で安心
警戒アラートは、気温・湿度・輻射熱を組み合わせた「暑さ指数(WBGT)」にもとづいて発表されます。これは、熱中症のリスクをより正確に判断するための指標であり、予防対策の判断に非常に役立ちます。
地域や場所、時間帯ごとの暑さもチェック可能
環境省のサイトでは、地域ごとだけでなく、
- 駐車場
- 交差点
- バス停
- 住宅地
- 体育館など
具体的な場所別・時間帯別の暑さ指数も確認できます。
たとえば、「午前11時の交差点」と「午後2時のバス停」での暑さの違いなども、数値と色分けで視覚的にわかりやすく表示されています。
警戒レベルは色で一目瞭然

警戒レベルは以下のように段階別に色分けされており、とても見やすくなっています。「危険」や「厳重警戒」レベルの日は、できるだけ外出や運動を避けることがすすめられています。
メール通知サービスも便利
環境省では、暑さ指数(WBGT)の情報をメールで受け取れるサービスも提供しています。設定しておけば、自分の地域の暑さ情報がリアルタイムで届くため、熱中症対策の判断材料として非常に便利です。
熱中症対策のまとめ

いかがでしたでしょうか? テレビや新聞でも熱中症への注意喚起が行われていますが、「自分はまだ大丈夫」と思っているうちに、症状が進んでしまうケースが少なくありません。
近年は、季節外れの暑さや猛暑日が増えており、気温の変化に体が追いつかないこともあります。そのため、早めの予防対策がとても大切です。
今回紹介した熱中症の対策「水分補給」「室温管理」などはよく知られています。見落としがちなのが「基礎体力の低下」です。体力が落ちていると、汗をかく力や体温を調節する力も弱まり、熱中症のリスクが高まります。
そのためにも、日ごろから以下のことを心がけましょう:
- 栄養バランスのとれた食事をしっかり摂る
- 軽い運動を習慣にする
- 疲労をためず、質の良い睡眠を確保する
これらを意識するだけでも、暑さに負けない体づくりにつながります。しっかりと備えて、元気に今年の夏も乗り切りましょう。
なお、熱中症対策マニュアルはスマートフォンに保存しておくことができます。いつでも見返せるようにしておけば、対策の見落としを防ぐのに役立ちます。また、ご家族やご友人にもシェアして、みんなで熱中症を予防しましょう。
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参考文献
- 総務省消防庁「令和6年(5月~9月)の熱中症による救急搬送状況」
- 厚生労働省(2023)「働く人の今すぐ使える熱中症ガイド」
- 寺田新(2024)「スポーツ栄養学 第2版: 科学の基礎から「なぜ?」にこたえる」東京大学出版会
- 本間 研一 (2019)「標準生理学 第9版」 医学書院
- John E. Hall(2018)「ガイトン生理学 原著第13版」エルゼビア・ジャパン株式会社
- 広瀬統一、泉重樹、上松大輔、笠原政志(2019)「アスレティックトレーニング学」文公堂
- Scott K. Powers・Edward T. Howley(2020)「パワーズ運動生理学」メディカルサイエンスインターナショナル
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この記事を書いた人


小林素明 (お城好きフィットネストレーナー)
テレビ番組「ちちんぷいぷい」「大阪ほんわかテレビ」「ten.」などに出演し、専門的でわかりやすい解説が好評のフィットネストレーナー。
健康運動指導士の有資格者であり、指導歴は30年以上。2010年に大阪市でパーソナルフィットネスジム「どこでもフィット」を開業し、これまでに延べ1万回以上のパーソナルトレーニングを実施。特に50代以上の「加齢に負けない体づくり」に定評がある。
医療機関と連携した安全性の高い運動指導、企業・団体向けの腰痛予防や健康経営に関する講演も数多く行い、受講者の98%から「わかりやすい」と高い評価を得ている。
趣味は城巡り、鉄道とグルメの旅、スポーツ観戦、80~90年代のプロレス、書店めぐり、そして焼肉。身体づくりも人生も、楽しみながら続けることを大切にしている。
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